勇者の親友

白紙 津淡

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「…………なっ!?」

 ふとした瞬間にぱちりと目を覚ましたオルは、思わず覚醒そうそうに息を詰まらせてしまいました。
 が、おどろおどろしい血走った目で自分を覗き込んでいたのです!

 しかしオルはでしたから、すぐさまそのに思いいたりました。
 そのなのは、あらゆる生き物のだ……と、気付いたのです。

「おのれめっ!!」

 ずばっ!!

 オルは手にしていたで、とっさにを斬りつけました。
 何やらおどろくほど切れ味のいいその聖剣は、そのただのもとに魔王を殺してしまいました。

「…………」

 魔王は叫び声の一つさえ全く上げず、最初から最後までただただ無言でどさりとその場に倒れるばかりでした。

「……、……! ……おいナロ、っ?」

 何やら自分がたったいま殺した魔王とはがすぐそばにあるのを見付けたオルは、ハッとして周囲を見回し、呼びかけます。

「なあ、ナロ! ……お前が、僕を助けてくれたんだろう?」

 そうです、きっとそうです。
 そうに違いありません。

 だって……お兄さんたち二人にいじめられていたときも、お父さんからひどい仕打ちを受けたときも。
 そんなに絶望しかけたオルを助けてくれたのはいつだって、だったのですから。

「ナロ、さあ一緒に帰ってまた剣のだ! 大丈夫、お前はは悪くないんだ……きっと……ッ……きっともっともっと強くなる、からっ……!!」

 必死に呼びかけるオルの声が、うるんで震え始めます。
 何故か……何故かナロがいま自分のすぐ近くにいて、なのにような、そんな気がしてなりません。

「……今までありがとう、オル」

 ふと……ふとそんなを、オルは確かに耳にしたはずでした。
 しかしはじかれたように大急ぎで振り返ってみても、そこにはやはり、の死体が突っ伏しているだけです。
 オルのの姿なんて、やっぱり


         *


 気の遠くなるような月日が流れ……から世界を救ったは、今日も世界中で語り継がれ続けています。
 そして勇者オルの伝説には、必ずの名前もセットで出てきます。

 その人物とは、……その名を、

 伝説によると勇者オルは、魔王を倒したのち生涯にわたって世界を旅してまわり、各地で人助けにはげむかたわら……行方不明の親友ナロを、死ぬまで探し続けたのだそうです。
 けれど結局勇者オルは親友ナロと再会することは出来なかった、と伝説は語ります。

 でも今となっては、そんな勇者オルの頑張りは決してではなかった、と言えるはずです。

 だって、その伝説が語り継がれるかぎり……少なくとも伝説の中では、二人は
 ずっとずっと、であり続けられるのですから……。



 めでたし、めでたし。



 〈おしまい〉
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