39 / 43
第二章 婚約者編
第十二話 ロイヤルファミリーと僕②
しおりを挟む
はっきりとそう宣言されて、僕は驚きながらも喜びで胸がいっぱいになった。生まれてはじめて……僕だけが欲しいと言われた。その事実に、僕はフリードリヒ様の腕の中で泣きそうになった。
「その者を本心から愛している、というわけか?」
「はい」
どこか探る様な国王陛下に対して、フリードリヒ様は毅然とした態度で向き合った。
「……そなたの好みからは少し外れるとは思う相手だが?」
「……ルーイのことを言っているのであれば、俺は別段あの容姿が好みだった言う訳ではありません」
「ほぅ?」
初めて知ったと言わんばかりの国王陛下の呟きに、フリードリヒ様は続ける。
「思えば、俺は……ルーイに半ば義務感のようなものを抱いていたにすぎませんでした。辛いときに、支えてくれようとした健気な人間。周りが厳しく俺に接する中、私欲があったとはいえ俺に優しい言葉を、励ます言葉をかけてくれた。当時の俺はそれらを純粋に喜び、いつしか彼に精神的に依存するようになり、ルーイに対して愛の言葉を囁くようになった」
「本当の愛情では無かったということか?」
フリードリヒ様は、しっかりと頷いた。
実際、フリードリヒ様は前に最初はルーイとの関係は乗り気ではなかったと言っていたし、外見的な好みは二の次何だろう。美形が嫌いなわけではないだろうけど、王族で地位も権力もあるフリードリヒ様なら、周りから冷遇されていたとしてもモテてていただろうし、他の皆さんの反応を見る限り、稀代の美青年とかそこまでではないんだろうというのは何となくわかる。
「トーマに出会ってから、俺はやっとルーイのことを愛してはいなかったのだと自覚しました」
僕を抱きしめる腕に力がこもった。
「正直……共に暮らせば、フリードリヒから手放すと思っていたのだがな……」
国王陛下は、深いため息を吐いた。少し気落ちした声なのは、気のせいではないだろう。
その様子を見る限り、率先して僕たちの仲を引き裂くつもりはなかったとはいえ、応援もされてはいなかったわけだというのが分かる。
(でも、確かに、フリードリヒ様の気が変わるって可能性はゼロではなかっただろうしね)
今まで見せていなかった部分を互いに見せあう関係になる。それは、実際にはかなり勇気のいることだ。別々に暮らしていたら分からないことが、一緒に暮らすことで見えてくる。恋人と夫婦は似て非なるものだというのは何となく分かっていたけど、長時間ずっと一緒に居るとやっぱりどんなに好きでも嫌な所も出てくるのだ。
嫌と言っても、我儘とかそういうレベルだから本気で怒ったりすることはないけどね。
フリードリヒ様は、僕がむしろ怒ったり我儘を言うと嬉しそうで、僕に文句を言うことも無いんだけど、僕は結構はっきりと嫌なことは嫌だと伝えていた。勿論、フリードリヒ様にもそうして欲しいとお願いしていて、了承してもらっている。
(今までで一度も怒られたことはないけど……)
ここは性格の違いなのかも。僕、変な所で現実的だから……。フリードリヒ様には余裕があるんだよね。色々と。本当に年下なのかな? って最近ちょっと思う。恋愛の駆け引きに慣れているから、年齢だけで判断するのはアレだろうけど、これが俗にいうスパダリなのかな……?
スパダリの定義、よく分かってはいないけれど……正直、こんなに大事にされたことはないと思う。フリードリヒ様だけでなく、屋敷の人たちも本当に良くしてくれていて、僕は今の生活が本当に好きだ。
「それはありえない話ですね」
フリードリヒ様は、国王陛下の言葉に胸を張り堂々と言った。
「その者を本心から愛している、というわけか?」
「はい」
どこか探る様な国王陛下に対して、フリードリヒ様は毅然とした態度で向き合った。
「……そなたの好みからは少し外れるとは思う相手だが?」
「……ルーイのことを言っているのであれば、俺は別段あの容姿が好みだった言う訳ではありません」
「ほぅ?」
初めて知ったと言わんばかりの国王陛下の呟きに、フリードリヒ様は続ける。
「思えば、俺は……ルーイに半ば義務感のようなものを抱いていたにすぎませんでした。辛いときに、支えてくれようとした健気な人間。周りが厳しく俺に接する中、私欲があったとはいえ俺に優しい言葉を、励ます言葉をかけてくれた。当時の俺はそれらを純粋に喜び、いつしか彼に精神的に依存するようになり、ルーイに対して愛の言葉を囁くようになった」
「本当の愛情では無かったということか?」
フリードリヒ様は、しっかりと頷いた。
実際、フリードリヒ様は前に最初はルーイとの関係は乗り気ではなかったと言っていたし、外見的な好みは二の次何だろう。美形が嫌いなわけではないだろうけど、王族で地位も権力もあるフリードリヒ様なら、周りから冷遇されていたとしてもモテてていただろうし、他の皆さんの反応を見る限り、稀代の美青年とかそこまでではないんだろうというのは何となくわかる。
「トーマに出会ってから、俺はやっとルーイのことを愛してはいなかったのだと自覚しました」
僕を抱きしめる腕に力がこもった。
「正直……共に暮らせば、フリードリヒから手放すと思っていたのだがな……」
国王陛下は、深いため息を吐いた。少し気落ちした声なのは、気のせいではないだろう。
その様子を見る限り、率先して僕たちの仲を引き裂くつもりはなかったとはいえ、応援もされてはいなかったわけだというのが分かる。
(でも、確かに、フリードリヒ様の気が変わるって可能性はゼロではなかっただろうしね)
今まで見せていなかった部分を互いに見せあう関係になる。それは、実際にはかなり勇気のいることだ。別々に暮らしていたら分からないことが、一緒に暮らすことで見えてくる。恋人と夫婦は似て非なるものだというのは何となく分かっていたけど、長時間ずっと一緒に居るとやっぱりどんなに好きでも嫌な所も出てくるのだ。
嫌と言っても、我儘とかそういうレベルだから本気で怒ったりすることはないけどね。
フリードリヒ様は、僕がむしろ怒ったり我儘を言うと嬉しそうで、僕に文句を言うことも無いんだけど、僕は結構はっきりと嫌なことは嫌だと伝えていた。勿論、フリードリヒ様にもそうして欲しいとお願いしていて、了承してもらっている。
(今までで一度も怒られたことはないけど……)
ここは性格の違いなのかも。僕、変な所で現実的だから……。フリードリヒ様には余裕があるんだよね。色々と。本当に年下なのかな? って最近ちょっと思う。恋愛の駆け引きに慣れているから、年齢だけで判断するのはアレだろうけど、これが俗にいうスパダリなのかな……?
スパダリの定義、よく分かってはいないけれど……正直、こんなに大事にされたことはないと思う。フリードリヒ様だけでなく、屋敷の人たちも本当に良くしてくれていて、僕は今の生活が本当に好きだ。
「それはありえない話ですね」
フリードリヒ様は、国王陛下の言葉に胸を張り堂々と言った。
21
お気に入りに追加
2,404
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872


モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる