41 / 46
41話
しおりを挟む
ソラサイド
この人はなんて嘘が下手な人なんだろ…
私は微かに震えるその背中を見つめながら思った。
私が車で伝えた時…
この人ならそう言うだろうなとは予想していたけど…
ジュイは私が想像していたよりもねぇさんのことを愛していたみたいで…人目もはばからず声を出して泣いていた。
*「ソラ…送ってもらえる?」
SR「うん…」
ねぇさんと一緒に寮を出て車に乗った瞬間…
ねぇさんは堰を切ったように泣き出した。
SR「ねぇさん………」
*「ごめん……」
SR「ねぇさん…本当後悔…しない?」
*「どの選択をしても後悔はすると思う…だけど私はあの子達を…ジュイを守れるなら…自分の恋心なんて捨てても構わない…それが本心であり…女としての覚悟なの…。」
それを聞いた時…気づいた。
この人の不器用すぎる女としての生き方に…。
SR「ねぇさん…事務所…辞めたりしないよね?」
私の問いかけにねぇさんは反応しなかった…
でも、私の中でそれがねぇさんの答えなんだろなって…この時感じた。
トウジサイド
あの騒ぎのあとねぇさんは寮でも言っていたようにジュイとの関係を会社に否定したが、ジュイはねぇさんとの関係に無言を貫き否定も肯定もすることはなかった。
アーティストとマネージャーが疑わしい行動をし、世間を騒がせた事に対してのねぇさんの処分は2カ月の謹慎とブルレのマネジャーをクビになり、アルバイトがする業務の事務処理へと移動が決定された。
俺たちはその処分にどうする事も出来ず会社から支持に従い今、目の前にある仕事をただこなしていく事しか出来なかった。
ジュイはねぇさんを自分の買ったばかりのマンションに住まわせるとあの後もずっと言い続けたけど、そんな無茶なことを事務所が許してくれるわけがなく、ねぇさんは安全のために実家へと戻っているとマネージャーのセイジさんから聞かされた。
あの騒ぎから1カ月後…
やっと騒ぎが落ち着き始め、ようやくオフをもらえた俺はあの場所へ向かった。
T「おばさん!こんにちは!ねぇさん…いる?」
「トウジくんよく来たわね~いるよ。すぐ連れてくるから二階で待ってて。」
俺は久しぶりにねぇさんに会うためねぇさんの実家を訪れた。
10分ぐらい経ったのだろうか?ゆっくりと扉が開き久しぶりのねぇさんの顔が見れて俺はどこかホッとした。
*「トウジ…」
T「ねぇさん久しぶりだね?元気…ではないよね?怪我の具合はどう?」
ねぇさんを見るの顔色は悪く少し以前より痩せた印象だった。
*「そんな事ないよ。うん…順調に治ってる。」
T「そっか……………。」
デビューしてからこんなに長くねぇさんと会わなかったことがなかった俺はなぜか、久しぶりに会うねぇさんにぎこちなくなってしまい、俺の心臓が素直にドキドキとする。
*「ねぇ、トウジ…もうここには来ちゃダメ…」
ねぇさんは少し引きずった笑顔を見せながらそんな悲しい事を言う。
T「なんで?俺のお気に入りの店なのになんで来ちゃダメなの?」
*「それは…………」
T「ねぇさん聞いてたんでしょう?俺が事務所で幹部の人たちとリノンの話してるとこ…俺ねぇさんが聞いてるの気づいてたよ。」
本当は俺と距離わ取ろうとするねぇさんが寂しくて堪らないのに、俺はわざと明るい笑顔をみせて俺の言葉を下を向きながら聞くねぇさんの顔を覗き込む。
*「ごめん…」
T「盗み聞きなんて…趣味悪いよ?俺がねぇさんのこと好きだからもうここには来るなって?」
*「………私…今まで気付かなくて…トウジに酷いこといっぱい言ったよね……」
ねぇさんの声は震えていて涙を堪えてるのが分かり、俺の方まで泣きそうになるのをギュッと拳を握り堪えた。
