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浅井side

美術室に戻った俺は信じられないほど教室内が静かでみんな真剣な顔をしてデッサンをしていて思わず驚く。


凹「今日の授業は10分間でみんな同じ被写体をデッサンして残りの時間で自分の想像するオリジナルの作品に仕上げるの。浅井くんは今から10分間あげるから先生をデッサンしてね。1番上手く描けた人にはご褒美があるからね。」

凸「ご褒美ってなんですか?」

凹「ご褒美は先生の個人レッスン。みんなにどうしたら真面目に授業受けてくれるかって聞いたらそのリクエストが一番多かったんだ。浅井くんにしたらご褒美でもなんでもないよね?」


月島先生はそう言って笑っていてその笑顔があまりにも可愛くて俺はもう、自分の気持ちを認めた。


うん…好き。


間違いなく一目惚れだわ。


俺は月島先生が好き。


大好きです。


個人レッスンって聞いた途端にやる気MAXになったもん。


好きに決まってる。


みんなが浅井はクラス1の変態だから先生と個人レッスンなんて1番喜ぶよ~一体なんのレッスンしちゃうのかな~なんて余計な事を月島先生に吹き込むから、俺はその言葉を無視して席につき鉛筆を持つと、月島先生は椅子を持ってわざわざ俺の前に座った。


それを見た他の生徒たちは浅井だけ特別扱いで贔屓だと騒いでいるが、月島先生がうるさい子は減点すると言った途端に教室中は静かになり、俺は月島先生を見つめて絵に集中した。


俺の持つ鉛筆が迷う事なく滑らかに動いたのは、勉強は出来なかったが小さな頃から絵を描く事だけは好きだったから。


漫画や風景、文字のレタリングなどいつも授業中の暇な時にノートの隅に描いていた。


不思議と鉛筆を持つと月島先生に対する緊張感はなくなり、無心で絵のことだけを考えて鉛筆を走らせた。


あっという間に時間が過ぎ、タイマーが10分間という時の経過を知らせると月島先生はニコッと微笑み、椅子を元の場所に戻してみんなに指示をだす。


凹「やっと浅井くんも追いついてきたので本格的に指導に入ります。みんなは引き続き続けて下さい。」


月島先生はそういうと俺たちの後ろをゆっくりと歩き、一人一人の絵を眺めてアドバイスをしていく。


その姿をチラチラと見ていると月島先生は優しく後ろからクラスメイトの手を握り、鉛筆の動かし方を教えていて、その姿を見た俺はチクッと胸が痛んだ。


集中しよ…


そう思っても月島先生が近づいてくると自然と俺の気が絵から月島先生の方へと向かう。


俺の背後をゆっくりと歩く月島先生。


しかし、月島先生は俺にだけ指導をする事なく元の場所へと戻っていく。


それに少し落胆しながらも俺は絵に集中した。


2時間の美術の授業がおわり作品を提出して美術室から教室に戻ろうとすると月島先生が俺を呼び止めた。


凹「浅井くん!!」


その声に俺は無言のまま振り返る。


凹「申し訳ないけど今日も放課後残れる?すぐ終わるから。」

凸「はぁ……?」

凹「浅井くん今日掃除当番だよね?掃除が終わったらここにきてね。」


月島先生はそう言って微笑み、俺は小さく頷いて教室に戻った。


なんだろう…原付の事でまた反省文でも書かされるのかな…


そんな事を考えながら俺は残りの授業を過ごした。


つづく
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