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◆第2章 おまけの神子とにゃんこ(?)とワイルドエロ傭兵

にゃんこ(?)と俺②-2

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「え~、別にいいじゃん? ほんと、トオルってばいい匂いなんだよなぁ」

「いや、さ。いくら人目が無くてもさ、抱き合ってたら誤解されるだろ? 俺ちょっと今、そういう噂は絶対駄目というか……」

 好意的なシュナは、最近、味方を増やそうと色々と頑張っている俺にとって一見すると良さそうに見えるが、実際は逆で、まったくもってよろしくない相手だ。

 友人や味方を増やすにあたって、俺からも絶対に譲れない条件があった。

 それは、まず美形すぎない事だ。

(最初はもう誰でもよいと思っていたんだけどな……。それだと逆に自分の首を絞めかねないって気づいたんだよ)

 勿論、前に思った通り俺に美形は荷が重いというのもある。明らかに俺と美形では不釣り合いだし、できれば自分とさほど変わらないようなタイプのほうが俺も気が楽だしね。

 この世界の美形率は高いけれど、ラインハルトやハーミット、伊藤のお気に入りのアンヘルと比べたら地味な感じの人は結構いる。

 俺は、伊藤を刺激しない程度に味方を増やしたいため、あまり美形じゃない事、権力は並程度である事、恋人や婚約者が居て俺にはそっちの興味を持たない事という相手を現在では探していた。

(俺は伊藤に勝ちたいわけではなく、元の世界に戻る日まで穏やかに暮らす事なんだし。絶対それが一番無難なんだよな)

 多少は邪魔されるだろうが、侍従さんたちやリチェルさんの場合はあまり絡んでこないことから察するに、この読みは正しいとみている。

 それを前提にしてしまうと、シュナは貴族ではないかもしれないが、外見はすこぶる美形だ。

 伊藤は中性的な美形には基本的には興味は無いみたいだが、おそらくこの体格なら伊藤の合格ラインだと俺は見ている。

 リチェルさんのような侍従さんは柔和で女性的な仕草なんだけど、シュナは仕草も言動も男性的だし、背も平均くらいはあった。 

 性格的にも話しやすそうで、万が一にも伊藤がシュナのことを気に入ったら今よりもさらに酷いいじめがありそうで怖すぎる。

 恐ろしいことに本当になんでもやるからな、伊藤って。

「えぇ。何、トオルってばもう、こっちにそういう相手がいるの~? 恋人って事? 僕、トオルが気に入ったから出来たら仲良くなりたんだけどなぁ」

 俺はその言葉にうっと声を詰まらせた。

 大好きな猫になれる友人は、俺にとっても癒しに絶対になると思うし、第一印象も悪くない。

 だが、そう考える度に伊藤の顔がちらつくのだ。

「恋人は居ない。でも、俺、その色々と問題抱えているというか、目立ちたくないというか……。いと……神子にも目を付けられたくないし……」

 俺はぼそぼそと小さな声で呟くように言う。

 みみっちいのは分かっているんだけれど。

「ん~?あー……、そう言えば、何か変な噂聞いたねぇ~。異世界の二人、めちゃくちゃ仲悪いって。でも、トオルの様子見てる限り、仲が悪いって言うか神子の方がトオルを嫌いなのかなぁ? 神子って結構な男好きって噂だけど本当?」

 ちょっと眉を顰める様は、美形だけあって迫力がある。

「男好き……って表現をするにはあの子は子供過ぎるけど、まぁ、それなりに美形は好きみたい? だから、俺が美形と一緒に居ると機嫌が悪くなるんだよ。俺はあくまでおまけだし、やっぱりあっちをたてるべきだろ?」

 これが俺と同年代やせめて二十代なら、俺も迷わずに「はい、男好きです」って言ってただろうけど、相手はまだ15歳の少年だ。性格には難しかない様に見えるが、子供なんて大なり小なり我儘なものだ。俺だって十代の頃は結構、失礼な奴だったし。それに、俺はあの子の人生がどういうものだったのかも知らない。悪口を言うのは簡単だけど……。

「ふぅん? まぁ、神子は特別ではあるだろうね。代わりは居ないんだし。 でも、 って僕は思うけどね」

「え?」

 思わず聞き返すと、シュナは真剣な目で俺を見下ろしていた。

「僕が今日トオルに会ったのは偶然だけどさ、トオルが思っている以上に結構危ない状況だと思うよぉ? 仲が悪くて喧嘩してるって感じなら別に大丈夫かなって思ったけど、トオルのその怯え方はちょっとおかしいもん。神子ではないと確定している今、最悪の場合を考えて、そんな気を使ってる場合かなって、僕から見たら感じるけど」

「……それは」

「トオルはさ、神子が子供だからって肝心な所で神子を甘く見てるんだと思うけど、たとえ神子が本当に幼いだけだったとしても、周りはそうじゃない事、本当は分かってるはずだよ。老獪な奴らだからね、人間の貴族って言うのはさ」

 言い返せなかった。

 確かに、俺は身の危険を感じると思いながらも、心のどこかでは大丈夫なんじゃないかという気持ちがあったからだ。けれど、たとえ神子がそこまでのことを俺にしなかったとしても、周囲が神子に取り入る為に誘導したり、勝手に行動する事は十分ありえる話だ。

「言い方はアレだけど選り好みしている時間はないんじゃないかな? それに最初から目をつけられたくなかったんなら、ラインハルト卿をもっと拒んでおくべきだったと思うよ。関係持ってるでしょ? まぁ、何を言ってももう遅いけどさぁ」

「はぁ!? なんで知ってるの!?」

 思わず大きい声が出ていた。

 ラインハルトが俺を構っていたのは、皆知っているだろうが、さすがにラインハルトとヤリましたなんて俺は言っていないし、ラインハルトも言っていない、と思う。あいつはそれくらいの常識や気遣いは出来る奴だから。

 だが、そうなると考えられる噂の発生源は……。

 俺の言葉に、シュナさんはやっと身体を離してくれる。

「噂になってるよぉ? 神子がめちゃくちゃ怒っていたってね。最初は皆、まさか~みたいな態度だったみたいだけど、ラインハルト卿ってさ、遊んでた割に結構そういうの態度に出る人だからさ、トオルと一緒に居る時の態度が甘すぎて皆は確信したみたいだねぇ」

――シュナのその言葉に、俺が死にたくなったのは言うまでもない。
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