8 / 18
第八話
しおりを挟む
ツキヤサイド
1週間後
J「か…完成した!!」
小さなガラス張りの研究室で最終実験をしていたジンイチロウさんの声が響いた。
T「ほんと!?」
J「あぁ……」
Y「すげぇよ…マジでこんなの作れる日が来るなんて思ってもみなかった…」
N「ツキヤが持って帰ってきたあのキノコとpurple吸血鬼の血液がなかったら不可能でしたもんね?」
ヨシキくんもノリさんも少し興奮気味そう話し、俺の期待値も高まる。
T「ジンイチロウさん!今すぐ助けたい吸血鬼がいるんだ!!早くしないと死んでしまうかもしれない!!それを打って治療してあげたい!!だから俺、今からあの森に……」
J「それはダメだ…」
俺の言葉はジンイチロウさんの言葉によってかき消された。
T「え?」
J「勝手には試せない…国の許可が下りないと…」
T「その許可はどれくらいでおりる?」
J「早くて…3カ月だな…」
3ヶ月?ヒイラの様子を見ていればこの1週間でさえも間に合うかどうかの瀬戸際だと俺は思っていた。
早く、少しでも早くヒイラの元にワクチンを届けないとミライとの約束が…
おまけに俺は怪我をしたカケルを置いて森を出てきてしまった。
もしカケルの身になにかあったら…
そう息の詰まる思いのなか、寝る暇を惜しんで毎日、研究していたのに。
ワクチンが出来上がったというのに今から3ヶ月も待たないといけないなんてありえない。
T「ダメ!!そんなの無理だよ!!3ヶ月も待ってたら死んじゃう!!お願いジンイチロウさん…あの人たちを助けたいんだよ…お願い……」
Y「国には森から逃げた吸血鬼を保護して仕方なく自分たちの命を守るためにワクチンを打った…って言えばなんも言えないでしょ?なぁ?官僚の息子さん?」
ヨシキくんはそう言って父親が官僚であるノリさんに話を振ると、ノリさんは表情ひとつ変えることなく言った。
N「なにかあれば…俺が責任を取ります。」
ノリさんの言葉を聞いたジンイチロウさんはため息をつき諦めた顔をして中から出てきた。
そして、俺に5つのワクチンを渡した。
J「この2つはPurple族に効くワクチンだ…そしてこの2つはBlue一族…そしてこれは…」
T「これは?」
J「ツキヤのだよ。もし万が一、吸血鬼に襲われたらすぐこれを打つんだ。そうすれば抗体が体の中に出来て感染しない。だけど…」
T「だけど?」
J「人間ではなくなってしまう……」
そのジンイチロウさんの言葉にその場にいた全員が固まる。
俺たちが作っていたのは吸血鬼をウイルスから守り人間に戻すワクチンだったはず。
なのに、人間である俺がワクチンを打てば、人間ではなくなってしまう?
それはどういうとなのだろうか?
T「どういうこと…それ…じゃウイルス感染した吸血鬼達は…人間には戻れないって事…?」
俺がそう問いかけるとジンイチロウさんは大きく頷いた。
T「待って…そんなのワクチンじゃないじゃん。何の意味もな…」
J「あるよ…このワクチンはとても意味のあるワクチンだ…」
Y「どういうことですか?」
J「一度、ウイルス感染してしまった吸血鬼を人間に戻すのは無理…だけど…」
T「だけど…?」
J「人間と同じように生きれるようになって…このワクチンを打たれた吸血鬼に血を吸われたとしてもその人間は吸血鬼にならない。吸血鬼としての感染力がなくなるんだ。そうすれば自然と吸血鬼達の血は近い未来途絶える事になる。だから、ツキヤはワクチンを届けて…絶対にワクチンを打っていない吸血鬼に襲われないようにすること…それが第一だ。」
それを聞いた俺たちは頷く。
T「分かった……」
そして、俺はそのワクチンを持って立ち入り禁止地区となっているT地区に向かった。
つづく
1週間後
J「か…完成した!!」
小さなガラス張りの研究室で最終実験をしていたジンイチロウさんの声が響いた。
T「ほんと!?」
J「あぁ……」
Y「すげぇよ…マジでこんなの作れる日が来るなんて思ってもみなかった…」
N「ツキヤが持って帰ってきたあのキノコとpurple吸血鬼の血液がなかったら不可能でしたもんね?」
ヨシキくんもノリさんも少し興奮気味そう話し、俺の期待値も高まる。
T「ジンイチロウさん!今すぐ助けたい吸血鬼がいるんだ!!早くしないと死んでしまうかもしれない!!それを打って治療してあげたい!!だから俺、今からあの森に……」
J「それはダメだ…」
俺の言葉はジンイチロウさんの言葉によってかき消された。
T「え?」
J「勝手には試せない…国の許可が下りないと…」
T「その許可はどれくらいでおりる?」
J「早くて…3カ月だな…」
3ヶ月?ヒイラの様子を見ていればこの1週間でさえも間に合うかどうかの瀬戸際だと俺は思っていた。
早く、少しでも早くヒイラの元にワクチンを届けないとミライとの約束が…
おまけに俺は怪我をしたカケルを置いて森を出てきてしまった。
