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◆chapter1◆幼少時代編

過保護すぎるのも困りものです②

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「シオンは、今日も最高にかわいいねぇ」

 食堂――と呼ぶにはいささか立派すぎる広くて豪奢な内装の部屋で、俺はパパの膝の上に抱きかかえられていた。俺の頭に顔を埋めながら全力の頬ずりをする脂下がった表情は、魔族たちから憧れと尊敬の目で見られている魔王の怜悧な印象とは程遠い。

「きゅ……きゅう~ん」

 テーブルには美味しそうな俺の食事がお皿に入れられて準備されていた。朝のご挨拶が大切なのは分かるが、育ち盛りな俺にとってこの時間は中々に辛い。既に十分くらいこんな感じなのだから。

「すー……はー」

 パパはご機嫌で俺の背中に顔を埋めて犬吸いをしている。犬を愛玩動物として可愛がる習慣なんてない筈なのに、自然に顔を埋めて吸いだした時は最初すごくびっくりしたけれど、やっぱりこういうのって万国、いや万世界共通ってことなのかな。ちなみに兄上たちもパパに影響されたのかあわよくば吸ってきたりする。

 こんな姿を見たら、きっとパパのファン? だったりする魔族はショックで寝込むに違いない。

(まぁ、城勤めのヒトや、城に頻繁に出入りしているようなヒト、他の長にはもうとっくにバレちゃってるけど)

 魔族は、現在大きく分けて悪魔族、魔獣族、妖精族、不死族という四つの種族と、彼らに従う従魔で成り立っている。魔王が頂点なんだけど、それとは別に、従魔を除いた、それぞれの種族ごとに長がいるんだ。

 一応それぞれの一族の説明をすると、悪魔族は、ファンタジーによくあるあの悪魔だ。俺のパパと兄上たちはこの悪魔族になる。魔法も白兵戦も両方得意で、弱点らしい弱点がないことから、魔族の中でもヒエラルキーの頂点に君臨しているが、プライドが高くて苛烈な性格なこともあって問題を起こすことが多いことで知られている。

 魔獣族は、獣人に近い感じだけど、ゲームとかで一般的な耳や尻尾のある獣人とちがって、魔獣族の人型はあくまで変身しているだけなので、どちらかといえば獣要素の方が強い感じの種族だ。魔法は不得意だけど、肉体の強度は一番強くて、白兵戦に長けている。

 妖精族は、ピクシーみたいな悪戯な妖精、あとはエルフとかドワーフが該当する。個人的にはあんまり魔族って感じの雰囲気じゃないヒトが多いけど、この世界ではいわゆる知的生命体は人間と魔族の二つだけなので、こういう括りになっているみたい。

 不死族はいわゆるアンデットの類のヒトたちのことを指す。身体能力も高く魔法も得意だけど、太陽や炎が苦手だったりと弱点も多い。ただ、夜に関しては悪魔族でも凌駕する個体もいたりするので、魔族の中では結構地位は高い。彼らは人間蔑視が特に酷い上にかなりサディスックな性格なヒトが多いので、俺は実害こそないが、正直苦手だったりする。

 従魔族は、その名前の通りだ。四種族のどこにも属さず、彼らに従う力の弱い魔族や魔物全般をこう呼んでいて、知性のほとんどない場合は魔物、人間と近い、もしくは同等の知性を持っている場合は魔族と呼ばれている。不死族によって眷属化されたヒトや獣は分類としてはここに入るけれど、人間をこれ以上減らさないようにと、現在では生きている人間を新たに眷属化することは固く禁じられている。

 一応例外――互いに愛し合って一緒に居る為に相手を眷属化することが許されるという場合はあるみたいだけど、実際にそう言う理由で眷属になった人間は見たことはない。前世で散々みたのは、ただの捕食や凌辱行為だけだ。

 ちなみに魔族同士では多少種族間での小競り合いがあるみたいだけど、城内に務めている魔族は比較的品行方正かつ、穏やかな気質の魔族が選ばれているようだ。

(しかし、いつまでこのままなんだろう……)

 限界を迎えた俺のお腹がぐう~となっている。さすがにもうそろそろ限界だった。

「……父上、そろそろシオンを開放してあげては? いくらなんでもさすがに構いすぎかと思いますよ」

 お腹減ったなぁと、じっとお皿の上の料理を見つめていると、左手側の席に座っていたアズール兄上が助け船を出してくれた。少し苦笑しているし……ひょっとして俺、よだれ垂らしてた? 
 
 だとするとちょっと恥ずかしい。
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