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第一章 出会い編
第三話 悪いひとではない①
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「……っちゅ」
射精して力を無くしたペニスを舌で綺麗にした後、僕は気づかれないようにほっと息を吐いた。
(良かった……)
僕は、フリードリヒ様の好みのタイプには到底なれはしないけれど、少なくともセックスに近い行為をする相手としてはギリギリだったとしても何とか範疇に入っているのだと、こうして僕の手で射精してくれる度に実感できていた。
僕との行為が、少しでもフリードリヒ様にとって価値があると思って貰えているなら嬉しいと思う。たとえ、それが暇つぶしや憂さ晴らしの一種だったとしてもだ。一緒に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、僕はフリードリヒ様にどんどん惹かれていた。
あんなに好きだったナオヤ先輩よりも――。
出会った当初、僕はフリードリヒ様について何も知らなかった。かなり地位の高い方であるというのを示唆された以外は、一切何も教えられていなかったし、知ったところで、この世界の事情に疎い僕にはあまり意味がなかったのもあって、イシュトさんに尋ねることはなかった。
ただ、商人とかの成金では無くて、育ちが良いんだろうなというのはフリードリヒ様を見ればすぐに分かった。
服装や身に着けている装飾品、仕草はどう考えても平民ではないし、裕福なだけの家出身なら、もう少し言動に粗が出るからだ。洗練された仕草は、確実に貴族かそれ以上であるということを教えてくれていた。
ただ、僕があえて深く知ろうとしなくても情報というものは伝わってくることはある。
娼館の子たちが、善意からという前置きで僕に色々と教えてくれたのだ。
まぁ、残念ながら当然好意的な意味で教えてくれたのではないんだけれど……。
「本当は、お客様のことを教えたりするのは規律違反なんだけど……何も知らないままだといくらなんでも可哀想だからさぁ。まぁ、今の感じを見る限りあんたも勘違いはしないだろうけどぉ?」
「イシュトさんも、さすがに無謀よねぇ、こんなのをあの方につけるなんてさぁ」
「あの方は、お前と釣り合う相手じゃないんだよ? あの方は、このクリフォトの王太子様なんだから」
例のシェルくんと彼に続く人気のある男娼の子たちは僕を呼び出すとそう言って、フリードリヒ様の素性を僕に喋りだした。
さすがに、王太子様だったことには驚いたけれど……納得もしている。煩わしいことが嫌いに見えるイシュトさんが、こんなまわりくどい依頼を受ける筈だ。
彼は僕が驚いたことが分かると、更に喋り出した。どうやら、相当僕に対して言いたいことがあったらしい。
元々平凡な僕みたいな奴がフリードリヒ様という上客を捕まえていることに対して不満を持っていた彼らは、フリードリヒ様にどういう事情があって僕をイシュトさんがつけているのか知らされていなかったのだが、ずっとやんごとなき理由があるのだろうとそれまでは何とか我慢をしていたのだろう。不満そうな顔をしていても、あえて僕にそのこと自体で何かしてくるようなことはなかった。
だが、色々と事情があって僕を指名している筈のフリードリヒ様の僕への態度が、思った以上に冷たすぎたこともあって、彼らの中ではフリードリヒ様が望んでいないのなら僕に対して色々やっても問題なしと踏んだんだろう。気づけば嫌味を言われたり、物を隠されたりするようになった。
ちなみに、美少年な外見をしてはいるし美少年という文句で売ってはいるが、シェルを含めてこの娼館にいる子たちは実際にはこの国の成人年齢である二十歳を超えている。二十歳を過ぎた大人の嫌がらせにしては、可愛い方なのかもしれない。
それに、今では意外とこの嫌がらせで得られる情報を僕は楽しみにしていた。
知っても意味ががないんじゃないか? というのは相変わらず変わらないが、好きな人のことを変に相手に気取られずに知ることができるのは、結構役得かもしれないと思うようになった。
フリードリヒ様にあまり好かれていない僕が変に嗅ぎ回れば、フリードリヒ様から何か言われる可能性はあるが、勝手に彼らが教えてくれる分には不可抗力だ。
最近、イシュトさんもシェルくんたちが規律を破って僕にフリードリヒ様のことについて話したことに気づいたみたいだけど、今の所僕は何も言われていない。僕だけでなく、顧客の情報を身内とはいえ流したシェルくんたちにも特に罰は与えられていないし、イシュトさんはこの件に関しては不問にするようだ。
さすがに、とんでもない内容を吹聴しだすようなら問題だが、公然の秘密だから、一応は問題ないと考えたんだろう。
あまりに、シェルたちがこれ以上悪質なことをしてくるようならすぐに言う様にとイシュトさんには言われているので、規律を破ったこと自体には怒ってはいるみたいだけど、シェルくんたちが売れっ子なのもあるし、僕がその情報を悪用しないから、とりあえずはこのまま何もしないようだ。
今の所、この程度の嫌がらせなら全然耐えられる。