T「うん…言ったね…ぜーんぶジュイの事ばっかりでねぇさんはいつもジュイが特別だった。俺…ねぇさんのこと好きだけど好きだからこそジュイと幸せになって欲しかった…ジュイからの連絡…無視してるんだろ?」
テーブルの上に置いてあるねぇさんの手は微かに震えていて、1か月前よりも遥かにその手首はか細くなっていた。
*「うん…もう個人的に連絡はしないよ。」
T「このままでいいの?」
*「こんなことトウジに言うことじゃないんだけど、私ね?ジュイの事すごい好きみたい…好きすぎて苦しくて恋しくて…愛しい…」
T「なら…」
*「でもね…それ以上にステージで輝くジュイが好きなの。沢山の人の声援を受けて音楽に身を委ねてるジュイが好き…。だから…ジュイの邪魔は出来ない。輝き続けて欲しいから…」
T「邪魔って…邪魔なわけないだろ!?…意味分かんねぇよ…」
*「トウジには…分からなくていいんだよ。その意味…」
T「なんだよそれ…」
*「もし、いつかまた笑って会えるなら…その時にきっと…私が言ったその意味が分かるから…。」
T「もし、その時に…ジュイの横に知らない女がいても…笑って会えるのかよ…」
*「妬いちゃうかもね…」
ねぇさんはきっと今、心の中で泣いているのに俺には笑顔をみせてわざとらしく戯けてみせる。
T「バカじゃねぇの…?」
*「ほんと…バカだよね…いっそのことこの気持ちに気づかなかった方が…楽だったのにね……」
そう話すねぇさんに微かな違和感を感じ、この時のねぇさんは俺に何かを隠しているような気がした。
しかし、涙を堪えたねぇさんのその瞳はとても苦しそうなのに、どこか強くて逞しい目にも俺は見えたんだ。
つづく
この人はなんて嘘が下手な人なんだろ…
私は微かに震えるその背中を見つめながら思った。
私が車で伝えた時…
この人ならそう言うだろうなとは予想していたけど…
ジュイは私が想像していたよりもねぇさんのことを愛していたみたいで…人目もはばからず声を出して泣いていた。
*「ソラ…送ってもらえる?」
SR「うん…」
ねぇさんと一緒に寮を出て車に乗った瞬間…
ねぇさんは堰を切ったように泣き出した。
SR「ねぇさん………」
*「ごめん……」
SR「ねぇさん…本当後悔…しない?」
*「どの選択をしても後悔はすると思う…だけど私はあの子達を…ジュイを守れるなら…自分の恋心なんて捨てても構わない…それが本心であり…女としての覚悟なの…。」
それを聞いた時…気づいた。
この人の不器用すぎる女としての生き方に…。
SR「ねぇさん…事務所…辞めたりしないよね?」
私の問いかけにねぇさんは反応しなかった…
でも、私の中でそれがねぇさんの答えなんだろなって…この時感じた。
トウジサイド
あの騒ぎのあとねぇさんは寮でも言っていたようにジュイとの関係を会社に否定したが、ジュイはねぇさんとの関係に無言を貫き否定も肯定もすることはなかった。
アーティストとマネージャーが疑わしい行動をし、世間を騒がせた事に対してのねぇさんの処分は2カ月の謹慎とブルレのマネジャーをクビになり、アルバイトがする業務の事務処理へと移動が決定された。
俺たちはその処分にどうする事も出来ず会社から支持に従い今、目の前にある仕事をただこなしていく事しか出来なかった。
ジュイはねぇさんを自分の買ったばかりのマンションに住まわせるとあの後もずっと言い続けたけど、そんな無茶なことを事務所が許してくれるわけがなく、ねぇさんは安全のために実家へと戻っているとマネージャーのセイジさんから聞かされた。
あの騒ぎから1カ月後…
やっと騒ぎが落ち着き始め、ようやくオフをもらえた俺はあの場所へ向かった。
T「おばさん!こんにちは!ねぇさん…いる?」
「トウジくんよく来たわね~いるよ。すぐ連れてくるから二階で待ってて。」
俺は久しぶりにねぇさんに会うためねぇさんの実家を訪れた。
