【完結】ゲーセンダンジョン繁盛記 ~魔王に異世界へ誘われ王国に横取りされ、 そこで捨てられた俺は地下帝国を建設する~

アンミン

文字の大きさ
102 / 203

102・帰ってきた治癒師

しおりを挟む

「お、お初にお目にかかります……!」

ダンジョン:【エンテの街地下】、
その地下一階休憩所エリア・ロビーにあたる
場所で―――
俺はペコペコと頭を下げられていた。

下げていたのは、ハーレイドッグ子爵家
お抱えの治癒師ヒーラー

アラサーの彼はそのグリーンの短髪をブンブンと、
何もない空間に頭突きするかのように繰り返して
いたが、

「お、落ち着いてくださいミュランさん。
 事情は伺っておりますから―――」

俺の妻、リナが飲み物をすすめる。

どうしてこうなっているかと言うと、
子爵家に勤める治癒師という立場でありながら、

そのご子息であるロイ様が熱を出していた時、
彼は不在だったのだ。

召喚された勇者の一人で、医学知識に長けた
聖女様に会いに行っていた時期と重なっていた
ためだが……

夫人であるマリア様はその事でカンカンに
怒っており、

ただ夫であるガド様は―――
現在のハーレイドッグ子爵家の状況を教え、
『勇者様の情報をヒロト殿に伝えよ』と
執り成し、

こうして俺に会いに来た、というわけだ。

「それで……聖女様は?
 名前とかわかりますか?」

「聖女様のお名前は、ユウコ・タケダです。

 そのスキルはどんな病気やケガも治す上、
 異世界の医学知識も豊富。
 向こうでも医者をやっておられたと。

 免疫や衛生概念など―――
 新たな方針も授けて頂きました!」

女医さんだったのか、その勇者様。
しかし、他に若い男女も複数いたはずだが。

「他の勇者様の事はわかりますか?」

「そちらはそれほど……
 ただ男勇者様が3名、また女性勇者様も
 3名ほど召喚されたとの事。

 男女別々で魔族領に送り込まれ―――
 それなりの成果を得て帰ってきたと聞いて
 おります」

あー……
もう戦争に巻き込まれてしまっているのか。

「ん?
 それなりの成果を得て帰って来たと
 いうのは……
 もう戻って来たという事でしょうか」

「はい。
 戦闘そのものは短期間で終わり―――
 10日もしないうちに戻ったと」

長期的な戦闘には関わらせていないのか?
それにこちらまで戦争の話が聞こえて
こなかったという事は―――
限定的な戦闘に止まっている感じ?
今いち状況がつかめないなあ。

「あ、あのヒロト様」

「?? 何でしょうか」

考えている最中に、ミュランさんの言葉で
現実に引き戻される。

「ヒロト様も召喚された勇者の一人、
 という事でしたが……
 それは他の勇者様たちに伝えられるの
 でしょうか?

 聖教会に大金を寄付すれば、会う事は
 出来ますが」

話によると、彼は自分の貯金全てをつぎ込んで、
聖女様に会う機会を得たらしい。

こっちの世界で国に保護されている勇者たちに、
金が必要とは思えないから―――
多分、その聖教会や国が勝手に取って
いるんだろう。

「う~ん……
 俺の場合は経緯が経緯ですからね。

 秘密裡ひみつりに連絡が付くのなら伝えようとは
 思いますけど、その手段が確立出来ない
 うちはまだ」

それに、俺が生きているという事を知ったら、
あのクソ王女が勇者たちに何をしでかすか
わからない。
安全かつ他に知られずに、そして確実に
伝える手段を思いつくまでは保留だ。

「そ、それとですね」

「まだ何か?」

そわそわした様子のミュランさんは、
やがて意を決したかのように口を開き、

「ハーレイドッグ子爵家の地下でも
 拝見いたしましたが……
 あの『どらっぐすとあ』は自由に使っても
 構わないのでしょうか!?

 あそこなら、ユウコ様から学んだ事を
 役立てられるかも知れません!」

あー、そういえば治癒師だったっけ。
そして聖女様からいろいろ知識を得たとなれば、
あそこは適材適所かも。

「そうですね。
 ただ注意書きはよく読んでください」

それを聞いた彼は『イヤッホォウウウ!!』と
雄たけびのような声を上げ―――
目的地へと走り去った。

「何ていうか……
 厨房を見たローラさん、エリックさんの
 ような感じだね」

「そうだね、アハハ……」

リナに話すと、乾いた笑いが返ってきて、

「あなた、何か飲み物いる?
 コーヒーでいい?」

「あ、じゃあお願い」

二人きりになった空間で、奥さんが飲み物を
用意しに業務用コーヒーメーカーへと向かう。

俺はその背中を見ながら、お城にいるであろう
勇者たちの事を考え……
救出や脱出についていろいろと思案し始めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...