兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました

不知火

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第1章

17.目覚め -ヴィンスside-

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   家に連れ帰った時からは、魘される数が減っていったランスは未だに目を覚まさない。
今日も僕は自分の仕事をすぐ終わらせ、ランスの部屋に向かった。
部屋をノックすると、はい、と侍女の声。

「入るぞ」

私が部屋に足を踏み入れると侍女は気を使って、部屋を退出してくれる。

ベッドには穏やかな表情で眠っているランス。
僕はベッドの横に置いてある椅子に座ると、ランスの手をそっと繋ぎベッドに突っ伏した。

ほんのり温かい手。
それがランスが生きていると実感させ、油断をすると涙が零れそうになる。
すると、事件の起こった日のことぱぁっと思い出された。

事件が起こった日は、兄の威厳もあるし、動揺していない感じを装ったが、その日の夜に
急いで帰ってきた父様から部屋に呼ばれると
張り詰めていた涙腺が一気に切れたように涙が出てきた。

自分よりも任せられる人が帰ってきた。

それが嬉しかった。自分は無力で
この後の判断を間違えていたかもしれないと思うと怖くて仕方がなかったのだ。
そこに頼れる人が帰ってきてくれたおかげで背負っていた物が一気になくなったかのように、軽くなったのである。

それを見た父様はただただ抱きしめてくれた。

抱きしめた後、

「落ち着いたか?」と聞かれ、こくっと頷く。

椅子に座ると本題に入った。

「今回の事件は裏で手を回している人物がいると私は思う。」

「僕もそう思います。近頃の盗賊と言えば金品だけを目的としていて、余計な面倒事に巻き込まれないようにあまり殺傷はしなかったはずです。」

「だよな…。だからその裏で手を回している人をみんなで探すのも仕事のうちに入れたいと思う。」

「分かりました。」

「話はそれだけだ。今日はゆっくり休みなさい。」

「失礼します。」

部屋を退出した僕は直ぐにランスの元へ向かった。

そこには、メルとフランもいた。

「どう?魘されるのは、なくなった?」

「うん、今はね。」
メルはそう答える。その間、ずーっとフランはランスに声をかけている。
目が覚めたらまた一緒に遊ぼうね~とか。

「今日は誰がここで寝る?」

事件が起こる前も誰かがたまにかわりばんこで一緒に寝ていたのだ。
今はランスは安静にしなきゃいけないから、ベッドには入れない。
だから、父様と侍女の配慮で長椅子を別の部屋から移動させてくれたのだ。

「じゃあ今日は俺とフランいいかな?
多分これだと、フランまだ話すことたくさんありそうだし」

「あぁ、無理はするなよ?あと、ちゃんと長椅子で寝ろよ。」

「うん、フランにもそう言っとく。
兄様こそね、ちゃんと寝てよ?」

「うん。おやすみ」

「おやすみ。」
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