10分ぐらい経ったのだろうか?ゆっくりと扉が開き久しぶりのねぇさんの顔が見れて俺はどこかホッとした。
*「トウジ…」
T「ねぇさん久しぶりだね?元気…ではないよね?怪我の具合はどう?」
ねぇさんを見るの顔色は悪く少し以前より痩せた印象だった。
*「そんな事ないよ。うん…順調に治ってる。」
T「そっか……………。」
デビューしてからこんなに長くねぇさんと会わなかったことがなかった俺はなぜか、久しぶりに会うねぇさんにぎこちなくなってしまい、俺の心臓が素直にドキドキとする。
*「ねぇ、トウジ…もうここには来ちゃダメ…」
ねぇさんは少し引きずった笑顔を見せながらそんな悲しい事を言う。
T「なんで?俺のお気に入りの店なのになんで来ちゃダメなの?」
*「それは…………」
T「ねぇさん聞いてたんでしょう?俺が事務所で幹部の人たちとリノンの話してるとこ…俺ねぇさんが聞いてるの気づいてたよ。」
本当は俺と距離わ取ろうとするねぇさんが寂しくて堪らないのに、俺はわざと明るい笑顔をみせて俺の言葉を下を向きながら聞くねぇさんの顔を覗き込む。
*「ごめん…」
T「盗み聞きなんて…趣味悪いよ?俺がねぇさんのこと好きだからもうここには来るなって?」
*「………私…今まで気付かなくて…トウジに酷いこといっぱい言ったよね……」
ねぇさんの声は震えていて涙を堪えてるのが分かり、俺の方まで泣きそうになるのをギュッと拳を握り堪えた。
T「うん…言ったね…ぜーんぶジュイの事ばっかりでねぇさんはいつもジュイが特別だった。俺…ねぇさんのこと好きだけど好きだからこそジュイと幸せになって欲しかった…ジュイからの連絡…無視してるんだろ?」
テーブルの上に置いてあるねぇさんの手は微かに震えていて、1か月前よりも遥かにその手首はか細くなっていた。
*「うん…もう個人的に連絡はしないよ。」
T「このままでいいの?」
*「こんなことトウジに言うことじゃないんだけど、私ね?ジュイの事すごい好きみたい…好きすぎて苦しくて恋しくて…愛しい…」
T「なら…」
*「でもね…それ以上にステージで輝くジュイが好きなの。沢山の人の声援を受けて音楽に身を委ねてるジュイが好き…。だから…ジュイの邪魔は出来ない。輝き続けて欲しいから…」
T「邪魔って…邪魔なわけないだろ!?…意味分かんねぇよ…」
*「トウジには…分からなくていいんだよ。その意味…」
T「なんだよそれ…」
*「もし、いつかまた笑って会えるなら…その時にきっと…私が言ったその意味が分かるから…。」
T「もし、その時に…ジュイの横に知らない女がいても…笑って会えるのかよ…」
*「妬いちゃうかもね…」
ねぇさんはきっと今、心の中で泣いているのに俺には笑顔をみせてわざとらしく戯けてみせる。
T「バカじゃねぇの…?」
*「ほんと…バカだよね…いっそのことこの気持ちに気づかなかった方が…楽だったのにね……」
そう話すねぇさんに微かな違和感を感じ、この時のねぇさんは俺に何かを隠しているような気がした。
しかし、涙を堪えたねぇさんのその瞳はとても苦しそうなのに、どこか強くて逞しい目にも俺は見えたんだ。
つづく
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

悲恋 (一部BL要素含む)
樺純
恋愛
王が世を支配する時代。
トナとコハクは愛し合いながら穏やかな日々を過ごしていました。
そんな時、トナとコハクの住む町に王が現れます。
トナは王に身染められ、愛するコハクと別れ胸を痛めながら王宮に入る事になります。
王宮に入ったトナに次々と起こる試練。
トナを失い悲しみに暮れるコハク。
そんな二人に幸せな日々は訪れるのでしょうか…?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる