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第二章 婚約者編

第十二話 ロイヤルファミリーと僕②

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 はっきりとそう宣言されて、僕は驚きながらも喜びで胸がいっぱいになった。生まれてはじめて……僕だけが欲しいと言われた。その事実に、僕はフリードリヒ様の腕の中で泣きそうになった。

「その者を本心から愛している、というわけか?」

「はい」

 どこか探る様な国王陛下に対して、フリードリヒ様は毅然とした態度で向き合った。

「……そなたの好みからは少し外れるとは思う相手だが?」

「……ルーイのことを言っているのであれば、俺は別段あの容姿が好みだった言う訳ではありません」

「ほぅ?」

 初めて知ったと言わんばかりの国王陛下の呟きに、フリードリヒ様は続ける。

「思えば、俺は……ルーイに半ば義務感のようなものを抱いていたにすぎませんでした。辛いときに、支えてくれようとした健気な人間。周りが厳しく俺に接する中、私欲があったとはいえ俺に優しい言葉を、励ます言葉をかけてくれた。当時の俺はそれらを純粋に喜び、いつしか彼に精神的に依存するようになり、ルーイに対して愛の言葉を囁くようになった」

「本当の愛情では無かったということか?」

 フリードリヒ様は、しっかりと頷いた。

 実際、フリードリヒ様は前に最初はルーイとの関係は乗り気ではなかったと言っていたし、外見的な好みは二の次何だろう。美形が嫌いなわけではないだろうけど、王族で地位も権力もあるフリードリヒ様なら、周りから冷遇されていたとしてもモテてていただろうし、他の皆さんの反応を見る限り、稀代の美青年とかそこまでではないんだろうというのは何となくわかる。

「トーマに出会ってから、俺はやっとルーイのことを愛してはいなかったのだと自覚しました」

 僕を抱きしめる腕に力がこもった。

「正直……共に暮らせば、フリードリヒから手放すと思っていたのだがな……」

 国王陛下は、深いため息を吐いた。少し気落ちした声なのは、気のせいではないだろう。

 その様子を見る限り、率先して僕たちの仲を引き裂くつもりはなかったとはいえ、応援もされてはいなかったわけだというのが分かる。

(でも、確かに、フリードリヒ様の気が変わるって可能性はゼロではなかっただろうしね)

 今まで見せていなかった部分を互いに見せあう関係になる。それは、実際にはかなり勇気のいることだ。別々に暮らしていたら分からないことが、一緒に暮らすことで見えてくる。恋人と夫婦は似て非なるものだというのは何となく分かっていたけど、長時間ずっと一緒に居るとやっぱりどんなに好きでも嫌な所も出てくるのだ。

 嫌と言っても、我儘とかそういうレベルだから本気で怒ったりすることはないけどね。

 フリードリヒ様は、僕がむしろ怒ったり我儘を言うと嬉しそうで、僕に文句を言うことも無いんだけど、僕は結構はっきりと嫌なことは嫌だと伝えていた。勿論、フリードリヒ様にもそうして欲しいとお願いしていて、了承してもらっている。

(今までで一度も怒られたことはないけど……)

 ここは性格の違いなのかも。僕、変な所で現実的だから……。フリードリヒ様には余裕があるんだよね。色々と。本当に年下なのかな? って最近ちょっと思う。恋愛の駆け引きに慣れているから、年齢だけで判断するのはアレだろうけど、これが俗にいうスパダリなのかな……?

 スパダリの定義、よく分かってはいないけれど……正直、こんなに大事にされたことはないと思う。フリードリヒ様だけでなく、屋敷の人たちも本当に良くしてくれていて、僕は今の生活が本当に好きだ。

「それはありえない話ですね」

 フリードリヒ様は、国王陛下の言葉に胸を張り堂々と言った。
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