何にでもなれるおっさん

【2】

　ある日、おっさんが道を歩いていると、侍しょうぞくの凛々しい若者に出くわしました。
　聞けば感心なことにその若者、これから鬼退治に向かうと言うのですが……一方で、何やら困り顔と言うか、浮かない顔と言うか、何ともし・っ・く・り・こないような微妙な顔をしています。

「どうにも、何か足りないような気がするのです」

　そう言う若者のお・と・も・を見てみると、いかにも強そうな一匹の犬と、いかにもかしこそうな一匹の猿……おっさんは「ははあ、なるほど」と、一人こっそり手を打ちました。
　そして若者と別れたあとで木の影に隠れ、早速一羽のき・じ・になります。

「ああ、そうそう！　きみだよ、きみきみ！」

　おっさんと別れるや、どこからともなく現れたき・じ・と出会った若者は、思わず声を弾ませてその出会いを大変喜びました。
　なので、おっさんはおっさんで、それをこっそり喜びました。