元の世界を含めた今までの辛い経験が活きるなんて、人生って分からないなと思う。本当に。
射精して力を無くしたペニスを舌で綺麗にした後、僕は気づかれないようにほっと息を吐いた。
(良かった……)
僕は、フリードリヒ様の好みのタイプには到底なれはしないけれど、少なくともセックスに近い行為をする相手としてはギリギリだったとしても何とか範疇に入っているのだと、こうして僕の手で射精してくれる度に実感できていた。
僕との行為が、少しでもフリードリヒ様にとって価値があると思って貰えているなら嬉しいと思う。たとえ、それが暇つぶしや憂さ晴らしの一種だったとしてもだ。一緒に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、僕はフリードリヒ様にどんどん惹かれていた。
あんなに好きだったナオヤ先輩よりも――。
出会った当初、僕はフリードリヒ様について何も知らなかった。かなり地位の高い方であるというのを示唆された以外は、一切何も教えられていなかったし、知ったところで、この世界の事情に疎い僕にはあまり意味がなかったのもあって、イシュトさんに尋ねることはなかった。
ただ、商人とかの成金では無くて、育ちが良いんだろうなというのはフリードリヒ様を見ればすぐに分かった。
服装や身に着けている装飾品、仕草はどう考えても平民ではないし、裕福なだけの家出身なら、もう少し言動に粗が出るからだ。洗練された仕草は、確実に貴族かそれ以上であるということを教えてくれていた。
ただ、僕があえて深く知ろうとしなくても情報というものは伝わってくることはある。
娼館の子たちが、善意からという前置きで僕に色々と教えてくれたのだ。
まぁ、残念ながら当然好意的な意味で教えてくれたのではないんだけれど……。
「本当は、お客様のことを教えたりするのは規律違反なんだけど……何も知らないままだといくらなんでも可哀想だからさぁ。まぁ、今の感じを見る限りあんたも勘違いはしないだろうけどぉ?」
「イシュトさんも、さすがに無謀よねぇ、こんなのをあの方につけるなんてさぁ」
「あの方は、お前と釣り合う相手じゃないんだよ? あの方は、このクリフォトの王太子様なんだから」
例のシェルくんと彼に続く人気のある男娼の子たちは僕を呼び出すとそう言って、フリードリヒ様の素性を僕に喋りだした。
さすがに、王太子様だったことには驚いたけれど……納得もしている。煩わしいことが嫌いに見えるイシュトさんが、こんなまわりくどい依頼を受ける筈だ。
彼は僕が驚いたことが分かると、更に喋り出した。どうやら、相当僕に対して言いたいことがあったらしい。
元々平凡な僕みたいな奴がフリードリヒ様という上客を捕まえていることに対して不満を持っていた彼らは、フリードリヒ様にどういう事情があって僕をイシュトさんがつけているのか知らされていなかったのだが、ずっとやんごとなき理由があるのだろうとそれまでは何とか我慢をしていたのだろう。不満そうな顔をしていても、あえて僕にそのこと自体で何かしてくるようなことはなかった。
だが、色々と事情があって僕を指名している筈のフリードリヒ様の僕への態度が、思った以上に冷たすぎたこともあって、彼らの中ではフリードリヒ様が望んでいないのなら僕に対して色々やっても問題なしと踏んだんだろう。気づけば嫌味を言われたり、物を隠されたりするようになった。
ちなみに、美少年な外見をしてはいるし美少年という文句で売ってはいるが、シェルを含めてこの娼館にいる子たちは実際にはこの国の成人年齢である二十歳を超えている。二十歳を過ぎた大人の嫌がらせにしては、可愛い方なのかもしれない。
それに、今では意外とこの嫌がらせで得られる情報を僕は楽しみにしていた。
知っても意味ががないんじゃないか? というのは相変わらず変わらないが、好きな人のことを変に相手に気取られずに知ることができるのは、結構役得かもしれないと思うようになった。
フリードリヒ様にあまり好かれていない僕が変に嗅ぎ回れば、フリードリヒ様から何か言われる可能性はあるが、勝手に彼らが教えてくれる分には不可抗力だ。
最近、イシュトさんもシェルくんたちが規律を破って僕にフリードリヒ様のことについて話したことに気づいたみたいだけど、今の所僕は何も言われていない。僕だけでなく、顧客の情報を身内とはいえ流したシェルくんたちにも特に罰は与えられていないし、イシュトさんはこの件に関しては不問にするようだ。
さすがに、とんでもない内容を吹聴しだすようなら問題だが、公然の秘密だから、一応は問題ないと考えたんだろう。
あまりに、シェルたちがこれ以上悪質なことをしてくるようならすぐに言う様にとイシュトさんには言われているので、規律を破ったこと自体には怒ってはいるみたいだけど、シェルくんたちが売れっ子なのもあるし、僕がその情報を悪用しないから、とりあえずはこのまま何もしないようだ。
今の所、この程度の嫌がらせなら全然耐えられる。
元の世界を含めた今までの辛い経験が活きるなんて、人生って分からないなと思う。本当に。
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