55 / 73
第1章
53.思いを伝えて
しおりを挟む
「はいよ、ヴィンス」
そう言ってふわっと現れたウィネス。
そういえばウィネスは妖精さんだったっけ。
入られちゃったなぁ。
こんなにぐしゃぐしゃになった顔、誰にも見られたくない。
そう思い、僕は膝に顔を埋めた。
「ランス?」
無視だもん。今声を出したら泣いてしまう。
僕も1つ歳をとったんだ。
兄様達に迷惑かけられない。
「ランス。いっぱい泣いてもいいし、思ってることぶつけてもいいよ。」
嫌だよ、誰にも話したくない。
僕が兄様達から母様を取ったのに、兄様達に愛されたいって仲良くしたいって思ってる自分が醜くて大嫌いだ。
――もちろん、ウィネスにだって。
「えぇ、僕にも話してくれない?
ランスは醜くないよ?愛されたっていいんだよ、何なら、ヴィンス達の今までのランスへの大好き伝わってない?」
――心読んでる。。。
「いっ、ぱい...いっぱいつたわった」
「うんうん、それだけでヴィンス達は嬉しいと思うよ。でも僕もだけど、1人で抱え込んでいるのは嫌だなぁ?ヴィンス達に言えないことなら僕が聞いてあげるよ?おいで?」
そう言ってパッと僕の前でウィネスは手を広げた。
僕はとぼとぼとウィネスの胸へ抱きついた。
そして、ぎゅっと優しく抱擁されると安心してしまい、わぁっと泣き出してしまった。
後ろでぎーっと音がしたから少しドアを開いて、兄様達が確認に覗きに来たんだろうけど僕はそれをお構い無しにずっと泣いていた。
そのまま閉まったから、ウィネスが落ち着くまで外で待つように言っててくれたんだと思う。
――大丈夫ですか?なんてリコスが廊下で話す声が聞こえたが、兄様達が話して戻っていったみたい。
ウィネスが僕を抱き、小さな子供をあやす様にぽんぽんと背中を叩く。
そのまま、ベッドに向かいそっと座った。
「ランス、落ち着いた?」
「...っ、うん。ごめんね」
「大丈夫だよ、可愛いお顔が台無しだなぁ。」
「うぅ...これで平気だもん。」
僕は目元をごしごし擦った。
「うん、いつも通り可愛いよ。
さぁ、本題。なんでランスは自分が醜いとかヴィンス達を苦しめてるって思ったの?」
「...っぼくが、母様をうばった、からです。」
「そう思うことはお母様の本意かな?
自分の好きな息子にそんな思い背負わせたら悔やんでも悔やみきれないと思うよ。」
「...」
「聞いたよ?お母様に1番似ているんだってね」
何も答えない僕に語りかけるように話すウィネス。
「嬉しそうに話してたよ、ヴィンス達も。
恨んでるようには見えないよ。
口を開いてはランス、ランスってさ。
お母様の話もしてくれたよ?
ランスを見ているお母様は、とても幸せそうだったって。」
そういえば、僕が『四十九日』とかいう日に神還りをした時。
『――賢いランスは、自分のせいで私が死んだのだと責めるだろうと考えました。』
『――私はそうは思っていません。後悔もしていません。』
・・・なんだ。僕が勘違いしてただけじゃないか。
僕のせいでなんて思って、償おうと空回りして逆に兄様達を困らせて悲しませてしまった。
空回りして母様からの言葉も忘れて。
馬鹿じゃん、僕。賢くなんてない。
「よし、ヴィンス達に会いに行こうか。」
心の読めているであろうウィネスは、僕の心が落ち着いたのを読み、兄様達の元へ向かった。
――その時
『泣いてもいいの。泣いてもまた胸を張って前に進んで行けばいいのよ。あなたならできるわランス。』
いつか母様にかけてもらった言葉をふと思い出した。
それは僕の背中を押すように母様がそう言ってくれているような気がした。
そう言ってふわっと現れたウィネス。
そういえばウィネスは妖精さんだったっけ。
入られちゃったなぁ。
こんなにぐしゃぐしゃになった顔、誰にも見られたくない。
そう思い、僕は膝に顔を埋めた。
「ランス?」
無視だもん。今声を出したら泣いてしまう。
僕も1つ歳をとったんだ。
兄様達に迷惑かけられない。
「ランス。いっぱい泣いてもいいし、思ってることぶつけてもいいよ。」
嫌だよ、誰にも話したくない。
僕が兄様達から母様を取ったのに、兄様達に愛されたいって仲良くしたいって思ってる自分が醜くて大嫌いだ。
――もちろん、ウィネスにだって。
「えぇ、僕にも話してくれない?
