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12話

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浅井side

校舎を出て原付を押し蒸し暑いなかダラダラと歩いていると、公園で三木がアイスを食べながらハトに餌をやっていて、俺は三木の元に駆け寄った。


凸「お前、こんなとこで何やってんの?」

M「あ?ハトに餌やり。」

凸「お友達はハトしかいねぇもんな?」

M「お前じゃあるまいし。アニキが女を家に連れ込んでヤってるから俺は追い出されたの。」

凸「なるほど。ご愁傷様。」

M「まあ、座れよ。お前こそ制服なんか着て何してんの?」


俺は原付を止め三木の横に座る。


凸「絵のコンテストのレッスン。」


俺がそう言うと三木はあっ!と何かを思い出したのか少し興奮したような顔をして俺の方を見た。


M「そうだ!お前知ってる!?」

凸「なにが?」

M「月島先生!!世界史の佐々木と付き合ってるらしいぞ!?」


俺の天敵でもある佐々木の名前を思いもよらない所で聞いた俺は思わず言葉を失い、真顔のまま目の前で無邪気に餌を食べているハトを見つめる。


M「おい!聞いてんのか?陽優ちゃ~ん!!お前の大好きな月島先生は~お前の大っ嫌いな佐々木先生と~付き合って…」


俺を揶揄うようにそういう三木の言葉を遮るように俺は勢いよく立ち上がると、ミラは俺のことを呆然とした顔で見上げた。


凸「あほくさ。」


俺はそう呟くと三木を置いて原付を持ちその場を後にした。


それは俺なりの最大の防御だった。


あの大っ嫌いな佐々木と付き合っているのが俺の大好きな月島先生?


確かに月島先生は初めて学校に来た日、先生は男だけど恋愛対象も男だと言ってはいた。


だがしかし、まさかそれがあの佐々木の事だなんて俺は信じられない。


いや、信じたくない。


ただの噂であってほしい。


そう思うのに俺の心は奥深くまで傷がついたかのようにザクザクと痛み、月島先生のことを思うだけで傷口に塩を塗られているような気分だった。


月島先生に出会って生まれて初めて真剣に何かに取り組んだ。


元々、絵を上手く描ける自信はあったが絵を描いて楽しいと思えたのは間違いなく月島先生と出会ってからだ。


家に着き、原付を置いて部屋に戻ると机の上には練習で描いた沢山の絵が置いてあり、それが心底俺をイラつかせる。


凸「ふざけんな!!」


やり場のない気持ちをその絵たちにぶつけるかのように俺は机の上にある絵や道具を力任せに掻き乱した。


それから俺は月島先生との絵のレッスンをサボるようになった。


いや、厳密に言えば大っ嫌いな佐々木と付き合っている月島先生の顔を見る自信がなかったから。


今まで通り、なんのやる気もなくただダラダラと過ごす毎日。


何にも興味がわかず何をしても楽しくない。


レッスンをサボると毎回家の電話が鳴り響き、ナンバーディスプレイを見れば高校からの電話で、レッスンをサボったから月島先生が電話してきてんだろなと思った俺はその電話を取ることなく無視をする。


すると、今度はスマホが鳴り響き俺はそれすらも無視をしていていた。


つづく
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