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18話
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月島side
思い違いじゃなかった。
いつも感じる熱い視線は熱気漂うこの季節がそう感じさせるだけだと思いたかった。
その相手が自分の教え子だったから。
教え子を特別な目で見てはいけない。
教え子を特別扱いをしてはいけない。
教え子を男として見てはいけない。
そんな当たり前の事なのに…
いつもどこかで気を張って心の中でそう唱えていないと、俺は教え子である彼に特別な感情を抱いてしまいそうだった。
いや、もうそう思ってしまっている時点で特別な感情を抱いていたのだろう。
ただ、認めたくなかっただけなのかもしれない。
教え子への恋心を認めてしまうとそれと同時に自分が最低な教師である事を認めてしまう事になるから。
しかし、俺は偶然…美術室で彼の唇と自分の唇が重なってしまった事で確信してしまう。
あ…俺は1番好きになってはいけない人を好きになってしまったんだな…と。
何事もなかったかのような顔をして絵のレッスンに励むまだあどけなさが残る彼の横顔。
鋭い輪郭と腕に浮かび上がる血管が幼い顔には不釣り合いなのにドキッと俺の胸を鳴らす。
教え子なのに…
いや、教え子だから彼と出会えた。
そんな風に教え子を見てしまっている複雑な感情の中、俺は彼に絵の指導をする。
後ろから手を伸ばし俺よりも少し小さな彼の手を包み込み腕を動かす。
そんな事をしなくても教える方法なんて山ほどあるのにそうして指導するのは俺のイケナイ下心のせい。
愛してはいけない…
そう思えば思うほどその愛に熱を注いでいるかのるようだった。
レッスンが終わり俺は彼に声をかけた。
彼が俺に何をしようとしていたか分かっていた俺はこれ以上、彼との間に生徒と教師以外の何かが生まれてしまうと彼のことを傷つけて彼の未来を壊してしまうのではないかと思い少し怖くなったから。
凹「浅井くん……」
凸「はい…」
凹「……さ…さっきのことなんだけど……」
俺がそう言いかけるとまだ子供の彼は可愛いほどに分かりやすい反応をしていて、その表情がまた俺の胸を締め付ける。
凹「ゴメン…なんでもない。」
そう言って結局、彼を突き放すことなんて出来なかった俺はニコッと笑って誤魔化し、自分の机の上にある紙をまとめていると彼は言った。
凸「キスです。俺…先生が好きだからキスしようとしました。なのでこれから隙を見せないように気をつけてくださいね。」
そう言い残して美術室を足早に出て行った彼。
その言葉を言った声はいつも聞く声よりも低く男らしくて俺の方が生徒である彼に心を奪われている。
ダメだよ…浅井くん…絶対にダメだ…
そう思えば思うほど俺は彼に夢中になっていく…
俺には佐々木先生という恋人がいるのに…
しかし、浅井くんはその日を境に絵のレッスンに来なくなった。
初めの頃は来る時に何かあったのか心配になって家やスマホに電話したり、学校を飛び出して浅井くんらしき人がいないか必死で探し回ったりしたが浅井くんの姿はなかった。
もしもの事を考え心配が募った俺は浅井くんの家の住所を調べ家にまで行くと、浅井くんがコンビニの袋をぶら下げて家に入っていく姿を見て俺はやっと理解した。
来れなかったのではなく来なかった…
いや…浅井くんは俺のレッスンをサボったのだと。
それと同時にとてつもない虚しさが押し寄せ、恋人である佐々木先生とすごしていても頭の中には浅井くんのことでいっぱいになっていた。
S「涼さ…最近変だよ?」
佐々木先生が俺の異変に気づき、一緒に過ごしている時、そんな事をボソッと言った。
凹「え?そんな事ないよ?佐々木先生の思い過ごしだよ。」
S「はぁ…2人で過ごしてる時くらいその佐々木先生って言うのやめなよ…俺たちもう付き合ってるのに。」
凹「あ…ごめん……」
佐々木先生は少し呆れた顔をしながら俺を抱き寄せ唇を重ねるだけのキスをした時…
