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◆第1章 おまけの神子とラインハルト
閑話②-2~ラインハルト視点~
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更に能力以外にも、守護者にもう一つ求められるものがある。それは、狡猾さや慎重さだ。
攻守ともに優れているだけならば、私以外にも他にも適任者は居るのだが、私は自分で言うのもなんだが、かなり疑り深く、執拗に事前に調査を行う性格だ。
育った家庭環境から、周りに対してまず疑う事を覚えていた私にとっては、たとえ友人であったとしても「まず疑え、自身を陥れようとしているのではないか見極めろ」という考えがある。
たとえその友人が私に対して何も悪意は無くても、その周りはそうではないのではないか?
知らない内に、私を陥れようとしているのではないか?
そう思うと、私はどうしても人を信じる事が出来ず、結果的に慎重にならざるを得ないという訳だ。
用心深いと言えば聞こえはいいが、実際は心が荒みきっていて、猜疑心の塊なのだ、私という男は。
勿論アンヘルも、私と系統は違うが、疑り深く慎重な男だ。
徹は私のそんな狡猾さに嫌な顔一つしなかった。
私が忠告するとすんなりと受け入れてくれるし、時にキツイ言い回しになってしまうこともあり謝ったが、気にしないでと笑ってくれた。
「ラインハルトは俺の事を考えて言ってくれてるんだろ? それに、命がかかってる状況なんだから、当然だしな」
こういう時、やはり徹は年上なのだと実感する。
当初は自身の気持ちに気づいていなかった私だったが、その時感じた喜びに、やっと徹への感情が恋愛感情なのだと気づいた。
はにかんだ徹の表情は本当にかわいくて、ここがダンジョンで無ければ雰囲気に任せて早々に口説き始めていただろう。
その後、試練のダンジョンは順調に攻略できていたが、九日目に問題が発生した。
想定よりも、遭遇した水棲のモンスターが強敵だったのだ。
強敵と言っても倒せない程という訳ではなく、私が事前に知りえていた情報よりは大きく強いという意味だったが、試練も終盤に差し掛かって徹の体力が限界だった事もあり、徹は水棲モンスターの触手に捕まってしまった。
勿論、すぐに助け出す事には成功したのだが、水棲モンスターを殺める際、私がその血を浴びてしまったのが大問題だった。
水棲モンスターの体液には性的興奮を促す強力な作用があるのだ。
程なくして火照りだす己の身体に、慌てて状態異常の回復魔法をすぐにかけたが、その効果はかなり薄かった。
私は魔法剣士なので、魔法も得意ではあるのだが、それはあくまで攻撃主体の魔法が得意なだけにすぎ居ない。
回復魔法ならば戦いにおいて必須の為、比較的高位のものも利用は出来るが、状態異常回復という類の魔法に関しては不得意なのだ。
「私に触るな!」
「どうしたんだよ!?」
休める場所になだれ込んだ後、支えようとしてくれる徹の手を、私は思わず振り払っていた。
徹には悪いが、下手に今徹に触れられてしまえば抑えが聞かないのは明白だった。
(無理強いはしたくない……!)
傷つけたくない。
だが、一度口付けてしまえば、もう私の理性は崩れるほか無かった。
徹を押し倒し、服を剥ぎ、その肢体に舌をはわせる。
徹は、抵抗しなかった。
自己嫌悪と、愛する相手に触れる事の出来た喜び。
双方を感じ苦しむ私に、徹は手を差し伸べてくれた。
自身の事よりも、私の身体を心配してくれる徹に惚れ直したのは言うまでもない。
徹を愛した後、腕の中でぐったりとする徹を抱きしめながら、私は今後の事を心に決めた。
徹が私を受け入れてくれたのは、間違いなく仕方がないという気持ちからだろう。
自身を助けるためにやってくれたのだから、と我慢したのだというのは容易く想像できた。
(抱いている最中、嫌悪感や敵意こそ感じられなかったのは救いだったな)
徹としては忘れたい事なのだろうし、きっとこのまま何も触れず終えたいのだとは思うが、私にはこのまま諦めるという選択肢はない。
徹が意識を失っている間に、件の少年が神子であると証明され、徹の立場は非常に微妙なものになってしまった。
陛下は、おまけと言えども最後まで面倒は見ようとはしてくれるだろうが、王都に居る貴族連中や城内の人間が皆、徹へ優しく接するかと言われると、おそらくは難しいに違いない。
まだ徹が神子の可能性があった状態でも、一部の人間は徹への風当たりが強かったのだ。神子でないと判明した今、徹を傷つけようとする者が現れないとも限らない。
私が徹の後ろ盾になれば、少なくとも権力におもねるだけの小物の貴族たちは退ける事が出来る。
厄介な連中は、どちらにせよ手を出してくるのだから、たったそれだけでも効果は大きい筈だ。
帰りたいと望む徹を引き留める権利など、私には無い事は分かっていたが、せめてこの世界に徹が居る間だけでも、共にありたいと思う。
「この私が、まさか自分の事よりも優先させたい相手が出来るとはな……」
城に帰ったら、今後の為に徹の周りの人間の配置を変えるつもりだ。
リチェルはともかく、他の幼い従者たちには荷が重い事も多々出てくるだろう。
ならば、私が信頼できる人間を徹につける。それだけだ。
徹が起きたら、何と言おう。
多少強引な方が、徹も恥ずかしくないだろうし、流されてくれるかもしれない。
徹の可愛い寝顔を見ながら、私はこれからに思いをはせた。
攻守ともに優れているだけならば、私以外にも他にも適任者は居るのだが、私は自分で言うのもなんだが、かなり疑り深く、執拗に事前に調査を行う性格だ。
育った家庭環境から、周りに対してまず疑う事を覚えていた私にとっては、たとえ友人であったとしても「まず疑え、自身を陥れようとしているのではないか見極めろ」という考えがある。
たとえその友人が私に対して何も悪意は無くても、その周りはそうではないのではないか?
