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106・まずは話し合いで
しおりを挟む「やっぱりかー」
賭けに負けた裏社会の男―――
バームードを洗いざらい吐かせた後、
俺は呆れたように声を上げた。
結局は、ローラさんとプリムちゃん母娘……
二人を狙っていた豪商の依頼で、奴隷商が
借金漬けにし、
その計画を俺がとん挫させてしまった事で、
裏社会の連中に依頼がシフト。
だがそれすら魔族のホーンドさんに邪魔されて
しまい、
しかも改めて宿屋を狙うも―――
今度はハーレイドッグ子爵家に冒険者ギルド、
さらにはエリックさんまで目を光らせるように
なった事で、うかつに手を出せなくなってしまい、
あまつさえそこで冒険者たちが、自分たちの
ナワバリで知らない利益を上げている……
と、メンツ上でも引くに引けない状態に
なってしまった、との事だった。
「ヒロトの旦那も悪いんですぜ?
こうまでメンツを潰されたとあっちゃあ、
こっちだって収まりやせんよ」
地下六階の『多目的フロア』で、俺やリナ、
それにサリーさんにコマチも聞いていたが、
「面倒くさいな。
自分たちで壊滅させてくるか?
コマチ殿やパトラ殿の助力もあれば、
一匹たりとて逃がす事はあるまいて」
元騎士団員の一人が、そのシルバーの長髪を
撫でながら、事も無げに語り、
「ワタクシはマスターの命令なら、
いつでも殺りますにゃ~ん♪」
黒髪黒目のメイドが、笑顔でその爪を
男に見せる。
「その組織だけ壊滅させても、何にも
なりませんよ。
多分、街全ての裏社会との抗争に
発展しますし―――
運よく全部片付けられたとしても、
すぐにヨソから裏社会の勢力が入り込み
ますって」
地球だって、どんなに法で締め付けようが、
アウトローや反社会的勢力は残っているのだ。
その脅威を全て消し去るというのは、
現実的じゃない。
「じゃあどうするの、お兄ちゃん」
リナが俺の片腕に手を回して聞いてきて、
「要は敵対しなければいいわけです。
手を組んだ方が利益になる、敵対は損だと
理解してもらいましょう」
「悪党どもと手を組むなど―――」
サリーさんは眉間にシワを寄せる。
元騎士団だけあって、正義感は強いのだろう。
そこで俺は彼女に耳打ちし、
「(完全敵対するより、ある程度関係を
結んでいた方が動きを監視・制御しやすい
ですから。
それに彼らは彼らなりの流儀、方法を
知っているでしょうし―――
今後、同じような存在が出てきた場合、
連中を通して対処出来ます)」
俺の言葉に『ううむ』と一言うなったが、
すぐに彼女はうなずき、同意する。
治安・防衛の最前線にいたからか、
その手の内部に監視役を置く、というプランは
すぐ理解してもらえたようだ。
「じゃあ、まずは―――
『お話し合い』に来てもらいましょうか。
バームードさん。
あなたのボスのいる場所を教えてください」
「マジかよ……」
男はがっくりとうなだれたが、すでに彼は
俺の眷属。
逆らう事は出来ない。
その後、その情報を元に彼のボスが、
パトラ・コマチによってダンジョンに
『招待』されたのは―――
その数日後の事である。
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