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第1章

25.お薬

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「起きて、ランス!」

もにゅもにゅと僕のほっぺたを摘みながら、ヴィンス兄様が僕を起こしてくれた。

「難しい説明は終わったから!
次はランスが簡単なお話を聞く番ね?
大丈夫?体調きつくない?」

「だぃじょぉぶ!!」

寝てちょっと楽になったし!!

「んふふ、ご飯いっぱい食べれましたね。
いい子です。ちょっとずつで良いので増やしていけるといいですね。」

リースさんが褒めてくれる。

「はぁい」

「それじゃあ、お薬の説明をしますね?
大体はこれぐらいの錠剤になるんですけど」

そう言って丸いものを見せてくる。
これ、ごっくんするの?
なんか苦しそう...

「そぇ、ごっくんするの??」

「うーん、本来は飲み込むんですけど、
難しそうだったら粉薬タイプにしましょうか?
ちょっと苦味が強いかなと思って錠剤にしてみたのですけど。」

「ふぇ...にがいのやぁ」

苦いのはお口がもぞもぞしちゃうからやなの!!

「ご飯の中に入れてみてもいいですよ?
そしたら少しは紛れるかもしれません。」

「ごぁん!!ごぁんいれてぇ?」

「ふふ、じゃあそうしましょうか!
でも今日はご飯食べてしまったので、今日だけ錠剤頑張ってみませんか?」

「ごっくん...?」

「はい、多分大丈夫ですよ。」


「そうそう、大丈夫だよ!
ランスが元気になったら、俺たちも嬉しいから頑張ろ?」

メル兄様がそう言うなら...

「がんばるぅ...」

「じゃあ今日だけ頑張ってください?
もし、のみやすければ変えることも出来ますのでその時は言ってください。」

「あ、あと。
体力が戻ってきたら治癒魔法の治療も入れますからね。ランス様は定期的に熱が出る感じなので、その頻度を抑える為にします。」

「はぁい」

そうだったんだ。初耳...
まさか寝てる間も熱出て下がって、、の繰り返しだったのかなぁ?

「いいお返事です。
じゃあ今日の分ここに置いておきますね。ご飯の事についてはこちらから話しておきます。
お兄様方、お薬の方お願いします。
では、私はこれで」

お辞儀をしてリースさんは出ていった。



「よし!じゃあ頑張って飲むかぁ!」

「ぅん...ごっくんこわぁぃ」

「大丈夫だよ?何なら僕が飲ませてあげようか?」

「ちょっ、兄様何言ってんのさ!」

「ごめんごめん!冗談だよ?」


兄様がどうやって僕に飲ませるの??


「はぁい冗談おしまぁい!」


フラン兄様が話を終わらせたので、結局聞けずじまいだった。



「はい、まず水ちょっと飲んで」

「んくっ...」

「お薬入れるから上向いて口開いて?」

「んぁ...」


ぽとっと口の中に錠剤が落とされる。


「はい、ごっくんして?」

「ごくっ...」

「はい、口あーんして?」

「んぁー」

「よし!飲めたね!お利口さん!!」


案外怖くなかった...?僕これ飲めるかも、、


「にぃさまぁ?ぼく、これのめるかもしれなぃ」

「本当に?どうする?こっちに変える?」


あ、でも兄様達が居てくれたからかもしれない。

「でも、にぃさまがいないとのめないかもしれなぃからわかんない...」

「そんなことなら大丈夫だよ!」

「俺らが大体1人はついてるから」


じゃあ大丈夫かも、、


「じゃあのめる」

「うん、じゃあリースさんに言っとくね」





飲んでちょっとしたら、さっき寝たはずなのにまた眠くなってきてしまった。


「ランス眠たい?」

いつの間に食べ終わったのか分からないけど、ヴィンス兄様が話しかけてくる。


「んぅ、、」

「あらら、もうおねむだね。
確かにあの錠剤には即効性の睡眠薬も混じってるとは言ってたけどここまでとは...」


そう言って兄様がベルをちりんちりんと鳴らした。
するとすぐリコスさんが入ってきた。


「お呼びでしょうか。」


「ランスが眠たそうだから、もうみんなで寝てしまおうと思って。この食器の片付けとソファベッドを持ってきてほしいんだ。おねがい。」

「かしこまりました。」


そういい、テキパキ仕事をしていくリコスさん。
いつの間に応援を呼んだのか、分からないが、ソファベッドを2人のメイドさんが持ってきてくれた。


「お風呂と歯磨きは今日はいっか...Clean」

「ランス?ランスはもう寝てていいよ?
フランの腕の中だけど、すぐベッド寝かせられるからね」

「んぅ、まだだぃじょぉぶ」

「ふふ、そっか。いつでも寝ていいからね」


いつの間にかソファベッドの組み立ても終わっていた。


「何か呼び出しがあったら、起こしてくれて構わないから。」

「承知しました。では失礼します。」

「ぁ...ぃがと」

リコスさんを見届けたのと同時にぷつんと糸が切れたかのように僕は眠りに落ちた。









✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽――


「あらら、相当我慢してたんだねぇ」

そう言いながら、フランはそっとベッドにランスを降ろした。

「どうする?ランスの左右」

「じゃあ僕今日色々譲ってもらったから、今回はお前らに譲るよ」

「ふぅ!流石兄様」


ヴィンスが譲った事によって
メル、ランス、フラン、ヴィンスの順番で並んで寝ることになった。

とは言ってもまだまだ寝るのには早い時間なのだ。
なので女子会ならぬ兄弟会を開いた。

「ねぇ、見てた?あのランスの薬ごっくんのとこ!」

「いや、それ!めちゃくちゃエロかった...兄様が羨ましかったわぁ」

「兄様が飲ませてあげようかとか言った時は、びっくりしたよねぇ」

「まあそれはほんの出来心でして...
てか、寝顔可愛いよね、、」

「分かる、、やっぱ天使だよな。俺らのお姫様」


「んぅ、、にぃに...」

「うわぁ懐かし。起きてる時に1回言ってみてほしいよねぇ」


ランスが寝返りをうち、何か探すように手を伸ばす。


「兄様がいない!とかって思ってそうだね...」

「寝よっかぁ」

「そうだな」


そう言ってみんな眠りに落ちたのであった。
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