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20話
しおりを挟む浅井side
いつの間にか眠ってしまっていた俺は浅井くんの心地よい声で目覚めた。
凸「月島先生…終わったよ。」
ゆっくりと瞼を開けるとすぐそこには浅井くんの顔があり、ドキッと胸を弾ませた俺は浅井くんにはこの感情がバレてはいけないと思い、咄嗟に立ち上がる。
不思議そうな顔をした浅井くんは片付けをし、俺も何事もなかったかのような顔をして冷静さを取り戻すように片付けを手伝った。
浅井くん1人では作品もあるため多すぎる荷物を一緒に持って宿舎に戻る。
浅井くんは描きかけている作品を大切そうにそっと部屋の隅に置き、振り返ると浅井くんは俺のTシャツを見てハッとした顔をして飛んできた。
俺も慌てて視線をそこにやると絵の具がTシャツについてしまっていて、あぁやってしまったと思った。
すると、浅井くんは何を思ったのかTシャツの中に片手を入れ、もう片方の手でウエットティッシュを取り俺のTシャツについてしまった絵の具を一生懸命に拭き取ってくれようとしている。
きっと、浅井くんは純粋な気持ちでそうやってしてくれているのに、不純な気持ちを持っている俺は今にも浅井くんの手が自分の身体に触れてしまいそうで、ドキドキして息が止まってしまいそうだった。
そんな浅井くんはハッとして突然、俺から距離を取り俺はビクッと体を震わせる。
まさか…俺の気持ちバレちゃった?
焦りながら後ろを向いて顔が赤く染まっているのを浅井くんに見れないようにした。
凸「え…いや…変な意味じゃなくて…」
凹「わかってる…あ…ありがとう…先生着替えてくるね!」
ドキドキしすぎて苦しい。
俺は咄嗟に横にあった服を掴みトイレへと駆け込み、ようやくまともに息をする。
はぁ…ダメダメ…浅井くんは教え子なんだぞ…?
なに教え子相手にドキドキしてんだよ!!
そう自分自身に喝をいれて、さぁ着替えようと手に持っている服を見ると、なんとそれは浅井くんのジャージで、パニクってしまったばかりに完全にやってしまった俺はしばらくの間、トイレで頭を抱えていた。
すると、トントンと扉をノックされ焦る俺はトイレの中で右往左往とする。
凸「月島先生…」
浅井くんの声が聞こえて俺は慌てながら答えた。
凹「わかってる…すぐに出るから…!」
凸「いや、いいんだけど…もし、嫌な思いしたならゴメン。変なことするつもりはなかったんだ…あと…そのジャージ…俺の。」
分かってる…分かってるから先生はトイレから出れなかったんだよ…
穴があったら今すぐ飛び込んでしまいたいという気持ちをグッと堪え、ゆっくりとトイレの扉を開けると、真ん前に浅井くんが立っていて俺は浅井くんにそのジャージを差し出した。
凸「別にそれ着たいなら着てもいいけど…今から食堂でメシ食いに行くのに、先生がそれ着てたら先生童顔だからどっちが生徒でどっちが教師か分かんなくなるじゃん?」
凹「あははは~先生はほんとドジだな~!」
それでなくても童顔で有名な俺。
浅井くんのジャージを着て食堂に行けば間違いなく生徒と間違われるだろう。
笑って誤魔化しながら浅井くんの横を通り過ぎると、浅井くんは俺の手首を掴み、少し強引に引っ張り俺を自分の方へと振り返らせた。
すると、浅井くんのその目からはあどけなさが消えていて、いつの間にか大人の男の目となり俺の胸の奥をグッと鷲掴みにした。
凸「もしかして俺にドキッてした?」
浅井くんにそう問いかけられて全身が強ばりゴクリと喉を鳴らすと、浅井くんのその言葉にこたえようとしても緊張から喉がつまり言葉が出てこない。
ただ、ぎこちない空気だけが部屋の中を埋め尽くし俺は今にも呼吸困難になりそうだ。
凸「ねぇ…教え子の俺にドキッてしたのかって聞いてんの。」
俺の手首を少し自分の方にクイっと引き寄せる浅井くんに胸を高鳴らせながら俺は一歩、浅井くんの方に近づく。
そして、俺はいけない事だとわかりながらも視線を逸らしたまま…
言った。
凹「した…」
その言葉を口にしたのは元教え子と浮気をしているかもしれない恋人である佐々木先生への当て付け?
いや違う…この瞬間の俺の気持ちはそんなモノではなかった。
俺の頭には佐々木先生のことなんて1ミリもなくて…
ただ浅井くんの事しか見えなくて…
俺の唇は浅井くんに引き寄せられるようにして塞がれた。
いつの間にか愛おしくなってしまった人の温もり。
相手が教え子だというのに俺は浅井くんのその口付けを受け入れ、迷いなく吸い付く。
生々しい音を響かせ舌を絡める浅井くんにしがみ付き…俺は無我夢中でその口付けに応えた。
つづく
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