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第十話

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ツキヤサイド

ミライの家に着くとようやくミライは俺を解放した。

M「だから今はダメだって言ってんだろ!」

ミライの家の中で怒鳴られるとヒイラはさらに悪化してるのに、そんなミライをなだめるように笑顔を向ける。

俺はミライの手を振り解いてワクチンを取り出し、ヒイラの腕を消毒し針をヒイラの腕に沿わせる。

M「ちょっと待てよ!!ほんとにそれ…信じていいのか…?」

T「人間に戻るのは無理でも…人間と同じ生活は出来るようになる…このままヒイラを放っておいたら…死ぬだけだよ?」

M「だけど誰にも試してもないそんなワクチンで何がわかるって言うんだよ!!」

確かにそう言われてみればミライの言うことも理解できる。

研究上では成功しても実際はどうなるかなんて…

俺にも分からない。

T「そう…だけど…」

H「いいよ。俺で試してみればいい。上手くいけば…俺がBlue一族全員を…ワクチンを打つよう説得する…」

ヒイラは掠れた声でそう言って微かに微笑んだ。

T「ヒイラ……」

H「俺を助けて…ツキヤ…」

俺は微かに震える手でヒイラの腕にワクチンの針を刺した。

そしてゆっくりと注射器を押すとヒイラの身体の中にワクチンが入っていく。

すると、ヒイラの全身の血管が波を打ち、ヒイラの背中から一気にバサっと黒い羽根がでて、ヒイラは座るように起き上がった。

T「ヒイラ…?」

目を閉じたまま動かないヒイラの全身の血管はピクピクと動いている。

ゆっくりと目を開くとヒイラの瞳はは右は青…左は黒になっていた。

H「行こう…真実を知らせるためにも…もう、全てを終わらせるんだ。」

ヒイラの肌の色がみるみるうちに生き生きとした肌色になっていくのが俺の目でも分かった。

俺はミライにもこのワクチンを打ち、ヒイラとミライの3人でカケルの元に行った。

ミライの話によればpurple一族は2つの派閥に分かれていて、カケル率いるmoonとソウという名の人が率いる使者という2つの派閥で出来ている。

T「でも、なんで使者のボスがカケルを罠にかけて俺をおびき寄せようとしてるんだ…?」

M「お前を嫁にするためだよ。」

T「は!?俺は男だぞ!?」

H「俺たち感染者が身染めれば男とだって結婚は可能だし妊娠も出来る。ただ…」

T「ただ?」

H「俺たちは感染者は他の奴と一度婚姻を結んだ人とは二度と一緒にはなれないんだ…一度婚姻を結べはそれは永遠(とは)を意味し番(つがい)となるんだ…。しかも、他の奴と婚姻関係を結んだ人とまた、婚姻関係を結ぶと…己の身が滅びる。」

T「え……」

M「分かりやすく言うと!俺たち吸血鬼は人のものに手を出したらこの世からいなくなるってこと…消滅。だから、みんな決して人のものには手を出さない。先に自分のもにする為に必死なんだよ。その相手が男だろうが女だろうが。」

ヒイラとミライの淡々と話していく内容に俺は思わず気が遠くなり、ミライに寄りかかる。

M「俺たちはBlue一族は一族内でしか結婚も出来ないし子供も作れない…でもpurple一族は人間としか結婚できないからな…この森に迷い込んだ独身で美男な誰かさんが標的になるのもまぁ~分からなくはないよね?」

H「Blue一族なら俺がなんとか出来るがあのpurple一族の使者は俺じゃどうしようも出来ねぇ…カケルかソウ…どちらがツキヤを手に入れるかで決まってくるよな…この森の運命は…」

T「え…ちょっと待って…頭を整理したいんだけども…purple一族のダブルボスであるカケルとソウって人が男である俺を取り合ってるって事?」

M.H「だからそう言ってんじゃん!!」

T「え…俺そんなの無理なんだけど…」

M「無理もなにも吸血鬼に見染められたらしょうがない。」

T「いや、そういう意味じゃなくて…俺はカケルしか無理なんだけど…」

ん?俺は今一体、何を言ってるんだ?

そう思った時にはもう遅くて、ミライとヒイラがニヤニヤとした顔をして俺を見つめている。

H「へぇ~あいつ死体ばっか集めてくる死体オタクかと思ってたけどカケルもなかなかやるじゃん。」

ヒイラは俺と肩を組んで頭をクリクリと擦り付けてくる。

しかし、カケルしか無理…そう勝手に口が動いてしまったのは俺の本心なのかもしれない。

それは今、目の前で苦しむカケルを見て胸が痛み張り裂けそうになっているからだ。

T「2人ともお願い…カケルを助けて…どうしたらカケルは助かるんだ…?」

M「俺たちBlue一族がソウ率いる使者に殴り込みに行くか……それとももしくは…」

H「ツキヤが生贄になってソウの元にいくかだな…ツキヤ…お前ならどっちを選ぶ?」

俺はそう問いかけられて答えを探す…

でもきっとその答えは…見つからない…

けど、カケルをこのまま見殺しにするなんて俺には出来なかった。

T「カケルを助けてくる…」

俺はそう言い残しミライとヒイラの元から歩き出した。

つづく
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