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29話

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浅井side

部屋に入ると月島先生は不思議そうな顔をして俺のことを覗き込み、繋ぎ合わせられた手とは逆の手で俺の頭をポンポンと撫でた。


凹「よく頑張ったよ。浅井くんは本当によく頑張った。あの絵を見て先生は感動した。だから、そんなに落ち込むなよ…な?」


先生は賞を取れなかった俺が落ち込んでいると勘違いしているのかそうやって励ましてくれた。


確かに賞が欲しかったのは事実だけどそれは自分の頑張りというよりも月島先生のために欲しかっただけで…ぶっちゃけ最初からダメ元だと思っていた俺はショックなんか受けていない。


ただ、俺は佐々木とイチャイチャとしていたあの女が他校の女子生徒だったという衝撃と、その女を月島先生の視野に入れたくなくてただ夢中で部屋に戻ってきただけだった。


でも、月島先生が俺の頭をなで甘やかしてくれようとしているのだから、俺はそんな月島先生に遠慮なく甘える。


凸「賞が取れなくて悲しいからギュッてしてほしい。」


俺がそういうと、大人なのに純粋ですぐに人を信じ込む月島先生は俺のことを疑う事なく、ギュッと抱きしめて頭をぽんぽんとして慰めてくれる。


だから、俺も月島先生の体に手を回してギュッと抱きしめ返し、月島先生の匂いを深呼吸で吸い込む。


はぁ…幸せすぎる…


賞をもらうよりもこうやって月島先生を抱きしめているほうがはるかに幸せだ…


調子に乗った俺の手がゆっくりと動き始め、スルスルと月島先生のシャツの下に伸びようとしたその時!!


コンコン


部屋の扉がノックされ俺たちは慌てて離れた。


キョロキョロとした先生が慌てて部屋の扉を開けに行くと、そこには主催者の人たちが立っていて俺も月島先生の背中の後ろに立つ。


「もう、お部屋に戻られていたのですね!審査発表の際にいらっしゃらなかったのでこちらに来ました!」

凹「あ…えっと…勝手に抜けてしまい申し訳ございません…」

「とんでもない!しかし、せっかく授賞されたのに授賞式にいらっしゃらなかったので皆さんの前でお渡しする事が出来なくて残念ですが…」

凹「授賞…?」

凸「えぇぇぇ!?俺授賞したの!?」

「はい!おめでとうございます!審査員特別賞です。」

凸「マジで!?超やべぇ!!先生俺、審査員特別賞だって!!」


あまりの嬉しさからテンションの上がった俺がそういって月島先生の顔を覗き込むと、[FN:名前]先生はポロポロと涙を流し泣いていて思わず俺の動きは止まった。


俺はそんな先生の肩をゆっくりと抱き寄せ、自慢気な顔をすると主催者の方々はここで授賞式をしましょう!と言って泣きじゃくる月島先生の横で俺は表彰状とメダルを貰い、俺と月島先生は2人並んで写真を撮ってもらった。


「おめでとうございます!」

凸「ありがとうございます!」

凹「ありがとうございます˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚」

「おかえりはお気をつけてくださいね。」


そうして主催者の方達が戻っていくと部屋に戻った俺は喜びを爆発させる。


凸「ほら!月島先生みて!俺、審査員特別賞だって!」

凹「おめでとう˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚」


まだ、泣いている月島先生に俺は嬉しくて笑いが込み上げ、月島先生の首にメダルを掛けてあげるとギュッと抱きしめる。


凸「先生嬉しい?」

凹「嬉しいに決まってるじゃん。」

凸「俺も月島先生が泣いて喜んでくれて嬉しい。」


そう言ってゆっくりと身体を離し、月島先生の顔を覗き込んで親指で月島先生の頬に流れる涙を拭うとやっと、月島先生も俺の目を見てくれた。


凸「先生…俺、審査員特別賞取ったよ?」


月島先生の腰を抱いたまま俺がそう言うと、月島先生は嬉しそうな顔をする。


凹「うん…おめでとう…」

凸「先生…俺、審査員特別賞取ったんだよ?」

凹「うん…?おめでとう……」

凸「ご褒美のキスして。」


俺がそういうと月島先生は黙ってしまう。


だから俺は月島先生がキスをしてくれるまで言うんだ。


凸「月島先生から俺にキスして……」


すると、月島先生はゆっくりと俺の方に近づき…そっとキスをした。


月島先生から俺にキスしてくれた事が嬉しくて、俺はそのキスを味わうように啄む。


互いの吐息がまざり合い熱を持ち始めるキスに月島先生の手がゆっくりと俺の服をギュッと掴み、俺が月島先生の舌に絡めると月島先生はスッと俺の唇から離れてぎこちない笑みを浮かべた。


凹「はい。ご褒美終わり。おうち帰るよ!」


俺の胸をぽんぽんと叩き、仕方なく俺が月島先生の腰に巻きつけた手を離すと、月島先生は荷物を手に取る。


少し寂しさを感じながら仕方なくメダルの箱と表彰状の筒を適当にリュックに入れると、それを見た月島先生がもう!と怒りながらメダルの箱と表彰状の筒を傷がつかないようにタオルに包みリュックに入れてくれた。


凹「頑張ってとった賞なんだから大切にしなきゃだろ。」

凸「はーい。」


なんて言いながら俺たちは帰り支度をしコンテスト会場を後にした。


つづく
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