割れ鍋に綴じ蓋

宮沢ましゅまろ

文字の大きさ
上 下
5 / 13

■5

しおりを挟む
ルリは平凡な男だ。ラントもディアンも、ルリには上等過ぎたのだ。そもそも好みの相手では無かったのに、押し切られる形で付き合ったのが間違いだったに違いない。
 ルリはそう思う事で、自分を守るしかなかった。苦い記憶だ。

 ――だが、それ以降、ルリは大きく変わった。

 どうせ裏切られるのなら、もう貞節を求めるのは止めよう。自分も好き勝手に遊び、相手も遊んで良い。そういう関係ならば、最初から傷つく事などない。そう考えるようになったルリは、今までのまるで乙女のような一途さを完全に捨て去った。だから、それを踏まえた関係を合法的に築ける今の恋人とはとても上手くやれている。

 ルリは今では、恋人の許可を得て恋人以外の相手とも関係を楽しんでいた。

 ◆

「おかえり」

 お見合いパーティの全日程が終わり、無事に地球に帰還したルリを迎えてくれたのは、同僚でもあり現在の恋人でもあるダンだ。

 ダンは固い鱗で身体が覆われている爬虫類系の太陽系の外から来た宇宙人ではあるが、顔にあたる部分は地球人と大差がない。背中にある無数の触手が中々に強烈なこともあって地球人にはあまりモテないようだが、それでもルリよりは女性陣に声をかけられるような美青年だ。やや中性的な顔立ちだが、二メートルを超える身体もあって女性のような雰囲気は皆無なのもギャップがあって良いと言われている。

 太陽系の外の種族が地球人から忌避される中、上手く周囲に溶け込み仲良くなれる高い対人能力もある。

 ダンは器用に手元のタッチパネルを操作しながら「どうだった? お見合いパーティ」と続ける。
 ダンはネットワークを統括する部署で働いている。委託社員ではあったが、豊富な人生経験を活かして、ルリたちが企画するお見合いパーティに関してもバックアップをしてくれていた。

「いつも通りだよ。俺の好みのタイプはいなかったけど」

 冗談めかしたルリの言葉に、ダンが「ははっ」と笑い声をあげる。

「良い男がいたら、卵のために積極的に誘って子種を貰ってよね」

ダンの言葉に、ルリは「勿論」と明るく答える。恋人同士の会話とは思えない光景だが、こんな会話をして許されるのは二人の仲が極めて良好だからだ。

  に、ダンはルリが他の男とセックスすることを望んでいる――。

(本当、とんでもないというかえぐい種族だよな。ま、了承する俺も大分キテるけど)

 ダンの種族は卵生だ。自らの卵を伴侶に産み付け、伴侶がその卵を孵す。卵生の種族というのは宇宙規模で見れば決して珍しくはない。だが、ダンの場合はその中でも更に特殊な方法で卵を孵す種族だった。ダンの種族は、卵の栄養源として自分以外の男の精液を大量に必要とするのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。

マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。 いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。 こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。 続編、ゆっくりとですが連載開始します。 「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

処理中です...