【BL】月光〜絶望から救ってくれたのはキミだった〜

樺純

文字の大きさ
上 下
12 / 18

第十二話

しおりを挟む
ツキヤサイド

俺と口付けを交わしたソウをじっと見ていると、突然、ソウの身体がビクビクと大きく痙攣をし始めた。

S「ゔぅ…なんだ…これは…!!お前まさか…カケルと…」

俺は恐ろしさのあまり思わず後退りすると、ふわっと大きな黒い羽根が俺を包み込み、何も見えないように守られた。

K「あんま…ハラハラさせないで…」

俺の耳元でそう呟かれた声がいつの間にか愛おしく感じはじめていたカケルの声で、俺は緊張から強張らせていた身をカケルに任せる。

俺はカケルの羽根に包まれながらソウから離れるとソウは目の前でうめき声をあげながら消えていった。

T「消え…た…ほんとに…消えた…」

K「もう何考えてんだよ…マジで…」

カケルはソウが消えると力なく俺に倒れ込み、そのまま地面にひざまずいた。

T「カケル…」

俺がカケルを支えるようにしゃがみ込むと、カケルは俺の首をグイッと引き寄せキスをした。

少し冷たいカケルの唇を確かめるように俺はカケルの唇を啄む。

カケルはゆっくりと離れた俺の唇を親指で撫でながら涙を滲ませた。

K「あの時…キスしてなかったらって思ったらゾッとする…」

T「知らない間に婚姻関係結ぶなんてズルいよ…」

K「誰にも渡したくなかったから…」

カケルそう言うとそのまま意識を手放した。

M「いや、びっくりした。いきなりソウにキスするから頭狂ったのかと思った。」

H「カケルも真面目そうに見えてなんだかんだ手…早いな。ちゃんともうツキヤにツバ付けてたなんてな。」

ミライとヒイラがカケルのそばにやって来て、倒れたカケルの腕を持つと自分たちの肩に腕を回す。

T「待って…カケルを外に連れていくよ…この怪我だと…命が危ない…」

M「なぁツキヤ…全員分のワクチンが出来るまで…どれくらいかかるんだ…?」

T「ワクチンはあるけど使用許可が下りるのは早くて3ヶ月…」

H「その間にここの奴らがどれだけ命落とすと思う?俺たちにとって人間の生き血は感染拡大目的の以前に命の保持を意味する…それまで人間の血を吸えないって事は俺たちの仲間は死ねってことか?」

T「大丈夫…俺が死なせたりしない…行こう…真実を知らせるために…」

俺はカケルとミライ、そしてヒイラを連れてこの森を出た。

きっとこの事が世間にバレたら俺は死刑だろう…

でも、もうこうするしか方法は見つからなかった。

俺はカケルが教えてくれたパスワードを入れて鍵を開け3人をこの森から外に出した。

ミライとヒイラはおそらく初めて外界の世界を見たのだろう…少し怯えた顔をしながら空を見上げた。

T「あっちだよ…」

俺はカケルとふたりを連れて仲間の待つ場所に向かう。

みんなはどんな反応をするのだろうか…?

不安になりながら俺は止まっている車に近づく。

H「ちょっと待て…本当に信じていいんだな?」

T「うん…大丈夫…俺も命をかけて外に出してるから…」

俺がそう言えばヒイラとミライは目を合わせて頷き俺の後ろについてきた。

俺の姿が見えたのか中から研究所のみんなが降りて来て険しい顔をしている。

俺はゆっくりと近づいていくと全てを悟ったかのようにジンイチロウさんが車の扉を開けた。

J「早く治療しないと…彼の命が…」

その言葉を聞きたヨシキさんとノリさんがカケルを抱えて車の中に乗せる。

T「2人も早く乗って!!」

俺がそう言ってもミライとヒイラは難しい顔をして車に乗ろうとしない。

Y「いいから乗れって!!ツキヤだけじゃ飽き足らず俺たちまで死刑の危機に晒すつもりかよ!!」

ヨシキさんがそう叫ぶとミライとヒイラは恐る恐る車に乗った。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

独占欲強い系の同居人

狼蝶
BL
ある美醜逆転の世界。 その世界での底辺男子=リョウは学校の帰り、道に倒れていた美形な男=翔人を家に運び介抱する。 同居生活を始めることになった二人には、お互い恋心を抱きながらも相手を独占したい気持ちがあった。彼らはそんな気持ちに駆られながら、それぞれの生活を送っていく。

その関係はこれからのもの

雨水林檎
BL
年下わんこ系教師×三十代バツイチ教師のBL小説。 仕事中毒の体調不良、そんな姿を見たら感情があふれてしまってしょうがない。 ※体調不良描写があります。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

処理中です...