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西暦、二千六百年――。
アルデバラン星Cで開催されたお見合いパーティの会場内は、凄まじい熱気に包まれていた。
地球人の宇宙旅行が一般的になったのは、二千二百年頃。当時はまだ異星人が存在しているということはただの妄想として扱われていたが、それからおよそ百年後には他の星から異星人がやってくるようになっていたのだから、時代が進むというのはあっという間なのだというのがよくわかる。
(やっぱり、すごいよなぁ)
宇宙銀河連盟地球支部の一般職員を務めるルリ・田中は、会場内を埋め尽くす様々な星の種族の姿に胸を高鳴らせていた。地球人が他の星の種族と交流を持ち始めて今日でちょうど三百年は経つが、軍人や政治家以外の地球人が太陽系の外に出る機会というのは実はあまり多くはない。
正確には、地球人が太陽系の外に出ることや太陽系の外の種族との交流を忌避していると言って良い。
太陽系の内側の種族というのは、地球人を含めて多少の文化の違いはあれども基本的には調和を大事にする保守的なものたちばかりだ。だから、基本的に何かトラブルが起きても話し合いで大抵のことは解決できるし、たとえ交渉が決裂したとしても、互いに距離を置くという方法をとるので今のところ大きな問題は起きていない。
だが、太陽系の外の種族というのは良い意味でも悪い意味でも革新的な性質を持っている。地球人とは本質的に合わない上、合わないだけならまだしも、何か問題が起こると話し合いではなく力で押さえつけようとしてくるその野蛮な行動に対し、地球人は激しい嫌悪感を抱いてしまっていた。一部の過激な地球人たちは、太陽系の外の種族をテロリスト集団だとさえ言っており、これが太陽系の外に対する現在の地球人の認識だ。
多くの地球人はさすがにそこまではっきりとは言わないものの、やはりあまり良くは思っていない。中々に根深い問題なのだ。
(まぁ、それ以外にも理由はあるんだろうけど……)
ルリは、太陽系の外の種族の主な生態を思い出し、苦い笑みを浮かべた。太陽系の内側の種族の多くは、外見もどちらかといえば地球人寄りだ。耳が尖っている、尻尾がある、謎の触角があるなどの地球人とは明らかに違う要素はあるが、アニメや漫画の世界に出てくるキャラクターだと思えば気にならない程度の差でしかない。
反面、太陽系の外の種族の外見は、どちらかといえば言い方は悪いが、怪物のような容姿が多い。その中でも特に昆虫に似ている外見の類は、女性にとっては特に受け入れ難いようだ。いや、女性だけでなく男性からも避けられている。
今回のお見合いパーティはそういった訳アリかつ、女性の数が少ない太陽系の外の種族たちからの強い希望で実現したのだが、地球からの参加者たちは、やはりできる限り地球人に近い容姿の相手が良いのだろう。異形の容姿の面々を避けて声をかけている。一応、数は少ないものの地球人に比較的近い外見をしている太陽系外の種族もいるにはいるのだ。
ルリは地球人たちのそういった行動を横目で見て、内心で大きなため息を吐いた。
西暦、二千六百年――。
アルデバラン星Cで開催されたお見合いパーティの会場内は、凄まじい熱気に包まれていた。
地球人の宇宙旅行が一般的になったのは、二千二百年頃。当時はまだ異星人が存在しているということはただの妄想として扱われていたが、それからおよそ百年後には他の星から異星人がやってくるようになっていたのだから、時代が進むというのはあっという間なのだというのがよくわかる。
(やっぱり、すごいよなぁ)
宇宙銀河連盟地球支部の一般職員を務めるルリ・田中は、会場内を埋め尽くす様々な星の種族の姿に胸を高鳴らせていた。地球人が他の星の種族と交流を持ち始めて今日でちょうど三百年は経つが、軍人や政治家以外の地球人が太陽系の外に出る機会というのは実はあまり多くはない。
正確には、地球人が太陽系の外に出ることや太陽系の外の種族との交流を忌避していると言って良い。
太陽系の内側の種族というのは、地球人を含めて多少の文化の違いはあれども基本的には調和を大事にする保守的なものたちばかりだ。だから、基本的に何かトラブルが起きても話し合いで大抵のことは解決できるし、たとえ交渉が決裂したとしても、互いに距離を置くという方法をとるので今のところ大きな問題は起きていない。
だが、太陽系の外の種族というのは良い意味でも悪い意味でも革新的な性質を持っている。地球人とは本質的に合わない上、合わないだけならまだしも、何か問題が起こると話し合いではなく力で押さえつけようとしてくるその野蛮な行動に対し、地球人は激しい嫌悪感を抱いてしまっていた。一部の過激な地球人たちは、太陽系の外の種族をテロリスト集団だとさえ言っており、これが太陽系の外に対する現在の地球人の認識だ。
多くの地球人はさすがにそこまではっきりとは言わないものの、やはりあまり良くは思っていない。中々に根深い問題なのだ。
(まぁ、それ以外にも理由はあるんだろうけど……)
ルリは、太陽系の外の種族の主な生態を思い出し、苦い笑みを浮かべた。太陽系の内側の種族の多くは、外見もどちらかといえば地球人寄りだ。耳が尖っている、尻尾がある、謎の触角があるなどの地球人とは明らかに違う要素はあるが、アニメや漫画の世界に出てくるキャラクターだと思えば気にならない程度の差でしかない。
反面、太陽系の外の種族の外見は、どちらかといえば言い方は悪いが、怪物のような容姿が多い。その中でも特に昆虫に似ている外見の類は、女性にとっては特に受け入れ難いようだ。いや、女性だけでなく男性からも避けられている。
今回のお見合いパーティはそういった訳アリかつ、女性の数が少ない太陽系の外の種族たちからの強い希望で実現したのだが、地球からの参加者たちは、やはりできる限り地球人に近い容姿の相手が良いのだろう。異形の容姿の面々を避けて声をかけている。一応、数は少ないものの地球人に比較的近い外見をしている太陽系外の種族もいるにはいるのだ。
ルリは地球人たちのそういった行動を横目で見て、内心で大きなため息を吐いた。
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