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◆第2章 おまけの神子とにゃんこ(?)とワイルドエロ傭兵
苦手な男⑤-1
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一応、言い訳させてもらうと、今後が怖いからとか王太子殿下に同情しただけじゃなく、俺が夜会に参加した方が良いんじゃないかなって思った理由は、他にも実はあるにはあった。いや、本当に!
(まぁ……正確に言えば理由というほどしっかりしたものではないのだけれど)
何となく、あの時はこの誘いを受けた方が良いような気がしたんだ。
簡単にいうと、俺の中で嫌な予感がしたというか……。そういうのもあって、ついぽろっと言ってしまった訳で。
ラインハルトにはいつも助けてもらっているし、感謝している。だけど、相談なしに軽率に誘いを受けてしまったのは確かに俺の失態なのだが、多分ラインハルトに相談していたら、俺は押し切られて夜会には参加をしなかっただろう。
元々俺は押しに弱い所があるし。
でも……正直、ラインハルトを盾にしてすべての嫌なことから逃げる……というのが、本当に正解なのかなという迷いも前から少しあったんだよな。頼ってばかりはラインハルトに悪いという意味だけでなく、色々なことを考えた結果、そう考えることが最近俺には増えていた。
後から夜会に参加することをシュナにも一応話すと、ラインハルトと同じく「なんでそんなすぐ答えちゃうかなぁ」と呆れていたが、要人のことを伝えるとすぐに態度をころっと変えた。
「あ、でもむしろそれ利用できるかもね。トオルのお友達を増やすために。結構、イイ所の男ばっかりじゃん。そんな風に頼まれるってことは、新しい庇護者見つけたらどう?」
当然同席していたラインハルトも、そう言われれば……とシュナの話に納得していたが、俺は苦い顔で笑うしかなかった。
以前、シュナとの会話でラインハルトの他にも俺を守ってくれるような相手を作った方が良いと言われた日、権力がいくらあっても完璧に俺を守るなんて不可能なんだということをやっと理解できた俺は、少しずつ周囲と上手くやれるように自分でできることを始めようと決めた……のだが、正直中々上手くいってはおらず、半ば挫折しかけていた。
「はっきりしないところが、一周まわって守ってあげたいって思える感じだから、こうちょっと内気な感じで迫ってみるとか」
「ああ、それはありだな。お前は困っている顔が可愛いし、需要はあるだろう」
「……いや、それ何か違うよね」
シュナとラインハルトはそんな風にいうが、この言い方だとまるで愛人を増やすみたいな言い方だ。
確かに、実際に俺みたいな薬にも毒にもならないようなタイプが嫌いじゃないヒトもいるんだろうとは思うが、俺は別に恋人や愛人を募集している訳じゃないから、ちょっと……というか、かなり話がずれてるんだよな。
俺が作りたいのは友人であって恋人でも愛人でもない。
「えぇ~? あ、なら庇護欲をそそる感じで甘えてみるとかぁ」
「いや、絵面がきついよな、それ……!!」
速攻で突っ込んでしまった。
この世界に来るまで、男相手とどうにかなるという選択肢がなかった俺としては、男同士に大分抵抗もなくなってむしろほだされかけているとはいえ、たとえ恋愛感情を含まない関係を目指すとしても、俺のことを守ってほしいと擦り寄るのは何となく抵抗がある。
それに庇護欲って子供とかか弱い女性とかに抱くような感情だろ。俺は女性にだってそうそう抱いたことはないぞ。最近の女の子って強いし。
俺は平凡な上、イイ年した男だ。まだかろうじて青年のくくりではあるし、今は自虐ネタでおじさんだからと冗談めかして言っているだけだが、あと数年したら多分本当におじさんと言われてもおかしくはない年齢である。その俺が取るべき方法だと言われても、はいそうですかとは言えない。
むしろ、正気を疑うレベルだ。
それに俺は、今までの元の世界ではどんなことでも基本的にはすべて自分でやって来たようなタイプだ。電化製品とかの力を借りてはいたが、一応料理や掃除など身の回りのこともやっていたし、会社では既に中堅社員だったから、後輩の面倒を見たりすることも多くなっていた。
家族の事だってそうだ。俺が、基本的にすべて表立ってやっていた。
勿論、誰かを頼ってはいけないわけじゃない。俺だってミスしたりしたのを、先輩や時に後輩に助けられたことも何度もあったからな。
だけど、それはあくまで互いに助け合うような関係であって、誰かに依存してすべてを相手に負担してもらうような関係じゃない筈だ。
だから、贅沢を言える立場ではないのは承知だが、恋愛感情が絡まない関係であったとしても、変なプライドからどうしてもそういうのは無理だなと俺は思ってしまったのだ。
俺はちょうどいい機会だと思い、自分の気持ちを話した。すると、シュナは少し考えた後でこう言った。
「だったら、今回の夜会は利用しちゃえば? さっきはまぁ、ああいうやり方が効果的だよって意味では伝えたけど、冷静に考えると恋敵になるような奴は僕も嫌だしねぇ。貴族でも身持ちが固い人はいるし、配偶者がいる相手でもしかしたらトオルのことを変な意味じゃなく気に入ってくれる人もいるんじゃない? 異世界の話をして欲しいって言われてるんでしょ? 興味を持ってくれれば十分あり得るんじゃないかな。そのヒトたちの利益になる知識とかあればだけど」
俺はその言葉に、はっとした。
確かにそういう部分で気に入られれば、俺が懸念している愛人的な話にはならない気がする。
「……そうしてみるよ! ありがとう、シュナ」