もしカケルの身になにかあったら…
そう息の詰まる思いのなか、寝る暇を惜しんで毎日、研究していたのに。
ワクチンが出来上がったというのに今から3ヶ月も待たないといけないなんてありえない。
T「ダメ!!そんなの無理だよ!!3ヶ月も待ってたら死んじゃう!!お願いジンイチロウさん…あの人たちを助けたいんだよ…お願い……」
Y「国には森から逃げた吸血鬼を保護して仕方なく自分たちの命を守るためにワクチンを打った…って言えばなんも言えないでしょ?なぁ?官僚の息子さん?」
ヨシキくんはそう言って父親が官僚であるノリさんに話を振ると、ノリさんは表情ひとつ変えることなく言った。
N「なにかあれば…俺が責任を取ります。」
ノリさんの言葉を聞いたジンイチロウさんはため息をつき諦めた顔をして中から出てきた。
そして、俺に5つのワクチンを渡した。
J「この2つはPurple族に効くワクチンだ…そしてこの2つはBlue一族…そしてこれは…」
T「これは?」
J「ツキヤのだよ。もし万が一、吸血鬼に襲われたらすぐこれを打つんだ。そうすれば抗体が体の中に出来て感染しない。だけど…」
T「だけど?」
J「人間ではなくなってしまう……」
そのジンイチロウさんの言葉にその場にいた全員が固まる。
俺たちが作っていたのは吸血鬼をウイルスから守り人間に戻すワクチンだったはず。
なのに、人間である俺がワクチンを打てば、人間ではなくなってしまう?
それはどういうとなのだろうか?
T「どういうこと…それ…じゃウイルス感染した吸血鬼達は…人間には戻れないって事…?」
俺がそう問いかけるとジンイチロウさんは大きく頷いた。
T「待って…そんなのワクチンじゃないじゃん。何の意味もな…」
J「あるよ…このワクチンはとても意味のあるワクチンだ…」
Y「どういうことですか?」
J「一度、ウイルス感染してしまった吸血鬼を人間に戻すのは無理…だけど…」
T「だけど…?」
J「人間と同じように生きれるようになって…このワクチンを打たれた吸血鬼に血を吸われたとしてもその人間は吸血鬼にならない。吸血鬼としての感染力がなくなるんだ。そうすれば自然と吸血鬼達の血は近い未来途絶える事になる。だから、ツキヤはワクチンを届けて…絶対にワクチンを打っていない吸血鬼に襲われないようにすること…それが第一だ。」
それを聞いた俺たちは頷く。
T「分かった……」
そして、俺はそのワクチンを持って立ち入り禁止地区となっているT地区に向かった。
つづく
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【BL】僕(18歳)、イケメン吸血鬼に飼い慣らされる。
猫足02
BL
地下室に閉じ込められていた吸血鬼の封印が解け、王族は絶体絶命。このままでは国も危ないため、王は交換条件を持ちかけた。
「願いをひとつなんでも聞こう。それでこの城と国を見逃してはくれないか」
「よかろう。では王よ、お前の子供をひとり、私の嫁に寄越せ」
「……!」
姉が吸血鬼のもとにやられてしまう、と絶望したのも束の間。
指名されたのは、なんと弟の僕で……!?
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
失恋して崖から落ちたら、山の主の熊さんの嫁になった
無月陸兎
BL
ホタル祭で夜にホタルを見ながら友達に告白しようと企んでいた俺は、浮かれてムードの欠片もない山道で告白してフラれた。更には足を踏み外して崖から落ちてしまった。
そこで出会った山の主の熊さんと会い俺は熊さんの嫁になった──。
チョロくてちょっぴりおつむが弱い主人公が、ひたすら自分の旦那になった熊さん好き好きしてます。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
陽気な吸血鬼との日々
波根 潤
BL
バイト帰りに男が倒れているのを見つけた面倒くさがりな高校生、杉野清飛(スギノ セイト)はなけなしの良心から彼を助けようと声をかける。
男は杉野の亡き母がその存在を嬉々として語っていた吸血鬼であった。
それをきっかけに始まる奇妙にも穏やかな共同生活。
湧きあがる感情に戸惑いつつも、杉野は陽気な吸血鬼との日常に心地よさを抱き初める。
しかし、吸血鬼にはある秘密があってーー。
陽気で面倒見の良い吸血鬼×投げやりで面倒くさがりな高校生のお話です。
※吸血鬼について独自の設定とふんわりとした解釈のお話になってるので、思っているようなお話ではないかもしれません。優しい目で見てくださるとありがたい。
(自分としては)ハッピーエンドの予定です。
BL小説を書くのは初めてですが、楽しんでくだされば幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる