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◇本編Ⅰ◇

006友への相談①

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「オリバーを傷つけたくないけど、このまま行くと腹上死しちゃう未来しか見えなくて困ってるんだよぅ……」
「はー。なるほどね。しかし、お前がそこまでいう程、アイツそんなに激しいのか……。見た感じ、堅物そうなイメージなのに」
「堅物であることは否定しないよ? 真面目だし。でも、一晩で十二回ヤれる男が激しくないなら、世の中の男は皆枯れてない?」
「うっわ。確かにえぐいな。それ……」

 ひえっと、メドベージェフが息を飲んだのが分かる。性に比較的淡白なエルフからしてみれば、化物以外の何ものでもないのだろう。実際、別段淡白という訳ではないセフィロトから見ても、化物級なのは間違いない。

 ちなみに持続性もすごいです、と伝えると、メドベージェフは盛大に顔を引き攣らせていた。

「……せっかく求めてくれてるんだから頑張りたいけど、僕、もう今年で何だかんだで六十歳じゃん? さすがにそろそろ身体が限界と言うか……」
「あー……」

 セフィロトが素直にそう言うと、メドベージェフは納得したように目を細めた。

 ハイエルフであるメドベージェフの寿命はおよそ千年――。

 ハイエルフもユニコーンと同じく、目には見えない部分――臓器や視力、聴覚などの肉体機能自体は、歳をとるごとに、徐々に衰えていくが、セフィロトの記憶が確かなら、メドベージェフは二百歳くらいだ。

 メドベージェフがはっきりと老化を感じるような状態になるのは、早くても五百年くらいは先のことなので、セフィロトが年のせいで身体が辛くて……と言っても、多分今一つ実感はわかないようだ。だが、全く予想もつかないという訳でもないんだろう。

「死活問題ってやつか」
「うん。今はまだ良いよ? 辛くても何とか身体は持ってるから。でも、オリバーは今二十代で、十年後でもまだギリギリ三十代でしょ? しばらくは……ほら、あっちも元気じゃない? 獣人ってただでさえ体力あるし」
「あー。それはなー。しかも、あの体格だろ? 下手したら爺さんになっても俺やお前よりは体力ありそうだわ」
「……でしょ?」

 腹上死だけは避けたいんだよねぇ、としみじみと言うセフィロトに、メドベージェフは「うーん」と唸った。

「好きだから受け止めてあげたいんだけど……。オリバー、口淫も手淫もさせてくれないからさ。結局、全部僕の身体で受け止める羽目になってるのがね」
「頑なに嫌がる理由がよくわからねーよなぁ。清らかって……さすがに笑うわ」

 セフィロトとメドベージェフは互いに顔を見合わせて、苦笑いを浮かべた。
 十代ならいざ知らず、六十を超えそうな年齢の男が言われるような言葉じゃないのは間違いない。

 そもそも、セフィロト自身、別に性知識に疎いとか特別初心うぶだという訳でもないのだ。

「誰かにされて心の傷になったりしたって言うのは、オリバーの場合ありえないでしょ?」

 手淫はともかく、口でして貰う場合、歯が当たってしまったとか、普通の男からそういう理由で嫌になった可能性はあり得るのだろう。

 だが、セフィロト以外視界に入っていないオリバーの場合、そう言った理由などありえない。

 そう言うと、メドベージェフが激しく首を縦に振った。

「ないないない。そもそも、お前と付き合うまで、アイツ童貞どころかキスすらしたことなかったし、その後お前以外に目を奪われてるとこなんか見たことねーぞ」
「……うん。だよね。僕と付き合った後に……とか、娼館ってのも絶対ないだろうし」
「おぅ。絶対にありねーな。アイツがお前以外に身体を許すなんて。娼館に、付き合いだけだからどうだ? と誘われたとしても、アイツなら即座に断るね。何があっても絶対にいかねーよ。それこそ、記憶喪失になってもお前を裏切るなんてありえないね」
「そこまで言う!?」

 メドベージェフの言葉に、セフィロトは思わず大きな声で突っ込んでいた。

「そりゃ言うさ! あいつガキの頃から、ずーーーーーっとお前のことが好きだったんだぜ? ザインが今も生きてて、お前と付き合ってるっていう話なら、もしかしたら他にも目を向けたかもしれねぇが……。お前と付き合えたんだから、絶対によそ見なんかしねぇよ。てか、よそ見しないから、今まさにお前死にかけてるんだろーが」
「……う」

 畳み掛けるようなメドベージェフの話に、セフィロトは、頬を赤く染めながら下を向く。

 確かに、浮気して他で発散してるようなタイプなら、セフィロトが悩むようなことにはなっていないだろう。
 オリバーが一途すぎるからこそ、こういう事態になっているのだから。
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