割れ鍋に綴じ蓋

■2

（そもそも選ぶ側にいると思ってるのもあれだなんだよな）

　数世紀前には懸念されていた少子化は、現在ではむしろ人口が多すぎるとして問題になっている。増えすぎた人口が住むには地球の小さな面積では足りず、現在では積極的な外宇宙への嫁入りや婿入りが推奨されていた。

　だから、今回のようなお見合いパーティが開催されることになったのだ。

　今回のような太陽系の外からの種族とのお見合いはほとんどないが、太陽系内の惑星の種族たちとのお見合いは比較的浸透しており、今では星を跨いだ結婚などさして珍しくはない光景だ。

　多くの種族に子供を産むことのできる女性体が少ない上、元々地球人と比べ繁殖力があまり高くない彼らからしてみれば、地球人というのはかなり良物件らしく人気はある。

　だが、それでも相手が見つからない者もかなりの数いた。

　地球人から見て魅力的だなと思えるような相手が望むステータスはかなり高いものだったからだ。
　子供が産めるなら誰でも良いというわけではないのだ。

　若くて見目麗しい者、知能や体力に優れている者、何らかの特殊な技能を持っている者。地球人たちと同じく、宇宙人にも好みはあるし条件があるので、つまるところ、地球でもモテない人間は宇宙でもモテない。

　そうなってくると、どうしても訳アリばかりとなる訳で……今回の太陽系の外の種族とのお見合いになったというわけだ。

　今回のお見合いが決まった際、地球側の参加者はかなり難色を示していた。内容を告げた時の彼らの落胆を思い出し、ルリは苦く笑った。

　一応、お見合いをするにあたって地球人側もいろいろと条件は付けている。穏やかで優しく、経済力に優れていること。複数の妻や夫を持つのではなく、一人だけを愛するような一途な者であること。それを先方に伝えた上でのお見合いだった。

　ルリたちも人身御供を出したいわけではないし、今回のお見合いだってあくまでパートナーが欲しいのであって奴隷を欲しがっているわけではないのだが、どうも今回参加している中には変な思い違いをしている者がいるらしい。

　まるで、自分がドナドナの歌に出てくる子牛のような存在であると考えているのか、しきりに悲劇のヒロインであるということを前面に押し出してくる参加者に、ルリを含めた多くの職員は頭を抱えていた。

だが、その警戒が全く無用であるとも言い切れないことを、ルリは身をもって知っている。
　何せ、ルリが以前交際していた相手は太陽系の外の種族の男で、交際していた当時、ルリはその男から中々の仕打ちを受けていたのだから。しかも、二人から、だ。

（まぁ、だまされた俺も悪いんだけどさ……）

　ルリは本来、大の人外好きだ。
　人外と言っても、数世紀前に流行していたいわゆる創作の話でよくあった獣人やエルフみたいなタイプではない。ガチの人外、つまり化け物といわれるような容姿が好きだった。

　だから、その男たちと付き合ったのはルリの中でも青天の霹靂だった。