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第九話

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ツキヤサイド

俺は焦る気持ちを落ち着かせるようにして森に向かった。

研究者としての立場を利用し、俺たちはT地区の中へと入り、俺が出てきた柵についてある鍵を見つめる。

一緒についてきてくれたジンイチロウさんとヨシキくんそして、ノリさんが心配そうに俺を見つめた。

J「ワクチンを打ったら…すぐに戻るんだぞ?」

T「分かった…。」

そして、俺は鍵のパスワードを押して中に入りまた鍵を閉める。

まだ、日の高い今なら襲われることはほぼない。

俺はゆっくりと振り返り3人に力強く頷いて森の中へ入って行った。

まずはカケルの元に行こう。

カケルはあの日、俺を守るために怪我をした。

怪我の具合はどうなのだろうか?

カケルのことが心配で胸の奥が疼きながら、頭の中にある微かな記憶を辿り、カケルの家を探す。

すると、俺はあるモノを見つけてしまった。

え……これは……

落ち葉の茂る地面にはおそらくカケルのモノだろう…

紫色の血液が引きずるようにして落ちていた。

カケルは…あのあと誰かに…捕まってしまったのだろうか?

不安を押し殺しながら俺はその血の跡を辿り歩いていく。

すると、ふと目に止まったのは見上げるほどの大きく生い茂った不気味な木。

その木によく目を凝らして見てみると、なんとそこにはカケルが血を流しながらその木に縛りつけられていた。

な…なんで…

言葉を失った俺が恐怖から縮こまる喉に力を入れてカケルの名を叫ぼうとしたその時…!!

俺の口を後ろから誰かが手で塞ぎ俺の耳元で言った。

「やめろ。あれは罠だ。」

その声には聞き覚えがあり、振り返るとそこにいたのは真っ黒なフードを目深に被ったミライだった。

T「ミライ…?」

M「この森の中に人間が迷い込んだって噂が広がってる…カケルはツキヤ…お前をおびき寄せる為の罠として今、あそこに縛り付けられてるんだ。」

ミライと俺は茂みに隠れながらカケルを見つめて話している。

T「嘘…そんな…あんな事したら…カケルが…死んじゃう…」

そういうとミライは俺の頭を優しくなでた。

M「今のカケルは監視されてる…ツキヤがカケルを助けると何者かがお前たちの話を聞いてたんだ…今はカケルの側に近寄らない方がいい。」

T「…そんなわけにはいかないよ…。…これ…ヒイラに打ってあげて…ワクチンなんだ…これを打てばヒイラ…助かるから…俺はカケルに…」

そう言って俺がカケルの元に走り出そうとするがミライに止められ、俺は力づくでまた引きずられるようにしてミライの家にまで連れて行かれた。

つづく
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