あなたの虜

樺純

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33話

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ジュイサイド

日本に着き寮に送られたが、なぜかトウジくんだけがミラに話があると言って2人で事務所に行った。

そんな2人の行動がやっぱり気になった俺は2人のあとを追いかけるようにしてタクシーに乗り込み事務所へ向かった。

すると事務所の中で偶然、リノンちゃんと会い話しかけられた。

リ「ジュイくん…朝は突然、部屋に押しかけてごめんね?」

J「いや、大丈夫だよ…俺ちょっと急いでるからごめんね。」

そう言ってリノンちゃんを交わそうとするとリノンちゃんが俺の腕を掴んで止めた。

リ「ジュイくんちょっと待って…実はさっきね?ミラさんとトウジくんが寄り添いながら仲良くトウジくんの作業室に入っていったの……私ね…あの写真の事もあったからまさかと思って後をついて行って耳を澄ませてみたの…そしたらね…これ…聞いてくれる?」

そう言ってリノンちゃんは俺にスマホを渡すとそのスマホから音声が流れ出した。


*「ヒゲ…生えてるよ。」

T「うん。今日剃ってないからね?ねぇさんはヒゲない俺の方が好き?」

*「どっちも好きよ…」

そこから流れる声は間違いなくミラとトウジくんの声だった。

どっちも好きってなんだよそれ…

ミラとトウジくんの事を疑ってしまった俺の心はその録音を聞いて確信になっていく。

ミラは俺だけじゃなく、トウジくんともそういう関係を持っているんだと。

リ「これってやっぱりそういう事…だよね?パパの会社の記者に噂で聞い事あるんだけど、ミラさんね?結構、男関係激しいみたい…業界では一般人なのに有名なんだって。ジュイくんも気をつけてね…こんな人に目をつけられて困るのはジュイくんなんだから…なんかあったら相談…乗るからね?」

そう言ってリノンちゃんは心配そうに俺の肩をポンポンと叩いてその場を離れた。

そして、俺はリノンちゃんからその真実を聞かされていなかったら、何も知らないままミラを疑う事もなく過ごしていたに違いない。

自分だけが本気でミラと向き合っていて馬鹿みたいだと思った俺は、ミラとトウジくんの所へ行くことなく、そのまま寮に戻り布団の中へ潜り込んだ。


次の日

こんな時に限って笑いたくもないのにバラエティー番組の収録がある。

体調もまだ悪く、ミラとトウジくんのことを考えたらモヤモヤと気になりすぎて一睡も出来なかった。

楽屋に入るとすぐにミラを見つけたが、ミラのその視線の先にはトウジくんがいて、ミラは切ない顔をしたままトウジくんを見つめている。

ミラはあの時、俺のことを好きだと言ってだけど、もしかしたら俺は沢山いる遊びの男の中の1人でミラの本命はトウジくんのかもしれないと思った。

一人で悶々とそう考える俺の心臓はギュッと締め付けられるように苦しくて、トウジくんの元へ行こうとするミラを咄嗟に引き止めた。

J「…ミラ…ちょっと話したい。」

*「ここじゃ話せないよ。仕事が終わったら…ゆっくり話そう?ね?」

なんで、ここじゃ俺と話しできないの?

トウジくんに見られたら困るから?

俺と2人で話してる所、トウジくんに見られたら…嫌なの?

頭の中では言葉が次々と溢れてくるのに俺の口から出た言葉はただ一つだけだった。

J「トウジくんとも付き合ってるの?」

そんな事を言おうと思ったんじゃない。

なのに何故か俺の口は勝手にそう動いていた。

*「え?」

J「ほんとはトウジくんが好きなんだろ?」

俺の言葉にミラは目を大きく見開き、切なそうな目をし俺の瞳の奥を覗き込む。

やめろよ…そんな目…俺以外の男を想ってするなよ…

そんな感情が溢れてしまいそうになるのを俺はギュッと拳に力を入れて堪えた。

*「何言ってるのよ?とりあえず、仕事が終わったらゆっくり話そう?」

ゆっくり話すって何を?俺とのことはなかった事にしてくれとでも言うつもりかよ…そんなの…もう、今の俺には耐えられそうにない。そう思った俺はわざと突き放すようなことをミラに言ってしまった。

自分の弱い心を守るために。

J「触んなよ…男だったら誰でもいいのかよ!?」

ミラは一体、どんな目をして俺を見つめていたのかな…?

俺はミラに捨てられるのが怖くてミラの目が見れなかった。

そして、俺は鏡の前に座り涙が溢れないようにそっと目を閉じた。


ソラがヘアメイクをしてくれると思っていたら、突然リノンちゃんがヘルプとして来てくれて俺の髪をスタイリングしてくれた。

リノンちゃんは何を思ったかミラに手伝ってと言い始め、ミラは慣れない手つきでリノちゃんのヘルプに入っていた。

ミラの顔を見たら涙がでそうで俺はまた、ゆっくりと瞳を閉じたその時…

ミラの痛々しい声が部屋に響き渡り俺は一気に瞼を開ける。

*「熱っ!」

俺は慌てて立ち上がり振り返るとミラは顔を歪めてしゃがみ込んでいた。

…ミラ…!?

俺が手を差し出そうとした瞬間…

後ろからイチさんがミラを抱えるようにして洗面台へと連れて行き、俺はただその大きな背中をじっと見つめる事しかできなかったんだ。


つづく
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