知らない内に、私を陥れようとしているのではないか?
そう思うと、私はどうしても人を信じる事が出来ず、結果的に慎重にならざるを得ないという訳だ。
用心深いと言えば聞こえはいいが、実際は心が荒みきっていて、猜疑心の塊なのだ、私という男は。
勿論アンヘルも、私と系統は違うが、疑り深く慎重な男だ。
徹は私のそんな狡猾さに嫌な顔一つしなかった。
私が忠告するとすんなりと受け入れてくれるし、時にキツイ言い回しになってしまうこともあり謝ったが、気にしないでと笑ってくれた。
「ラインハルトは俺の事を考えて言ってくれてるんだろ? それに、命がかかってる状況なんだから、当然だしな」
こういう時、やはり徹は年上なのだと実感する。
当初は自身の気持ちに気づいていなかった私だったが、その時感じた喜びに、やっと徹への感情が恋愛感情なのだと気づいた。
はにかんだ徹の表情は本当にかわいくて、ここがダンジョンで無ければ雰囲気に任せて早々に口説き始めていただろう。
その後、試練のダンジョンは順調に攻略できていたが、九日目に問題が発生した。
想定よりも、遭遇した水棲のモンスターが強敵だったのだ。
強敵と言っても倒せない程という訳ではなく、私が事前に知りえていた情報よりは大きく強いという意味だったが、試練も終盤に差し掛かって徹の体力が限界だった事もあり、徹は水棲モンスターの触手に捕まってしまった。
勿論、すぐに助け出す事には成功したのだが、水棲モンスターを殺める際、私がその血を浴びてしまったのが大問題だった。
水棲モンスターの体液には性的興奮を促す強力な作用があるのだ。
程なくして火照りだす己の身体に、慌てて状態異常の回復魔法をすぐにかけたが、その効果はかなり薄かった。
私は魔法剣士なので、魔法も得意ではあるのだが、それはあくまで攻撃主体の魔法が得意なだけにすぎ居ない。
回復魔法ならば戦いにおいて必須の為、比較的高位のものも利用は出来るが、状態異常回復という類の魔法に関しては不得意なのだ。
「私に触るな!」
「どうしたんだよ!?」
休める場所になだれ込んだ後、支えようとしてくれる徹の手を、私は思わず振り払っていた。
徹には悪いが、下手に今徹に触れられてしまえば抑えが聞かないのは明白だった。
(無理強いはしたくない……!)
傷つけたくない。
だが、一度口付けてしまえば、もう私の理性は崩れるほか無かった。
徹を押し倒し、服を剥ぎ、その肢体に舌をはわせる。
徹は、抵抗しなかった。
自己嫌悪と、愛する相手に触れる事の出来た喜び。
双方を感じ苦しむ私に、徹は手を差し伸べてくれた。
自身の事よりも、私の身体を心配してくれる徹に惚れ直したのは言うまでもない。
徹を愛した後、腕の中でぐったりとする徹を抱きしめながら、私は今後の事を心に決めた。
徹が私を受け入れてくれたのは、間違いなく仕方がないという気持ちからだろう。
自身を助けるためにやってくれたのだから、と我慢したのだというのは容易く想像できた。
(抱いている最中、嫌悪感や敵意こそ感じられなかったのは救いだったな)
徹としては忘れたい事なのだろうし、きっとこのまま何も触れず終えたいのだとは思うが、私にはこのまま諦めるという選択肢はない。
徹が意識を失っている間に、件の少年が神子であると証明され、徹の立場は非常に微妙なものになってしまった。
陛下は、おまけと言えども最後まで面倒は見ようとはしてくれるだろうが、王都に居る貴族連中や城内の人間が皆、徹へ優しく接するかと言われると、おそらくは難しいに違いない。
まだ徹が神子の可能性があった状態でも、一部の人間は徹への風当たりが強かったのだ。神子でないと判明した今、徹を傷つけようとする者が現れないとも限らない。
私が徹の後ろ盾になれば、少なくとも権力におもねるだけの小物の貴族たちは退ける事が出来る。
厄介な連中は、どちらにせよ手を出してくるのだから、たったそれだけでも効果は大きい筈だ。
帰りたいと望む徹を引き留める権利など、私には無い事は分かっていたが、せめてこの世界に徹が居る間だけでも、共にありたいと思う。
「この私が、まさか自分の事よりも優先させたい相手が出来るとはな……」
城に帰ったら、今後の為に徹の周りの人間の配置を変えるつもりだ。
リチェルはともかく、他の幼い従者たちには荷が重い事も多々出てくるだろう。
ならば、私が信頼できる人間を徹につける。それだけだ。
徹が起きたら、何と言おう。
多少強引な方が、徹も恥ずかしくないだろうし、流されてくれるかもしれない。
徹の可愛い寝顔を見ながら、私はこれからに思いをはせた。
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