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144・隠していたものは
しおりを挟む「プリムお姉ちゃん、いい?」
「そうだね。それじゃ行こうか」
時間にして夜十時頃―――
ブラウンの短髪の、五・六才くらいの
男の子と、
リナより1・2才ほど年下と思われる、
赤毛の三つ編みをした少女が、夜間用の
薄暗くなった照明の廊下を歩く。
手にはそれぞれ、持てるだけのおにぎりや
お菓子を持って……
ダンジョン:【エンテの街地下】から、
とある地下通路へと入っていった。
「あっちは―――
【ハーレイドッグ子爵家地下】か……
こりゃ確定っぽいな」
俺は彼らの後ろをこっそりとつけながら、
独り言のようにつぶやく。
「まあ、子供の考える事だからな」
「自分も覚えがありますよ」
シルバーの長髪に赤い短髪の女性二人が
それぞれ語る。
両方とも目付きが鋭く、いかにもな武人という
雰囲気の……
元女性騎士団、サリーさんとシーマさんだ。
「夕食は終わってすでに就寝時間。
それでいてまだダンジョンは営業中―――
子供たちは寝静まって、大人は仕事に
集中している時間。
うまい事考えていますね」
「まあ助けられた身でもあるし、立場上
言い出せなかっただけであろう。
ヒロト、なるべく怒らないであげてくれ」
リナとメルダも小声で、気付かれないように
一緒に尾行する。
魔王・メルダが商品の消費量に対し、
盗まれたか横流しされたかの可能性を
言ってきたけど、
俺にはもう一つの予想があった。
それは……
『隠れて犬や猫、小動物を飼う』事。
俺自身経験があるし、小さな子供たちが
ペットを飼いたがるのは、甥っ子姪っ子で
確認済み。
こうして俺を含めて五人は、こっそりと
二人の後を追った。
「んっ?」
「あれは……」
直線通路なので身を隠す場所がなく、
かなり離れた位置からの追跡となったが、
ここもホテル施設の廊下と同様、夜になると
照明が夜間用に切り替わり、
気付かれずに何とか尾行を続けていた。
そして到着した先は、地下通路の途中に作られた
休憩エリア。
グレンとプリム、二人がそこへ入っていったのを
確認すると、
「確かにあそこなら、寝泊まりも可能ですから、
何か飼っていても大丈夫ですね」
「トイレもあるし、箱でも置いておけば
1日経てば自動的にクリーニングされるし」
リナの言葉に俺が返し、
「しかし結構な量を持っていったのう。
中には軽食の自販機もあるのに、
いったい何匹隠しておるのか」
「2・3匹じゃないのは確かだろうなあ」
あそこは子供たちのために途中休憩用に
作った部屋。
トイレに間に合わなかった時の事も考え、
お風呂もあるし、
急病になった時に備えベッドもあるため、
犬猫なら余裕で隠して飼えるだろう。
その扉の前まで来た俺たちは息をひそめ、
中の様子を伺うために、耳をくっつける。
すると中からは動物の鳴き声ではなく、
予想外の事態が聞こえてきた。
『すまない、チビたちをかくまってもらえて』
『どう? ここはもう慣れました?』
『ああ、まるで天国だ。
ここなら安心して―――』
俺とみんなは顔を見合わせる。
そして多分俺も彼女たちと同じ表情を
していたはずだ。
俺は意を決して扉を開け、
「な、何しているの!?」
「えっ!?」
「ヒ、ヒロトお兄ちゃん!?」
俺たちの乱入に、まずプリムとグレンが驚きの
声を上げ、
二人からやや離れて、眉毛の太い14・5才
くらいの女の子が―――
そして彼女にしがみついたり後ろに
かくまわれるようにして、10人ほどの
小さな子供たちがいた。
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