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159・カミュ王女Side16

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「な……!
 い、今何と言った!?」

「聖教会が保有する聖騎士隊の主力が、
 王都から姿を消しました!

 行先は恐らく魔族領……!」

その報告に、わらわは思わず大きな声を
上げてしまった。

確かに、聖教会は各国にまたがる―――
いわば超国家的な独立した組織。
単独で動く事自体は問題ではないが、

それが魔族領との争いに関わる事だったら
話は別だ。
何をどうしようが必ず巻き込まれてしまう。

「ゆ、勇者様たちは!?」

「全員、王宮にいるのは確認済みです!
 完全に聖教会のみの戦力で動いている模様!」

その答えにわらわはホッと胸をなでおろす。

「最悪の状態は避けられているか。

 勇者様たちに伝えよ。
 聖教会が勝手に動いた、各自警戒態勢を
 取られたし、と」

「ハハッ!」

報告をした者がわらわの新たな命を受け、
弾かれるように退室する。

そしてこれからの情報確認や、矢継ぎ早に
入って来るであろう注進に身構えていると、

「カミュ王女様!!」

「んきゃんっ!?」

そこに現れたのは、勇者・レオ様で、
思わずうわずった声が出てしまい赤面する。

「……え?
 あ、あー……だ、大丈夫か?」

「あ、ははい。
 何の御用でしょうか」

何とか我を取り戻して、努めて冷静に
対応しようとする。

「聞いたぜ。
 聖教会の連中がバカやったって」

「……もうお耳に入ったのですか。

 そうです。
 どうやら聖教会の主力だけで魔族領へ
 攻め込むようです。

 どんな勝算があるのかわかりませんが」

なぜか思った言葉で彼と対峙する。
ごまかす事も取りつくろう事も出来ず―――

「俺たちはどうすればいい?」

「今回、聖教会は王家にすら話を通さず、
 独自行動を取りました。
 なので、救援や支援の必要は無いと
 考えます」

「だよな。
 俺だってそんな事に付き合う義理も
 つもりも無い」

少なくとも聖教会の勝手な行動に対して、
手を出すつもりは無いようだ。

「勇者の方々には、万が一の時は王都防衛に
 当たって頂きますので、そのまま待機を」

「ああ、わかった。
 任せてくれ。

 それと……」

彼は珍しく言いよどむが、わらわの目を
じっと見つめ、

「今は言えねぇが、どうしようも無くなった時、
 俺や他の勇者たちに『考え』がある。

 もしその時になったら、身内や家族を連れて
 集まってくれ」

「??
 それは……どういう事でしょうか?」

彼や他の勇者たちは別世界の人間。

わらわや、ましてや王族以上に打つ手があるなど
考えられないのだが―――
と思っていると両肩がつかまれ、

「はひゅっ!?」

「今は言えないんだ。
 だが俺を信じてくれ、カミュ王女様。

 あんたとその身内だけは、絶対
 助けるから―――」

わらわは声を出せず、ただコクコクと
首を縦に振って承知の意を伝える。

「ありがとう。

 じゃあ、俺は失礼します」

彼は一礼して退室したが―――
わらわはレオの言葉を思い出し、また
理解するのに時間を要していた。

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