俺の唇には一瞬触れただけの浅井くんのキスの感触が鮮明に蘇り、佐々木先生とのキスに初めて違和感を覚えた。
つづく
思い違いじゃなかった。
いつも感じる熱い視線は熱気漂うこの季節がそう感じさせるだけだと思いたかった。
その相手が自分の教え子だったから。
教え子を特別な目で見てはいけない。
教え子を特別扱いをしてはいけない。
教え子を男として見てはいけない。
そんな当たり前の事なのに…
いつもどこかで気を張って心の中でそう唱えていないと、俺は教え子である彼に特別な感情を抱いてしまいそうだった。
いや、もうそう思ってしまっている時点で特別な感情を抱いていたのだろう。
ただ、認めたくなかっただけなのかもしれない。
教え子への恋心を認めてしまうとそれと同時に自分が最低な教師である事を認めてしまう事になるから。
しかし、俺は偶然…美術室で彼の唇と自分の唇が重なってしまった事で確信してしまう。
あ…俺は1番好きになってはいけない人を好きになってしまったんだな…と。
何事もなかったかのような顔をして絵のレッスンに励むまだあどけなさが残る彼の横顔。
鋭い輪郭と腕に浮かび上がる血管が幼い顔には不釣り合いなのにドキッと俺の胸を鳴らす。
教え子なのに…
いや、教え子だから彼と出会えた。
そんな風に教え子を見てしまっている複雑な感情の中、俺は彼に絵の指導をする。
後ろから手を伸ばし俺よりも少し小さな彼の手を包み込み腕を動かす。
そんな事をしなくても教える方法なんて山ほどあるのにそうして指導するのは俺のイケナイ下心のせい。
愛してはいけない…
そう思えば思うほどその愛に熱を注いでいるかのるようだった。
レッスンが終わり俺は彼に声をかけた。
彼が俺に何をしようとしていたか分かっていた俺はこれ以上、彼との間に生徒と教師以外の何かが生まれてしまうと彼のことを傷つけて彼の未来を壊してしまうのではないかと思い少し怖くなったから。
凹「浅井くん……」
凸「はい…」
凹「……さ…さっきのことなんだけど……」
俺がそう言いかけるとまだ子供の彼は可愛いほどに分かりやすい反応をしていて、その表情がまた俺の胸を締め付ける。
凹「ゴメン…なんでもない。」
そう言って結局、彼を突き放すことなんて出来なかった俺はニコッと笑って誤魔化し、自分の机の上にある紙をまとめていると彼は言った。
凸「キスです。俺…先生が好きだからキスしようとしました。なのでこれから隙を見せないように気をつけてくださいね。」
そう言い残して美術室を足早に出て行った彼。
その言葉を言った声はいつも聞く声よりも低く男らしくて俺の方が生徒である彼に心を奪われている。
ダメだよ…浅井くん…絶対にダメだ…
そう思えば思うほど俺は彼に夢中になっていく…
俺には佐々木先生という恋人がいるのに…
しかし、浅井くんはその日を境に絵のレッスンに来なくなった。
初めの頃は来る時に何かあったのか心配になって家やスマホに電話したり、学校を飛び出して浅井くんらしき人がいないか必死で探し回ったりしたが浅井くんの姿はなかった。
もしもの事を考え心配が募った俺は浅井くんの家の住所を調べ家にまで行くと、浅井くんがコンビニの袋をぶら下げて家に入っていく姿を見て俺はやっと理解した。
来れなかったのではなく来なかった…
いや…浅井くんは俺のレッスンをサボったのだと。
それと同時にとてつもない虚しさが押し寄せ、恋人である佐々木先生とすごしていても頭の中には浅井くんのことでいっぱいになっていた。
S「涼さ…最近変だよ?」
佐々木先生が俺の異変に気づき、一緒に過ごしている時、そんな事をボソッと言った。
凹「え?そんな事ないよ?佐々木先生の思い過ごしだよ。」
S「はぁ…2人で過ごしてる時くらいその佐々木先生って言うのやめなよ…俺たちもう付き合ってるのに。」
凹「あ…ごめん……」
佐々木先生は少し呆れた顔をしながら俺を抱き寄せ唇を重ねるだけのキスをした時…
俺の唇には一瞬触れただけの浅井くんのキスの感触が鮮明に蘇り、佐々木先生とのキスに初めて違和感を覚えた。
つづく
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