【完結】ゲーセンダンジョン繁盛記 ~魔王に異世界へ誘われ王国に横取りされ、 そこで捨てられた俺は地下帝国を建設する~

アンミン

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66・朝食を終えて

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「おいしい!
 これ、もっとー!!」

「こ、こらロイ。
 行儀悪いですよ」

五・六才くらいの少年が、テーブルに座って
スプーンで料理を口に運ぶ。
父親譲りなのか、髪は薄いブラウンで、
隣りのガド様のダークブラウンの短髪が、
成長後の彼を連想させる。

父親の反対側にいる母親のマリア様が、
彼の世話をしながら注意するが、

「いえ、食欲が出てきたのは良い事です。

 それに食後に薬を飲んで頂かないと
 いけませんから、食べられるのであれば
 どんどん食べてください」

あれから一晩経ち―――

ロイ様の熱はすっかり下がったようで、
朝食に提供した病人食……
マカロニグラタンをすっかり平らげた。

「これだけ食欲があるのですから、
 これも大丈夫かも知れません」

そう言って俺が取り出したのは、鍋焼きうどんを
卵とじふうにしたものだ。

俺が調理し、複製用に『所有』している料理の
一つ。
それを見たハーレイドッグ子爵家の三人は
目を大きく見開いて、

「そ、それも……
 勇者様の恩恵ギフトの一つなのでしょうか」

「う~ん、どうなんでしょう。
 魔族側かも知れないですし、勇者側かも
 知れないですし……
 とにかく冷めないうちに食べてください」

ガド様の言葉に、俺はもう一つ鍋をテーブルの上に
差し出す。

「えっ?」

「い、いや……
 自分たちは―――」

マリア様にアマンダさんは困惑して、
こちらへ視線を向けるが、

「看病している人たちも食べてください。
 こちら側の体力もたもたないといけません。

 それに、子供がどんなものを食べているのか、
 把握しておくのも必要な事かと」

そのままテーブルの上にまた、三人分の
小皿と食器を置く。

「それもそうですな」

「で、では失礼して―――」

こうして親子三人と護衛一名は、鍋焼きうどんに
舌鼓を打つ事になった。



「はー……
 おなかいっぱいー」

ロイ様が、母親であるマリア様に抱かれながら、
満足そうに体を預ける。

うどんの後、デザートとしてパンプキンプリンを
食し―――
彼に薬を飲ませた後、俺と『来客』は一休み
していた。

「あの、ヒロト様」

不意にマリア様が俺に呼びかける。

「あ、ヒロトで構いませんよ。
 ここにいる間は『お客様』として振舞って
 もらいますので。

 それで何でしょうか?」

「で、ではヒロト殿。

 ロイをあのお風呂に入れてやりたいのですが、
 構いませんでしょうか。

 熱も下がったみたいですし、汗でベタベタして
 気持ち悪いと思いますので……」

「ああ、ここのお風呂ですか。
 あそこなら―――」

ブロンドの長髪と、ダークパープルの
ミドルショートの女性二名が、少年と俺に
交互に視線を送る。

昨晩、あの大浴場に入った二人はかなり
テンション上がっていたからなあ。
そこにあの子を入れてあげたいという気持ちは
わからないでもない。しかし、

「ええと、ロイ様の今の状態ですが……

 脅かすわけではありませんが、今の彼の中には
 まだ病気を引き起こすものが少し残っている
 状態なんです」

「そ、それはどういう」

父親が心配そうに聞き返してくる。

「ロイ様に飲ませた薬は、病気を大人しく
 させておくような効果のものなんです。

 ずっと薬を飲み続けて頂ければ、そのうち
 病気そのものも無くなります」

実際、現代医学における感冒病対策とは―――
細菌やウイルスの繁殖を止め、今いるヤツは
寿命まで待つタイプのもの。

ただ異世界ちきゅうの薬は効果が劇的なので、これでもう
完治したと勘違いしているのだろう。

「実はロイ様はまだ、病気と戦っている最中
 なのです。
 そしてお風呂って、意外と体力を消耗
 するので……
 正直おすすめは出来ません。

 ただ、確かに汗を洗い流せば精神的にも
 楽になるでしょうから……」

俺はいったん言葉を区切ると、マリア様、
アマンダさんの目を見て、

「長湯はしないで、髪と体を洗ったらすぐ
 出ると約束して頂ければ」

「わ、わかりました」

「指示に従おう」

そこで俺はリナを呼び、また彼女たちを浴場へと
案内させる事にし、

ロイ様は母親に抱きかかえられ、
護衛の女性と共に部屋を出ていった。

その後、他の子供たちを呼び……
後片付けを頼むと、ガド・ハーレイドッグ子爵と
二人きりとなる。

「あの、お風呂については少々、
 神経質のような気もしますが―――
 治りかけが一番油断出来ませんので」

ロイ様について話題を切り出すと、

「いや、現にあそこまで回復したのだ。
 ここまで来たら全て従おう。

 それに、あのポーションしか飲めなかった
 時に比べ……
 あれだけ嬉しそうに食事をする息子の姿は
 久しぶりに見た」

彼は深々と頭を下げ、やがて視線を元に戻すと、

「そこでヒロト殿。

 眷属になった身ではあるが―――
 本当に、こちら側に対する要望は無いの
 だろうか?

 秘密は守るし、いずれは商売の相談に乗る事も
 あるだろう。
 だが、今の時点ではそちらに恩しかない。

 何でも言って欲しい。
 このままでは私の気が済まぬ」

うーん……
思ったより義理堅い人物のようだ。

しかし今すぐに何かと言われても―――
ふと、俺はある事を思い出して人差し指で
上を指し、

「そういえば、この地上にある宿屋なのですが。

 拠点として買い取ったのですが、そこで
 働いていたローラさんとその娘プリムちゃんの
 母娘おやこが、性質の悪い奴隷商に目をつけられて
 いたようなのです。

 その事について、子爵様に動いてもらう事は
 可能でしょうか」

「ああ、確か料理を持ってきてくれた女性か。

 そのくらい造作もない。
 ここに手を出そうとする連中がいたら、
 私が裏からそれとなく圧力をかけておこう」

そこで子爵様はいったん間を置いて、

「それに―――

 私たち家族もまだまだ、このダンジョンに
 お世話になりそうだからね」

そこでガド様がニッ、と笑うと……
俺もまた笑顔で返した。

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