俺がお礼を言うと、シュナは嬉しそうに笑ってくれた。どうせ、もう参加すると言ったんだし、前向きに考えよう。俺はそう考えた。最後に、念押しで軽率な行動は駄目だよと叱られてしまったが……、そこは次回からもう少し考えますと俺は素直に謝ったことで事なきを得た。
(まぁ……正確に言えば理由というほどしっかりしたものではないのだけれど)
何となく、あの時はこの誘いを受けた方が良いような気がしたんだ。
簡単にいうと、俺の中で嫌な予感がしたというか……。そういうのもあって、ついぽろっと言ってしまった訳で。
ラインハルトにはいつも助けてもらっているし、感謝している。だけど、相談なしに軽率に誘いを受けてしまったのは確かに俺の失態なのだが、多分ラインハルトに相談していたら、俺は押し切られて夜会には参加をしなかっただろう。
元々俺は押しに弱い所があるし。
でも……正直、ラインハルトを盾にしてすべての嫌なことから逃げる……というのが、本当に正解なのかなという迷いも前から少しあったんだよな。頼ってばかりはラインハルトに悪いという意味だけでなく、色々なことを考えた結果、そう考えることが最近俺には増えていた。
後から夜会に参加することをシュナにも一応話すと、ラインハルトと同じく「なんでそんなすぐ答えちゃうかなぁ」と呆れていたが、要人のことを伝えるとすぐに態度をころっと変えた。
「あ、でもむしろそれ利用できるかもね。トオルのお友達を増やすために。結構、イイ所の男ばっかりじゃん。そんな風に頼まれるってことは、新しい庇護者見つけたらどう?」
当然同席していたラインハルトも、そう言われれば……とシュナの話に納得していたが、俺は苦い顔で笑うしかなかった。
以前、シュナとの会話でラインハルトの他にも俺を守ってくれるような相手を作った方が良いと言われた日、権力がいくらあっても完璧に俺を守るなんて不可能なんだということをやっと理解できた俺は、少しずつ周囲と上手くやれるように自分でできることを始めようと決めた……のだが、正直中々上手くいってはおらず、半ば挫折しかけていた。
「はっきりしないところが、一周まわって守ってあげたいって思える感じだから、こうちょっと内気な感じで迫ってみるとか」
「ああ、それはありだな。お前は困っている顔が可愛いし、需要はあるだろう」
「……いや、それ何か違うよね」
シュナとラインハルトはそんな風にいうが、この言い方だとまるで愛人を増やすみたいな言い方だ。
確かに、実際に俺みたいな薬にも毒にもならないようなタイプが嫌いじゃないヒトもいるんだろうとは思うが、俺は別に恋人や愛人を募集している訳じゃないから、ちょっと……というか、かなり話がずれてるんだよな。
俺が作りたいのは友人であって恋人でも愛人でもない。
「えぇ~? あ、なら庇護欲をそそる感じで甘えてみるとかぁ」
「いや、絵面がきついよな、それ……!!」
速攻で突っ込んでしまった。
この世界に来るまで、男相手とどうにかなるという選択肢がなかった俺としては、男同士に大分抵抗もなくなってむしろほだされかけているとはいえ、たとえ恋愛感情を含まない関係を目指すとしても、俺のことを守ってほしいと擦り寄るのは何となく抵抗がある。
それに庇護欲って子供とかか弱い女性とかに抱くような感情だろ。俺は女性にだってそうそう抱いたことはないぞ。最近の女の子って強いし。
俺は平凡な上、イイ年した男だ。まだかろうじて青年のくくりではあるし、今は自虐ネタでおじさんだからと冗談めかして言っているだけだが、あと数年したら多分本当におじさんと言われてもおかしくはない年齢である。その俺が取るべき方法だと言われても、はいそうですかとは言えない。
むしろ、正気を疑うレベルだ。
それに俺は、今までの元の世界ではどんなことでも基本的にはすべて自分でやって来たようなタイプだ。電化製品とかの力を借りてはいたが、一応料理や掃除など身の回りのこともやっていたし、会社では既に中堅社員だったから、後輩の面倒を見たりすることも多くなっていた。
家族の事だってそうだ。俺が、基本的にすべて表立ってやっていた。
勿論、誰かを頼ってはいけないわけじゃない。俺だってミスしたりしたのを、先輩や時に後輩に助けられたことも何度もあったからな。
だけど、それはあくまで互いに助け合うような関係であって、誰かに依存してすべてを相手に負担してもらうような関係じゃない筈だ。
だから、贅沢を言える立場ではないのは承知だが、恋愛感情が絡まない関係であったとしても、変なプライドからどうしてもそういうのは無理だなと俺は思ってしまったのだ。
俺はちょうどいい機会だと思い、自分の気持ちを話した。すると、シュナは少し考えた後でこう言った。
「だったら、今回の夜会は利用しちゃえば? さっきはまぁ、ああいうやり方が効果的だよって意味では伝えたけど、冷静に考えると恋敵になるような奴は僕も嫌だしねぇ。貴族でも身持ちが固い人はいるし、配偶者がいる相手でもしかしたらトオルのことを変な意味じゃなく気に入ってくれる人もいるんじゃない? 異世界の話をして欲しいって言われてるんでしょ? 興味を持ってくれれば十分あり得るんじゃないかな。そのヒトたちの利益になる知識とかあればだけど」
俺はその言葉に、はっとした。
確かにそういう部分で気に入られれば、俺が懸念している愛人的な話にはならない気がする。
「……そうしてみるよ! ありがとう、シュナ」
俺がお礼を言うと、シュナは嬉しそうに笑ってくれた。どうせ、もう参加すると言ったんだし、前向きに考えよう。俺はそう考えた。最後に、念押しで軽率な行動は駄目だよと叱られてしまったが……、そこは次回からもう少し考えますと俺は素直に謝ったことで事なきを得た。
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