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第1章

12.事件

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雲行きが怪しくなり、僕達は帰路を急いだ。
すると、急いでいたはずの馬車が1度止まる。
母様が何故か僕の耳を塞いで、執事さんとお話している。
何話してたか聞きたかった。
すると、馬車の外から馬が駆け足で駆けて行く音が聞こえていった。
護衛騎士さんの馬だろう。
なんで、先に行っちゃうのかな...?

まぁ、いいや・・・ぼく、今物凄く眠たい。
母様の膝を借りて一眠りと行きましょう...



-----------------------------


僕は馬の嘶きいななきと雨の音や言い争う声で目が覚めた。
目を覚まし顔を上げた瞬間、母様にぎゅっと強く抱きしめられた。
その手は震えている。

「かぁさま...?なんでふるえてるの...?」

母様は顔を強ばらせ、
「震えてなんかいないわ。大丈夫よ...」
と言ってまた強く僕を抱きしめた。

母様は大丈夫と言った。
でも、周りの様子が明らかにおかしい。

「かぁさま...?おそとはどうしたの?」

しー、と母様はジェスチャーする。

こちらに近づいてくる足音がする。

母様の顔が真っ青になっていく。

すると、馬車の扉が勢い良く開く。
そこには、ガタイのいい男がいた。

「おうおう、いたいた~」
と男が言う。
「ボス~、いましたよ~!この女は生かしとくんですよね?」
この女とは母様のこと?
分からない分からない

色々な事が起こりすぎて分からない。
護衛騎士さんは?
何で馬車は動かなかったの?
この人たちは誰?


そんなことを考えているうちに、
母様の腕が男によって引っ張られる。
その反動で僕は母様の腕から降りてしまった。
この男たちは"危険"だと
僕の本能が言う。

「かぁさまからてを...はなして!」
足が竦む。怖い。

「んぁ?うっせぇ!ガキは引っ込んでろ!」
そう言って男は僕を投げ飛ばした。

「ランス!」と、母様が叫び
気の緩んでいた男の手から逃れて
こちらに走ってくる。

「ちぇっ...もう時間がねぇ」
とボスと呼ばれた男が言う。

「仕方ねぇ!妥協だ、妥協!殺してしまえ!」

母様が何か言いながら走ってくる。

にげて?ふせて?
なんて、言ってるの...?

母様がこちらに手を伸ばしてくる。
僕は安心して、その手を掴もうとした。

その瞬間、
僕の視界は真っ赤に染まった。

僕の顔にも血しぶきがかかった。
返り血を浴びた・・・?

でも今はそれどころじゃない。

倒れた母様に近づき、母様...?と問いかける。
でも、返事はない。

「かぁ...さま?かぁさま?
あめふってる、さむいさむいよ?」
僕は体を揺すって起こそうとする。

「おいおい、惨めだなぁぁ!!!」
と男たちは神経を逆撫でするような事を言ってくる。
「だーいじょうぶ、今から同じとこ行くんだから。」
とニマニマしながら言い、こちらに近寄ってくる。

「......めて...やめてやめてやめて」
「かぁさまにちかづかないで!!!!!」

そう叫ぶと、
僕は結界を張り、その結界に風魔法を流し込む。
無意識だ。
僕が教えてもらったのは、「そよ風」の起こし方だけだ。
走馬灯から引っ張り出してきた思い出だ。
色々教えてもらったなぁ...
そんな呑気な事を考えているけど
体があつい、だるい。
いや、呑気なことを考えていないと耐えられない。

「はぁ?こいつこんなに魔力持ってたのかよ...」
「でも、小さかったっすよ?ガキでしたよガキ」
そんな会話が小さいが聞こえてくる。
「試しに、刀入れてみろ、後弓も」
すると、折れるまでは行かなかったが、刃こぼれが酷くなった。
弓矢は綺麗にはね返されてしまった。

この結界に触れたものは、深い切り傷ができる。
安易に触るバカなんて居ないでしょ...
でも、触るバカはいなかったけど、剣を振り下ろしてくるバカはいたみたい...

つめたい母様をぎゅっと抱き寄せ、一生懸命治癒魔法をかける。
「かぁさま...いま、なおしてあげるからね...」

ごめんなさい、ごめんなさい
僕が2人でなんて言ったから
兄様たちが居れば、僕なんかよりももっと強くて、頼りになって死ななかったかもしれない。
母様ごめんなさいごめんなさい

そう、ぶつぶつ呟いていた。


その頃外野では、、、

攻撃を綺麗に跳ね返すのか...
こりゃ、なかなかの結界だな、なんて考えていたら
馬の鳴き声と足音が。

ちっ...あの先に行かれた騎士が応援を呼んだか...

「おーい、撤退だぁ!!応援が来る前に逃げんぞ!」

妥協はしちまったが、いいものが見れた。
報告だな...

「『ランス』ね~、覚えとこうかな~」

そう呟き、退散していった。



-----------------------------


居なくなった...?
いや、向こうからまた誰かが来る。
また変な人たち...


「...ンス...ランス!!!」
誰...?僕を呼ぶのは?

「この結界を張っているのはランスなんだろう...?風魔法があって、中にいるのが誰か分からないが...」

「だぁれ...またへんなひとたちなのぉ...」
変な人たちだったら、なんで僕の名前を知ってるの?怖いよ

「ヴィンスだ...ヴィンセント・バーネット
お前の兄だ。」
ヴィンス兄様...?
僕は安心しきれておず、風魔法のみとく。

すると、確かにそこにはヴィンス兄様の顔が。
安心させるために、家紋も見せてくれる。
僕は、安心して結界をとく

「にぃにぃぃぃぃ...ごめんなさいごめんなさいぼくの、せいだぁ...ぼくが...ふた...ぅん...」
もうダメ。安心しきったら、意識が...

ごめんなさい、ごめんなさい
こんな弟いらないよね。母様を奪って...

一生懸命僕のことを呼ぶ兄様の声を後に
深い眠りに落ちた。
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