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第一話
しおりを挟む俺が研究者を目指したのは17歳の頃
自分の生まれ育った街が謎のウイルスに汚染され閉鎖されたから。
俺が生まれる数十年前にそのウイルスは発見され感染が確認された。
P地区から始まり…今では俺の故郷であるT地区まで感染は広がっている。
危険地域指定をされたP地区とT地区は関係者以外立ち入り禁止となり、その中にある森の中は電流の流れるフェンスによって囲われ全面閉鎖された。
17歳の俺は祖母と一緒に着の身着のままで逃げ出し…幸いウイルスに感染する事はなく逃げ切れた。
「なぁ…ばあちゃん…あのウイルスに感染したら…どうなるの?」
「ツキヤ…あのウイルスは人を変えてしまうんだよ…」
T「人を変える?」
「…鬼になる…恐ろしいウイルスだよ…」
俺の横で小さく縮こまった祖母が微かに震えながら俺たちの故郷をみて手を合わせている。
T「ばあちゃん…安心して…俺…研究者になって…そのウイルスに効くワクチンを開発するよ…そしたらまた、ばあちゃんとあの家に一緒に住める…大丈夫だから…!!」
強気にそう言った俺に祖母は優しく微笑んだ…が…
俺は祖母との約束を守れないまま…
祖母は病気になり3年前に天国へと旅立った。
「ばあちゃん…ごめんな…」
祖母を想い出の詰まった家に帰してあげる事が出来なくて俺は心が痛み…
その謎のウイルスを心から憎んだ。
現在
「ツキヤ!!この抗体がウイルスと反応してる!!」
分厚い防護服を身に纏い、俺たちは毎日毎日、研究室にこもってウイルスに効く特効薬を研究した。
T「やっと…手がかり掴めそうだね…ノリさん…」
N「だな…ツキヤは明日、久しぶりの休みだろ?何するんだ?」
T「うん…新しい車を納車してからまだ1度も乗ってないから明日はドライブかな?」
N「そうか!気をつけろよ?」
Y「くれぐれも吸血鬼に襲われるなよw」
T「ヨシキさん冗談キツイ!!」
俺は気心知れた職場の先輩とそんなたわいもない話をし、久しぶりの休みが楽しみで仕方なかった。
向かったのは人里離れた町…俺の生まれた故郷である関係者以外立ち入り禁止のT地区の真横にある小さな町。
懐かしい風景と共にドライブを楽しみ車を走らせていたはずなのに…
俺は今…灯りのない道無き道を少し怯えながら歩いている。
風に鳴された木々の声が俺の不安を煽り闇の中へと導いていく。
なぜ、俺はこんな所に迷い込んでしまったのだろう?
お気に入りの新車に乗って懐かしい風景のなかドライブがしたかっただけ…
それなのに買ったばかりの新車は道路に落ちていた何かの破片を踏みタイヤがパンクした。
焦ってスマホを取り出すも…電波が入らない。
やばい…
しばらくの間、通りかかる車や人を待ってみたものの…
人っ子一人として会うことはなかった。
それもそうだ…ここは危険地域指定されたT地区に隣接する町だから。
日が沈み始め震えるような寒さの中、俺は仕方なく歩き始めた。
自分ではただ、道なりに歩いたつもりだった。
なのに気づけば…
T「なんだよ…この森…気持ち悪ぃ…な…」
木々が生い茂る山の中に迷い込んでしまった。
ポツポツポツ…
小さな雨粒が俺の頬に当たり気持ちが焦る。
T「雨とかマジで勘弁して…」
視線の先にあった大きな木の下に雨宿りしようと俺は走り出した。
すると…大きな雷が頭上で鳴り響いた。
T「……あっ……」
咄嗟に身を守ろうとしたその瞬間。
ぬかるんだ地面に足を取られ、頭に激痛を感じたと同時に俺は意識を手放した。
つづく
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