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第五話

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ツキヤサイド

勢いよくミライは俺を引っ張り中へ連れて行く。

中に入るとそこにはベッドに横たわっている人がいた。

M「ヒイラくん遅くなってごめん。体調どう?」

H「大丈夫…だよ…」

かすれた声でそう言った彼はどこからどう見ても大丈夫そうではなくいつ、命を失ってもおかしくない状態だと研究者の俺はすぐに分かった。

M「今日はね?生きた人間を連れてきたよ?死んだ人間の血じゃ元気でるわけないし、ここの所、警備厳しくて外に出れてないから。久しぶりに生きた人間の血が吸えるね?」

その言葉を聞いてどんなに政府がウイルス感染を防ぐために危険地域を封鎖しても感染がなぜ広がり続けているのかがやっと、理解できた。

俺がじっとその人を見ているとミライは俺の腕をぐいっと掴み、ヒイラと呼ばれる人の前に膝まずかされた。

すると、そのヒイラさんは俺の目をじっと見てニコッと微笑んだ。

H「ミライ…この子…帰してあげな…」

M「はぁ!?ヒイラくんなに言ってんの!?ヒイラくんの為に捕まえたんだよ!?そんなお人好しのことばっか言ってたら本当に死んじゃう…頼むからこいつの生きた血を吸ってくれよ…俺を独りぼっちにしないでくれよ!!」

興奮したミライは俺の腕を痛いほどに掴み取り乱している。

確かにこの人は今、俺の血を吸わなかければあと数週間の命だろう…

でも、この人に血を吸われてしまえば…

俺は吸血鬼になってしまう。

H「ダメだよ…ミライ…もう、いつかは終わりにしなきゃいけないんだよ…俺たちが終わりにするの。そうすればこの世界は平和になる…だから…この子を帰してあげて…」

M「ヒイラくん!!!?」

H「怖い思いさせてごめんね……早く帰りな…自分の戻るべき場所へ……」

T「え……俺……」

俺はその言葉に戸惑い…ついミライの方を見て顔色を伺ってしまう。

ミライの目は悲しみで溢れていてヒイラを見つめたまま一筋の涙がこぼれ落ちた。

M「何してんだよ…早く行けよ…」

T「え……?」

M「早く行けって言ってんだよ!?じゃなきゃ俺がお前の血を吸うぞ!!!?」

怒鳴り散らすようなミライの声に俺は微かに震え、ガクガクとなる膝をなんとか耐えながら俺は外に出て走り出す。

すると、すぐに後ろから呼び止められた。

M「ツキヤ!!」

俺が振り返るとミライが玄関から俺を見ていた。

M「次の大きな松の木の横に俺たち吸血鬼にとって天敵となるキノコが生えてる。赤色のキノコだ…それを持っていれば…Blue一族もPurple一族も襲わないから…」

T「…え…ぁ…うん…ありがとう…」

M「…じゃ…」

ミライはそう言って俺に背を向けて中へ入っていく。

T「ミライ!待って!!」

俺がそう叫べばミライゆっくりと振り返り俺を見た。

T「俺…ワクチン作って戻ってくるから!!だから…待ってて…ヒイラと…」

ミライは背中を向け頭を縦に2回動かし、右手を上げて中へと入って行った。

そして、俺は走り出す。

暗闇の中…月明かりだけを頼りに…

俺の匂いを嗅ぎつけてきたのかミライに追いかけられている時と同じように…

呻き声をあげた目には見えない何かが俺の服や髪を引っ張っる。

そして、俺はミライがさっき言っていたキノコを見つけた。

俺はそこまで全速力で走り慌ててそのキノコを採り、手に持つと不思議なことにさっきまで耳が痛いほどに聞こえていた呻き声がサーっと消えた。

俺はゆっくりと立ち上がり歩き出す。

T「なんだよこのキノコ…すげぇ…」

俺は何かの手がかりになるかもしれないと思いポケットにそのキノコを詰め込んで出口を探した。

カケルは大丈夫だっただろうか…

あんなに大量の血を流していた。

気になっても今の俺にはどうする事も出来ない…

カケル…キミは俺を助けてくれたのに…ごめんね…

日が昇りはじめ空が薄紫色に染まる。

T「あ…あった…」

しかし、そこは鍵が掛かり電流の流れている柵がしてある。

それに触れれば俺は一瞬で死ぬ…

俺はカケルの言うように本当にこの森へ自ら足を踏み入れたのだろうか…?

こんな厳重な閉鎖空間をなぜ、俺はいとも簡単に抜けれたのだろうか…?

不思議に思いながらその出口まで行くと…

T「マジかよ…」

そこにはパスワードのロックがかかった鍵があった。

つづく
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