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第十四話

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ツキヤサイド

そして俺たちは国の許可を取ることなく森に向かい、取り残されているウイルス感染をした吸血鬼達をヒイラとカケルが説得した。

ワクチンで変異が起きたミライとヒイラの血液はBlue一族にジンイチロウさんの手で打たれ、カケルの血液はpurple一族へとヨシキさんの手で打たれた。

俺はその間、森のすぐそばに止めある車の中でノリさんとパソコンを立上げる。

T「ノリさん……本当に後悔…しない?」

N「このまま…事実を見て見にぬふりする方が後悔する…」

T「分かった…」

俺はノリさんのその言葉に大きく頷くと、研究所のSNSアカウントを立ち上げ生放送Liveを配信した。

胸が早く動き出し手に汗にぎる。

俺たちの知らなかった国が隠した事実を俺は電波を通してひとつずつ丁寧に説明しながら話していく。

初めは少なかった観覧数も少しずつ増えていき、横でSNSをチェックしているノリさんは軽く頷き俺にSNSのトレンド欄を見せた。

すると、そこには俺の話がトレンド入りして大騒ぎになり始めていることがすぐに分かった。

T「僕たちが歴史で学んだのは全て国が作った話だったんです。僕が今話したのは吸血鬼として産まれ苦しみながら生きてきた吸血鬼達に聞いた事実です。どうか国がこの事実を隠しても国民の皆さんは目を背けないでください。彼達は元々、僕たちと同じ人間だったんです。彼らは悪くない…だから…どうか…ワクチンにより感染力のなくなった彼らを受け入れてあげて欲しい…この森に閉じ込めず…僕たち人間と同じ生活ができるように…どうか国民の皆さんにも理解してあげて欲しい…それが研究者であり人としての僕の願いです。」

そして、俺はゆっくりと生放送を切った。

生放送を終えた俺はどっと力が抜け、ノリさんがそっとペットボトルの水を出してくれた。

N「やる事は…やったよ…」

T「うん…」

すると、森の中からジンイチロウさんとヨシキさんが戻ってきた。

T「どうだった?」

J「大丈夫…生き残っていた感染者たち全員に打ったよ…あとは1か月この森で隔離して問題がなければ…この森を出ても大丈夫だろう…政府が許可すればの話だけど。」

T「うん…」

俺がそう言って下を向いているとヨシキが肩を叩きながら言った。

Y「あいつが柵の前で待ってるぞ……」

そう言われて顔をあげるとカケルが柵越しに俺をジッと見つめていた。

俺は慌てて車からおりカケルの元に駆け寄る。

T「みんなワクチン打ってくれたんだね…」

J「あぁ…みんなこの森から解放されること願ってるよ…もうしばらくはここで我慢だな…」 

思わず俺が柵の中にいるカケルに手を伸ばしそうになると、カケルが大きな声を上げた。

K「ダメだ!!この柵には電流が流れてる!!」

カケルの言葉を聞いて俺はハッとし手をゆっくりと下ろす。

T「なんで…カケルは今まで普通にこの森を出てたんだろ?ならカケルは先にここを出て俺と一緒に…」

K「行けないよ…みんなを置いて俺だけが先にこの森から出るなんて出来ない。たった1か月でしょ?今までずっとここで耐えてきたんだから1か月くらい…我慢出来るよ。Blue一族もこのワクチンのおかげで食料から栄養は取れるようになったし、ジンイチロウさんが食料の手配もしてくれるって言ってるから。」

カケルはそう言ってニコッと笑った。

本当に1か月でカケルたち吸血鬼はこの森を出ることが許されるのだろうか?

感染力がなくなったとはいえ普通の暮らしをする人間達を説得するのは相当難しいことだろう…

なにより国がそれを許すのかさえ分からない。

なのにカケルたち吸血鬼は仇としてみてもおかしくない俺たち人間のことを信じて待ってくれている。

T「絶対…なんとかするから…絶対…」

決意を決めた俺の目からはひと筋の涙がぽろっとこぼれ落ち、俺はギュッと拳を握りしめカケルに軽く頷くと、俺たちは吸血鬼の住む森を離れた。

つづく
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