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13話
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トナサイド
扉が開いてすぐ…
私は心臓が止まるかと思った。
思わず私が叫びそうになったのが分かったのか、その人は優しく微笑みながら私の叫びを遮るように言った。
「初めましてユウラと申します。王様からは皆さんのこと伺っておりますのであちらの家をご自由にお使いください。あ、トナさんでしたね?少しお話を…こちらでよろしいですか?」
そこにいたのは間違いなく王様で…
名前も変え、髪型も変えて服装もボロボロでたった。
一夜で別人のようになってしまったけど…
それは見間違いでも何でもなく…
間違いなく王様だった。
コハクと母が荷物を持って家に入るのを見計らい、王様は私の手を引いて王様の家の中に入った。
T「え!?え!?え!?ってか!?王様死んだんじゃ!?なんで生きてんの!?」
Y「人を勝手に殺すな。無事で安心した…」
そう言うと王様は優しく私のことを抱きしめてくれた。
T「王様もご無事で良かったです…」
私がそう言えば王様は笑った。
Y「王様はもう死んだ。おそらく、新たな王様としてまだ幼い義弟が政権を握ることになるだろう…だから俺はもう王様でもなんでない…愛する人の帰りを待つ……ただの男だ。」
そう言った王様は今まで見た中で1番幸せそうな顔をしていた。
T「でも、なんか私まで死んだことになってたんですけど!?」
Y「お前が逃げたあと…俺のお付きのニカヤと一緒にあの部屋に俺たち3人の身代わりとして重罪で処刑された人間の死体を置いたんだ。」
T「え…王様…それこそ…重罪…ですよ…」
Y「そうでもしないと…俺もお前もこうやって自由が得られなかっただろ?」
王様は冷たそうに見えて本当は心の温かい人だと言うことは私も数ヶ月間、生活を共にして十分すぎるほどわかっている。
たとえ、例え重罪で処刑されていたとはいえ私たちの身代わりにさせてしまった事に王様は心を痛めているようだった…
T「王様はともかく…私の場合は王様のせいで王宮に連れ込まれたのに?」
私が空気を変えるように少しふざけてそう言うと王様は苦笑いをする。
「トナ様…それは違いますよ。」
そう声が聞こえて振り返るとそこにはニカヤが立っていた。
N「王様がトナ様を王宮に連れてくるよう言った訳じゃないんです。」
Y「もういいじゃないかその話は…」
T「え…良くない…どう言う事ですか?」
N「あれは王様ではなくトナ様のお付きであるジラがトナ様を町で見つけて側室にすると勝手に決めたんです。王様はそのことを知っていましたがあの状況であなたが唯一、信用しているジラを憎むような事になれば心を許す人がいなくなり苦しい王宮生活になると思い…全ては自分のせいだと王様は嘘を付いたんですよ…トナ様のことを想って…」
王様の優しい嘘に私の胸がギュッと締め付けられた。
Y「もう終わった事だ。これからはまぁ、お隣さんとして仲良く暮らせばいいじゃないか。」
照れているのか目を合わせてくれない王様に私はギュッと抱きついた。
T「王様…ありがとうございます…王宮の中で私の味方でいてくれたのは…王様だけだったかもしれません…」
Y「でもあの時…お前と彼を見て自分と重ねて羨ましいと思ったのは事実だならな…2人には辛い思いさせて本当に申し訳なかった…」
T「ううん…これからはユウラさんって呼ばなきゃですね?」
Y「あぁ…よろしくな?」
そして私たちの新たな生活は始まった。
つづく
扉が開いてすぐ…
私は心臓が止まるかと思った。
思わず私が叫びそうになったのが分かったのか、その人は優しく微笑みながら私の叫びを遮るように言った。
「初めましてユウラと申します。王様からは皆さんのこと伺っておりますのであちらの家をご自由にお使いください。あ、トナさんでしたね?少しお話を…こちらでよろしいですか?」
そこにいたのは間違いなく王様で…
名前も変え、髪型も変えて服装もボロボロでたった。
一夜で別人のようになってしまったけど…
それは見間違いでも何でもなく…
間違いなく王様だった。
コハクと母が荷物を持って家に入るのを見計らい、王様は私の手を引いて王様の家の中に入った。
T「え!?え!?え!?ってか!?王様死んだんじゃ!?なんで生きてんの!?」
Y「人を勝手に殺すな。無事で安心した…」
そう言うと王様は優しく私のことを抱きしめてくれた。
T「王様もご無事で良かったです…」
私がそう言えば王様は笑った。
Y「王様はもう死んだ。おそらく、新たな王様としてまだ幼い義弟が政権を握ることになるだろう…だから俺はもう王様でもなんでない…愛する人の帰りを待つ……ただの男だ。」
そう言った王様は今まで見た中で1番幸せそうな顔をしていた。
T「でも、なんか私まで死んだことになってたんですけど!?」
Y「お前が逃げたあと…俺のお付きのニカヤと一緒にあの部屋に俺たち3人の身代わりとして重罪で処刑された人間の死体を置いたんだ。」
T「え…王様…それこそ…重罪…ですよ…」
Y「そうでもしないと…俺もお前もこうやって自由が得られなかっただろ?」
王様は冷たそうに見えて本当は心の温かい人だと言うことは私も数ヶ月間、生活を共にして十分すぎるほどわかっている。
たとえ、例え重罪で処刑されていたとはいえ私たちの身代わりにさせてしまった事に王様は心を痛めているようだった…
T「王様はともかく…私の場合は王様のせいで王宮に連れ込まれたのに?」
私が空気を変えるように少しふざけてそう言うと王様は苦笑いをする。
「トナ様…それは違いますよ。」
そう声が聞こえて振り返るとそこにはニカヤが立っていた。
N「王様がトナ様を王宮に連れてくるよう言った訳じゃないんです。」
Y「もういいじゃないかその話は…」
T「え…良くない…どう言う事ですか?」
N「あれは王様ではなくトナ様のお付きであるジラがトナ様を町で見つけて側室にすると勝手に決めたんです。王様はそのことを知っていましたがあの状況であなたが唯一、信用しているジラを憎むような事になれば心を許す人がいなくなり苦しい王宮生活になると思い…全ては自分のせいだと王様は嘘を付いたんですよ…トナ様のことを想って…」
王様の優しい嘘に私の胸がギュッと締め付けられた。
Y「もう終わった事だ。これからはまぁ、お隣さんとして仲良く暮らせばいいじゃないか。」
照れているのか目を合わせてくれない王様に私はギュッと抱きついた。
T「王様…ありがとうございます…王宮の中で私の味方でいてくれたのは…王様だけだったかもしれません…」
Y「でもあの時…お前と彼を見て自分と重ねて羨ましいと思ったのは事実だならな…2人には辛い思いさせて本当に申し訳なかった…」
T「ううん…これからはユウラさんって呼ばなきゃですね?」
Y「あぁ…よろしくな?」
そして私たちの新たな生活は始まった。
つづく
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