ランスは醜くないよ?愛されたっていいんだよ、何なら、ヴィンス達の今までのランスへの大好き伝わってない?」
――心読んでる。。。
「いっ、ぱい...いっぱいつたわった」
「うんうん、それだけでヴィンス達は嬉しいと思うよ。でも僕もだけど、1人で抱え込んでいるのは嫌だなぁ?ヴィンス達に言えないことなら僕が聞いてあげるよ?おいで?」
そう言ってパッと僕の前でウィネスは手を広げた。
僕はとぼとぼとウィネスの胸へ抱きついた。
そして、ぎゅっと優しく抱擁されると安心してしまい、わぁっと泣き出してしまった。
後ろでぎーっと音がしたから少しドアを開いて、兄様達が確認に覗きに来たんだろうけど僕はそれをお構い無しにずっと泣いていた。
そのまま閉まったから、ウィネスが落ち着くまで外で待つように言っててくれたんだと思う。
――大丈夫ですか?なんてリコスが廊下で話す声が聞こえたが、兄様達が話して戻っていったみたい。
ウィネスが僕を抱き、小さな子供をあやす様にぽんぽんと背中を叩く。
そのまま、ベッドに向かいそっと座った。
「ランス、落ち着いた?」
「...っ、うん。ごめんね」
「大丈夫だよ、可愛いお顔が台無しだなぁ。」
「うぅ...これで平気だもん。」
僕は目元をごしごし擦った。
「うん、いつも通り可愛いよ。
さぁ、本題。なんでランスは自分が醜いとかヴィンス達を苦しめてるって思ったの?」
「...っぼくが、母様をうばった、からです。」
「そう思うことはお母様の本意かな?
自分の好きな息子にそんな思い背負わせたら悔やんでも悔やみきれないと思うよ。」
「...」
「聞いたよ?お母様に1番似ているんだってね」
何も答えない僕に語りかけるように話すウィネス。
「嬉しそうに話してたよ、ヴィンス達も。
恨んでるようには見えないよ。
口を開いてはランス、ランスってさ。
お母様の話もしてくれたよ?
ランスを見ているお母様は、とても幸せそうだったって。」
そういえば、僕が『四十九日』とかいう日に神還りをした時。
『――賢いランスは、自分のせいで私が死んだのだと責めるだろうと考えました。』
『――私はそうは思っていません。後悔もしていません。』
・・・なんだ。僕が勘違いしてただけじゃないか。
僕のせいでなんて思って、償おうと空回りして逆に兄様達を困らせて悲しませてしまった。
空回りして母様からの言葉も忘れて。
馬鹿じゃん、僕。賢くなんてない。
「よし、ヴィンス達に会いに行こうか。」
心の読めているであろうウィネスは、僕の心が落ち着いたのを読み、兄様達の元へ向かった。
――その時
『泣いてもいいの。泣いてもまた胸を張って前に進んで行けばいいのよ。あなたならできるわランス。』
いつか母様にかけてもらった言葉をふと思い出した。
それは僕の背中を押すように母様がそう言ってくれているような気がした。
54
お気に入りに追加
2,294
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!
悪の皇帝候補に転生したぼくは、ワルワルおにいちゃまとスイーツに囲まれたい!
野良猫のらん
BL
極道の跡継ぎだった男は、金髪碧眼の第二王子リュカに転生した。御年四歳の幼児だ。幼児に転生したならばすることなんて一つしかない、それは好きなだけスイーツを食べること! しかし、転生先はスイーツのない世界だった。そこでリュカは兄のシルヴェストルやイケオジなオベロン先生、商人のカミーユやクーデレ騎士のアランをたぶらかして……もとい可愛くお願いして、あの手この手でスイーツを作ってもらうことにした! スイーツ大好きショタの甘々な総愛されライフ!
悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~
野良猫のらん
BL
剣と魔法の世界で異端扱いされてきた科学者お兄ちゃん×この世界で唯一科学を理解できる異世界転生者弟!
皇子様からそこら辺の農夫までほとんど攻略可能のオープンワールドBLゲー『黄昏の刻を歩んで』に転生した僕。僕は何を隠そうそのゲームで行商人プレイを何より愛する行商依存症だった。第五皇子という身分にありながら行商人になることを目指す僕は誰からも煙たがられ疎まれている悪逆皇子に媚びを売ることにし――――悪逆マッドサイエンティスト皇子と行商依存症ショタの最強コンビが誕生することになった!
※第二部は5/1より更新開始です。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
BLゲーに転生!!やったーーー!しかし......
∞輪廻∞
BL
BLゲーの悪役に転生した!!!よっしゃーーーー!!!やったーーー!! けど、、なんで、、、
ヒロイン含めてなんで攻略対象達から俺、好かれてるんだ?!?
ヒロイン!!
通常ルートに戻れ!!!
ちゃんとヒロインもヒロイン(?)しろーー!!!
攻略対象も!
ヒロインに行っとけ!!!
俺は、観セ(ゴホッ!!ゴホッ!ゴホゴホッ!!
俺はエロのスチルを見てグフグフ言うのが好きなんだよぉーー!!!( ̄^ ̄゜)
誰かーーー!!へるぷみぃー!!!
この、悪役令息
無自覚・天然!!
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる