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190・エバンス勢VSダンジョン07

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王都・ネーヴェでは初めて人類側が
勝ち越したのを見て、それなりに盛り上がって
いたが、

「どこも男ってのはねえ」

「どうしてこう身勝手なんだが」

と、女性たちがひそひそとささやき……
男連中は肩をすくめていた。

『では第6試合―――

 魔族代表・バンシー、アルプ選手と、
 メルダ・クレイオス王国連合代表、
 リナ、エレン選手が戦います!!』

そのアナウンスに気を取り直したように
男女とも注目し、

「一方はまだ子供じゃないか」

「いくら魔導具での試合とはいえ、
 戦えるのか?」

口々に不安そうな声が上がるが、

『この試合はレーシングですが、1位で
 ゴールした方の勝ちとなります。

 そのため―――
 ただ走るだけではなく、うまく順位を
 制御する必要があるでしょう』

その説明に改めてモニターに注目が集まり、
住人たちはスタートを固唾かたずを飲んで見守った。



「これで勝てば我が方の勝利か」

「はい。何事も無ければ、ですが」

クレイオス王国の国王と、ルラン女性騎士団長が
謁見の間に設置されたモニターを見つめる。

内容としては魔族・人類が乗る四つの機体と、
複数のCPUの機体が混在するレース。

そんな中、それぞれの代表が乗る機体は、
すでに上位に躍り出ていた。



『代表以外の機体は、すでに周回遅れも
 出てきました。

 順位の変動こそありますが、対戦する
 4人とも、上位の座を争っております!』

ダンジョン:【魔境の森】のロビーから、
俺は妻の出るレースの実況を続ける。

これで勝てばこちら側の勝利だが……
        ・・・・・・
彼女たちからは、そうなる予定は聞いて
いない。

リナとエレンさん、いったいどうする
つもりなんだ?
と思っていると、

『!
 ここで動きがありました。

 魔族のバンシ―選手が1位に―――
 その後ろに人類側のリナとエレン選手も続く!

 アルプ選手は後方4位に下がりました!』

その展開を、子供たち、獣人ビースト
風狼ウィンド・ウルフと共に視線で追った。



「あっはははははは!!
 逃がさないわよお!!」

ダンジョン:【魔王城地下】で―――
ハンドルを握り笑いながら叫ぶ少女に、
魔王の兄が目を丸くし、

「ああ、気にするでない。
 あの魔導具を操作するとああなるのじゃ、
 リナは」

「魔導具に、性格が変わる効果があるとは
 聞いていないぞ……」

妹・メルダの指摘にエバンスは呆れるような
声で答える。

「オイオイ!
 アタイも忘れてもらっちゃ困るっての!!」

次いでエレンが両側から挟み込むようにして、
バンシーの乗る機体に追いすがる。

「おほほほほー!!
 大人しく下がりなさいな!!」

「お前さんの相方は、はるか後方だぜ!?」

そして左右からプレッシャーをかけるように、
車間距離を詰めていく。

「あら?
 アルプはそんな後ろに?」

バンシーが微笑みながら口を開くと続けて、

「……それでいいんですのよ!」

と、自らの機体をドリフトさせ―――
急激に確度の変わったそれはスピンし始める。

「あはっ!?」

「うおぉっ!?」

バンシーの機体は回転しながら、両側から
迫っていたリナとエレンの機体を弾き飛ばし、

二人の機体はコース外へ転落、そして
バンシー自体の機体も大きく失速した。

『あーっと、3台とも巻き込まれた!!
 リナとエレン選手の機体も復帰に時間が
 かかるが、バンシ―選手の機体も建て直しに
 戸惑って……!

 え? あれは!?』

唯一、後方に下がっていたアルプ選手の
機体が追い上げ、あっという間に三人がいた
地点を猛スピードで走り去り―――

「ありがと、バンシー!!
 行かせてもらうわね!!」

そして一気にゴールまで、もちろん一位で
突っ込み……

『6試合目、レーシング。

 アルプ選手が1位!
 魔族・バンシー、アルプ選手の勝利です!』

こうして試合は、第七試合―――
最後の最後までわからなくなった。


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