11 / 14
11話
しおりを挟む
コハクサイド
トナが王宮に行ってから色んな噂を耳にした。
トナと王様は愛し合う運命のような2人だ…
その結果2人はすぐに子宝に恵まれ…
2人はとても幸せに暮らしている。
そんな噂を聞くたびに俺とトナが過ごした時間はまるで幻だったのではないかと思うほど儚く思えた。
あの時は綺麗に咲いていた紫陽花の花も今は枯れ落ちた。
それはまるで俺の心と同じように。
なのに全てを忘れることのできない俺は、最後にトナと愛し合ったこの場所に毎晩のように訪れた。
そこに行けばトナの温もりを感じられるような気がしたから。
ゆっくりと一望できる町並みを見ていると…
一角が橙色に染まり俺の心が動揺する。
確か…あそこは…王宮…
嘘だろ…
気づいた時には俺は走りだしていた。
俺なんかが行って何の意味があるのだろう…
いや、意味なんて今の俺にはいらない。
ただ、愛する人があの場で苦しんでいるかも知れない。
そう思ったら居ても立ってもいれらかったんだ。
息を切らし走っても王宮には永遠につかないのではないかと思うほど遠く感じた。
思わず俺は膝に手をつき息を切らし、顎から汗を流していると目の前から炎に照らされる人影が見えた。
それはどこか見覚えがあり俺は目を凝らしじっと見つめる。
K「…まさか…トナ…!?」
俺はまた、走りだすとはっきりとトナの顔が見え、トナも俺に気づくとトナは俺の胸に飛び込んできた。
K「トナ……」
T「…ぅう…コハク…あ…会いたかったよ…」
K「俺も会いたかった…」
トナをしっかりと抱きしめ直し、息を吸い込むと懐かしい大好きなトナの匂いが煙の臭いに紛れて香る。
K「でもどうしてここに?1人で火事から逃げてきたの?」
俺がそう問いかけるとトナはゆっくりと俺から離れ首を横に振る。
T「ううん…あの火事は…王様が私を逃すために火を付けたの。私は夢中で王宮からここまで逃げてきた…コハクを愛してるから…」
ずっと待っていた愛しい人…
ずっと待っていたその言葉に俺の涙が溢れ出す。
俺は自然と微かに膨らんだお腹に手を伸ばした。
T「信じてくれないかもしれないけど…この子は…王様の子じゃない…コハクの子だよ?王様は私を側室としてそばに置きながら手を出さなかった…私は…コハク以外の人とは…」
そこまで言いかけたトナをまた、抱きしめ俺はトナに嗚咽混じりに伝えた。
K「信じるよ…信じるに決まってるじゃないか…こんなに愛してるんだから…」
T「コハク…ありがとう…」
そうしてトナは俺の涙を指で拭うと、優しく俺の唇にそっと口付けた。
つづく
トナが王宮に行ってから色んな噂を耳にした。
トナと王様は愛し合う運命のような2人だ…
その結果2人はすぐに子宝に恵まれ…
2人はとても幸せに暮らしている。
そんな噂を聞くたびに俺とトナが過ごした時間はまるで幻だったのではないかと思うほど儚く思えた。
あの時は綺麗に咲いていた紫陽花の花も今は枯れ落ちた。
それはまるで俺の心と同じように。
なのに全てを忘れることのできない俺は、最後にトナと愛し合ったこの場所に毎晩のように訪れた。
そこに行けばトナの温もりを感じられるような気がしたから。
ゆっくりと一望できる町並みを見ていると…
一角が橙色に染まり俺の心が動揺する。
確か…あそこは…王宮…
嘘だろ…
気づいた時には俺は走りだしていた。
俺なんかが行って何の意味があるのだろう…
いや、意味なんて今の俺にはいらない。
ただ、愛する人があの場で苦しんでいるかも知れない。
そう思ったら居ても立ってもいれらかったんだ。
息を切らし走っても王宮には永遠につかないのではないかと思うほど遠く感じた。
思わず俺は膝に手をつき息を切らし、顎から汗を流していると目の前から炎に照らされる人影が見えた。
それはどこか見覚えがあり俺は目を凝らしじっと見つめる。
K「…まさか…トナ…!?」
俺はまた、走りだすとはっきりとトナの顔が見え、トナも俺に気づくとトナは俺の胸に飛び込んできた。
K「トナ……」
T「…ぅう…コハク…あ…会いたかったよ…」
K「俺も会いたかった…」
トナをしっかりと抱きしめ直し、息を吸い込むと懐かしい大好きなトナの匂いが煙の臭いに紛れて香る。
K「でもどうしてここに?1人で火事から逃げてきたの?」
俺がそう問いかけるとトナはゆっくりと俺から離れ首を横に振る。
T「ううん…あの火事は…王様が私を逃すために火を付けたの。私は夢中で王宮からここまで逃げてきた…コハクを愛してるから…」
ずっと待っていた愛しい人…
ずっと待っていたその言葉に俺の涙が溢れ出す。
俺は自然と微かに膨らんだお腹に手を伸ばした。
T「信じてくれないかもしれないけど…この子は…王様の子じゃない…コハクの子だよ?王様は私を側室としてそばに置きながら手を出さなかった…私は…コハク以外の人とは…」
そこまで言いかけたトナをまた、抱きしめ俺はトナに嗚咽混じりに伝えた。
K「信じるよ…信じるに決まってるじゃないか…こんなに愛してるんだから…」
T「コハク…ありがとう…」
そうしてトナは俺の涙を指で拭うと、優しく俺の唇にそっと口付けた。
つづく
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたの虜
樺純
恋愛
「彼女が愛すべき人に気づいたその瞬間… 涙のカウントダウンがはじまる。」人気アイドルのマネージャーを務める30代独身のミラは仕事一筋で今まで頑張ってきた。しかし、結婚適齢期となり恋人がいない事を揶揄われ結婚を意識するようになる。そんな時、偶然見つけたBAR「Heaven」ママからミラは惚れ薬の入った角砂糖をプレゼントされる。ミラは半信半疑のままその角砂糖を受け取るもその存在をすっかり忘れカバンの中に入れたまま、次の日出勤する。ひょんな事からミラのカバンの中にあったはずの惚れ薬入り角砂糖を飲んでしまったアイドルのメンバー達。マネージャーとしてなんて事をしてしまったんだと後悔するミラ。しかし、それをきっかけにミラの恋が大きく動き出す。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
赤髪騎士と同僚侍女のほのぼの婚約話(番外編あり)
しろねこ。
恋愛
赤髪の騎士ルドは久々の休日に母孝行として実家を訪れていた。
良い年頃なのに浮いた話だし一つ持ってこない息子に母は心配が止まらない。
人当たりも良く、ルックスも良く、給料も悪くないはずなのに、えっ?何で彼女出来ないわけ?
時として母心は息子を追い詰めるものなのは、どの世でも変わらない。
ルドの想い人は主君の屋敷で一緒に働いているお喋り侍女。
気が強く、お話大好き、時には乱暴な一面すら好ましく思う程惚れている。
一緒にいる時間が長いと好意も生まれやすいよね、というところからの職場内恋愛のお話です。
他作品で出ているサブキャラのお話。
こんな関係性があったのね、くらいのゆるい気持ちでお読み下さい。
このお話だけでも読めますが、他の作品も読むともっと楽しいかも(*´ω`*)?
完全自己満、ハピエン、ご都合主義の作者による作品です。
※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる