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19・カミュ王女Side02
しおりを挟む「……以上が、この度召喚した勇者たちの
『恩恵』でございます」
「フム」
初老の神官から書面を受け取る。
召喚からすでに二十日ほども経過し―――
どの勇者がどのような『恩恵』を授かったのか、
だいたいわかってきた。
わらわは書類に目を通しながら、それを確認
していく。
やはり最も強力な『恩恵』を持っているのは
男の勇者の方で……
その中でも島村は―――
軽減と強化上昇という、
『恩恵』を二つも授かっていた。
さすがわらわが主導して召喚した勇者……
他の勇者たちも、熊谷は神速を、
武藤は反射と―――
魔族との戦いに対し、強力な戦力となるのは
間違いない。
それに引き換え女の勇者の方は……
一番若い弥月とやらは探索、
白波瀬という行き遅れは守護、
しつこく神官に詰め寄っていたという武田は
聖女と―――
見事なまでに支援系。
それなら、我が国でも数さえ揃えれば代用出来る。
何と役に立たない連中なのか。
「これでは、女の方は戦力にならぬのう」
「い、いえそれは……
我が軍の後方支援に当たらせるのでは?」
コイツはいったい何を言っているのだ?
そんな事のために召喚したと―――
対魔族の切り札として呼んだと、どうやって
説明するつもりなのだ?
わらわが眉間にシワを寄せると、さすがに
マズイと思ったのか、
「し、視察に行く王族の護衛として、同行させては
いかがでしょうか!
支援とはいえ勇者がいれば士気も上がりますし、
王家の威光も示せようかと!!」
「ほう?」
悪くない考えかも知れん。
王家の一員に戦場へ向かわせ、そこに同伴させる。
どうせそんなところに出向くのは王族でも末端で
あろうし―――
つり合いとしてはちょうどいいか。
「そなたの言、考えておこう」
「ははっ!
で、ではこれにて失礼いたします」
神官が去った後―――
わらわは『次の者』を呼ぶ。
「……おるか?」
「ここに」
すると音も無く、十数人の女性が現れた。
露出の少ない衣装の者、派手な衣装の者、
まだ十を少しも過ぎていない者―――
わらわが男の勇者を懐柔するために、招集した
者たちだ。
男は下半身で考えを決めるからのう。
「ご苦労。
そなたらの使命は、召喚した男勇者を
骨抜きにする事だ。
元の世界に帰る事すら忘れるくらいに、な」
クスクス、という笑いと―――
妖しげな笑みを浮かべる女性たち。
「女の方はどうなされるのですか?
カミュ王女様」
「戦闘には使えないが、少し他の使い道を
考えついたのでな。
王族の末端にでも嫁がせれば―――
より王家の威光を強める事が出来るかも
知れぬし。
お前たちもせいぜい頑張るがよい。
いずれ勇者どもにはそれなりの身分を与えてやる
つもりだ。
そうなれば貴族夫人となるのも夢ではないぞ?」
王女の言葉に、彼女たちの熱気をまとい―――
一礼すると、その姿を闇へと溶かした。
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