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39話
しおりを挟む浅井side
長谷川先生に頭を下げて病室に戻り、月島先生の横に座ると俺は先生の手を握る。
初めて握った時よりも少し骨が出ていて沢山のアザと切り傷が出来てしまった手。
あんなに綺麗な手で筆を持ち個性的で魅力的な絵を描いていたのに…
これも全てあの男のせいなんだと思ったら本当に腹ただしくて仕方なかった。
涙の跡をつけた月島先生を見つめているとマナーモードにしたスマホのバイブを感じ、スマホを取り出すと心配している三木からのメールだった。
【メール:三木】
月島先生いた!?
【メール:浅井】
いたよ。
でも、入院してる
【メール:三木】
は!?大丈夫なのかよ!?
【メール:浅井】
容態は安定してるけど
それもこれも全部あの男の仕業
【メール:三木】
あの男って…
まさか佐々木?
【メール:浅井】
そう。詳しくは後で話す。
【メール:三木】
分かった。
でもこっちも問題発生。
【メール:浅井】
あの後なんかあったのか?
【メール:三木】
PTA会長が乱闘騒ぎを起こしたうちのクラス全員を退学処分にするって言ってるらしい。
【メール:浅井】
校長と教頭はそれでなんで言ってんの?
【メール:三木】
校長と教頭はもうすぐ卒業だしそこまでする必要はないって言ってるけど、これを許したら代々卒業前に乱闘騒ぎをする事が受け継がれていくってPTA側が主張して退学を求めてるって。
【メール:浅井】
マジか…
分かった。とりあえずそれも考えよう。
俺は三木にそう返信を送るとスマホを置いた。
すると、月島先生はゆっくりと目を覚まし俺が握っている手をギュッと握り返す。
凹「…まだいてくれてたんだね。」
凸「目覚めた時に1人だと不安かと思って…でも先生が目覚めたら今度は先生が眠る時に寂しくないかなって考えて、ずっと月島先生のそばにいちゃいそう。」
俺がそう言うと月島先生はやっと俺に笑顔を見せてくれた。
凹「今日は浅井くんの誕生日なのに…先生のそばにいさせちゃってごめんね。」
凸「俺が勝手にいただけだし。」
凹「成人の誕生日なのにプレゼントもないんだ…ごめん。」
凸「本当に…ない?」
俺はゆっくりと月島先生の顔に近づき、月島先生の手のひらを自分の頬に当ててそう問いかける。
すると、月島先生は少し驚いた顔をして目を丸くしていた。
凸「本当にプレゼントない?月島先生なら俺が何で喜ぶか…1番知ってると思うよ?成人の誕生日に好きな人から贈ってほしいプレゼント…。」
俺がそう言うと月島先生の唇は微かに動き、ゆっくりと姿勢を起こして俺の唇に近づいてくる。
身体がまだキツいのか、微かに震えている先生の背中に手を回すと、月島先生は俺の首に腕を回すようにして俺の唇を塞いだ。
静かな病室に響くのは俺たちの唇が重なり合う音だけが微かに響き、月島先生の吐息が俺の胸を躍らせた。
チュッと音をさせながら離れた俺たちの唇。
月島先生は離れたばかりの俺の唇を親指で拭いながら言った。
凹「お誕生日おめでとう。」
凸「んふふ… ありがとう。」
俺はそう言うとまた、月島先生の唇を塞いだ。
つづく
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