【BL】月光〜絶望から救ってくれたのはキミだった〜

樺純

文字の大きさ
上 下
10 / 18

第十話

しおりを挟む
ツキヤサイド

ミライの家に着くとようやくミライは俺を解放した。

M「だから今はダメだって言ってんだろ!」

ミライの家の中で怒鳴られるとヒイラはさらに悪化してるのに、そんなミライをなだめるように笑顔を向ける。

俺はミライの手を振り解いてワクチンを取り出し、ヒイラの腕を消毒し針をヒイラの腕に沿わせる。

M「ちょっと待てよ!!ほんとにそれ…信じていいのか…?」

T「人間に戻るのは無理でも…人間と同じ生活は出来るようになる…このままヒイラを放っておいたら…死ぬだけだよ?」

M「だけど誰にも試してもないそんなワクチンで何がわかるって言うんだよ!!」

確かにそう言われてみればミライの言うことも理解できる。

研究上では成功しても実際はどうなるかなんて…

俺にも分からない。

T「そう…だけど…」

H「いいよ。俺で試してみればいい。上手くいけば…俺がBlue一族全員を…ワクチンを打つよう説得する…」

ヒイラは掠れた声でそう言って微かに微笑んだ。

T「ヒイラ……」

H「俺を助けて…ツキヤ…」

俺は微かに震える手でヒイラの腕にワクチンの針を刺した。

そしてゆっくりと注射器を押すとヒイラの身体の中にワクチンが入っていく。

すると、ヒイラの全身の血管が波を打ち、ヒイラの背中から一気にバサっと黒い羽根がでて、ヒイラは座るように起き上がった。

T「ヒイラ…?」

目を閉じたまま動かないヒイラの全身の血管はピクピクと動いている。

ゆっくりと目を開くとヒイラの瞳はは右は青…左は黒になっていた。

H「行こう…真実を知らせるためにも…もう、全てを終わらせるんだ。」

ヒイラの肌の色がみるみるうちに生き生きとした肌色になっていくのが俺の目でも分かった。

俺はミライにもこのワクチンを打ち、ヒイラとミライの3人でカケルの元に行った。

ミライの話によればpurple一族は2つの派閥に分かれていて、カケル率いるmoonとソウという名の人が率いる使者という2つの派閥で出来ている。

T「でも、なんで使者のボスがカケルを罠にかけて俺をおびき寄せようとしてるんだ…?」

M「お前を嫁にするためだよ。」

T「は!?俺は男だぞ!?」

H「俺たち感染者が身染めれば男とだって結婚は可能だし妊娠も出来る。ただ…」

T「ただ?」

H「俺たちは感染者は他の奴と一度婚姻を結んだ人とは二度と一緒にはなれないんだ…一度婚姻を結べはそれは永遠(とは)を意味し番(つがい)となるんだ…。しかも、他の奴と婚姻関係を結んだ人とまた、婚姻関係を結ぶと…己の身が滅びる。」

T「え……」

M「分かりやすく言うと!俺たち吸血鬼は人のものに手を出したらこの世からいなくなるってこと…消滅。だから、みんな決して人のものには手を出さない。先に自分のもにする為に必死なんだよ。その相手が男だろうが女だろうが。」

ヒイラとミライの淡々と話していく内容に俺は思わず気が遠くなり、ミライに寄りかかる。

M「俺たちはBlue一族は一族内でしか結婚も出来ないし子供も作れない…でもpurple一族は人間としか結婚できないからな…この森に迷い込んだ独身で美男な誰かさんが標的になるのもまぁ~分からなくはないよね?」

H「Blue一族なら俺がなんとか出来るがあのpurple一族の使者は俺じゃどうしようも出来ねぇ…カケルかソウ…どちらがツキヤを手に入れるかで決まってくるよな…この森の運命は…」

T「え…ちょっと待って…頭を整理したいんだけども…purple一族のダブルボスであるカケルとソウって人が男である俺を取り合ってるって事?」

M.H「だからそう言ってんじゃん!!」

T「え…俺そんなの無理なんだけど…」

M「無理もなにも吸血鬼に見染められたらしょうがない。」

T「いや、そういう意味じゃなくて…俺はカケルしか無理なんだけど…」

ん?俺は今一体、何を言ってるんだ?

そう思った時にはもう遅くて、ミライとヒイラがニヤニヤとした顔をして俺を見つめている。

H「へぇ~あいつ死体ばっか集めてくる死体オタクかと思ってたけどカケルもなかなかやるじゃん。」

ヒイラは俺と肩を組んで頭をクリクリと擦り付けてくる。

しかし、カケルしか無理…そう勝手に口が動いてしまったのは俺の本心なのかもしれない。

それは今、目の前で苦しむカケルを見て胸が痛み張り裂けそうになっているからだ。

T「2人ともお願い…カケルを助けて…どうしたらカケルは助かるんだ…?」

M「俺たちBlue一族がソウ率いる使者に殴り込みに行くか……それとももしくは…」

H「ツキヤが生贄になってソウの元にいくかだな…ツキヤ…お前ならどっちを選ぶ?」

俺はそう問いかけられて答えを探す…

でもきっとその答えは…見つからない…

けど、カケルをこのまま見殺しにするなんて俺には出来なかった。

T「カケルを助けてくる…」

俺はそう言い残しミライとヒイラの元から歩き出した。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

独占欲強い系の同居人

狼蝶
BL
ある美醜逆転の世界。 その世界での底辺男子=リョウは学校の帰り、道に倒れていた美形な男=翔人を家に運び介抱する。 同居生活を始めることになった二人には、お互い恋心を抱きながらも相手を独占したい気持ちがあった。彼らはそんな気持ちに駆られながら、それぞれの生活を送っていく。

その関係はこれからのもの

雨水林檎
BL
年下わんこ系教師×三十代バツイチ教師のBL小説。 仕事中毒の体調不良、そんな姿を見たら感情があふれてしまってしょうがない。 ※体調不良描写があります。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

みどりとあおとあお

うりぼう
BL
明るく元気な双子の弟とは真逆の性格の兄、碧。 ある日、とある男に付き合ってくれないかと言われる。 モテる弟の身代わりだと思っていたけれど、いつからか惹かれてしまっていた。 そんな碧の物語です。 短編。

処理中です...