ぼくはキミの守護霊さま。

樺純

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最終話

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真中ハヤテサイド

退院日

俺が退院する前に大家さんが用意してくれたマンションに先に引っ越していたコトハ。

俺は後から少しずつ荷物を移動させて引っ越しするのだが、今日からの生活は新しいマンションですることになっている。

今日はその新しいマンションにみんなで集まり、俺の退院祝いと引っ越しパーティーをする事になっている。

あれから俺はよくコトハにこの世を彷徨っていたあの数日間の話を聞かれるものの…

俺の記憶は目を覚ましたその日は鮮明に残っていたのに何故かその記憶は日増しに薄れていく。

すると、コトハは毎回のように「じゃ、私とのはじめてのえっちも忘れちゃったんだね!あれは私の大切な初体験なのに!!」とムキになって怒り半泣きになるから申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

確かに、薄れゆく記憶の中でコトハとセックスしたような気もするが、彷徨っていた時の記憶だけが薄れていくのは自分でもどうしようもないので、拗ねるコトハに必死でご機嫌を取ることくらいしか俺には出来なかった。

K「あの感動を返して欲しい。」

H「しょうがないじゃん。薄れていくんだもん。でもなんか、あの時はすごい不思議な感覚だったな……。」

そう、その記憶自体は薄れていくのにとても不思議な体験をしたという事だけはしっかりと頭に焼き付いていた。

幸いなことに怪我の後遺症もなく退院した俺は今はもう、元気が有り余っていてほんとはすぐにでもコトハと1つになりたい…この生身の人間の身体で。

しかし、そんな悶々とした気持ちはコトハには見せない。

だってあんな怖い思いをしたばかりでそんな気にもならないとコトハは思っているかもしれないから。

だから、俺は手を繋ぐことで我慢していると部屋の鍵を開けようとしたコトハが突然、固まり不思議に思った俺はコトハの顔を覗き込む。

H「コトハ…?」

俺がそう言ってもコトハからの反応はなく、心配になった俺がコトハの両腕を引っ張って自分の方に向かせると、コトハは少し俺から目を逸らしチラチラと俺を見ながら言った。

K「今日さ……みんなが帰ったら……シたい……ダメ…?」

その言葉を聞いた俺はドキッと胸を弾ませ既に体が火照り始める。

すると、コトハは俺にギュッと抱きつき俺の首筋に擦り擦りと頬擦りをした。

K「お願い……ハヤテ……」

俺はそうおねだりをするコトハに我慢が出来ず口付けをした。

俺の口付けを受け入れてくれたコトハの舌と俺の舌が絡まり合い、廊下に唾液の混ざり合う卑猥な音が響き俺の芯を疼かせる。

はぁ…もう正直、退院祝いや引っ越しパーティーより先に今すぐコトハを抱きたい。

そう頭の中で考えながら夢中で互いの唇を啄んでいると……

勢いよく玄関の扉が開き中から飛んできたのは幽霊となり彷徨っていた俺を毛嫌いしていたジョウさんだった。

J「はぁ!?こんなとこで何やってんだ!!お前が俺の可愛いコトハに取り憑いて処女を奪ったハヤテだな!?俺がその息の根を止めて本当の幽霊にしてやる!!!!」

ジョウさんがピッタリとくっ付き離れない俺とコトハを引き剥がし、俺の首を絞めようとしてくるのとコトハが必死になってそんなジョウさんを止めてくれた。

K「もう!ジョウ!ハヤテは私の彼氏なの!!離して!!」

コトハの口から「彼氏」というフレーズが出て嬉しい俺がデレっとしていると、コトハは恥ずかしそうに俺の唇を人差し指でぷにぷにと触れながら言った。

K「彼氏で…間違いないよね?それとも……ただのボディーガードとして私と一緒に住むつもりだった?」

コトハは俺を揶揄うように笑いながらそう言い、俺はその唇にチュウとキスをするとコトハは俺と手を繋ぎ合わせ、いまだに俺たちの横でピーチクパーチクと騒いでいるジョウさんを無視して部屋の中へと入って行った。

J「まだ話は終わってなーーーーい!!」

コトハは慣れたように俺に絡んでくるジョウさんを引き剥がしながら中へと入っていく。

コトハは戸惑っている俺を引っ張って中に入っていくと、リビングにはニジスケさんとヨウアさんが落ち着いた顔をして座っていた。

Y「やっほ。どうやらハヤテ、私たちのこと忘れてるらしいじゃない?」

ヨウアさんがそう言って笑っていて俺は迷惑をかけたというのにコトハのこと以外、記憶が薄れてしまい覚えていないのが申し訳なく感じた。

K「もう、ヨウアちゃんまでハヤテのこといじめないで。入院してる間に忘れちゃった事は私から話してハヤテに伝えてるから。」

そう、俺が忘れてしまった事は全てコトハから聞いているから、彷徨っている時ニジスケさんやヨウアさんとしたやり取りまでは覚えていなくても、最低限のことはコトハから教えてもらっていた。

H「すいません。ご迷惑をおかけしたのに…」

K「そんなこといいの!!ほら早く座って座って!!」

俺の手を引いて俺と座ろうとするコトハの手を引き離し、俺とコトハの間に割って入るジョウさんに俺は呆気に取られる。

J「俺はまだ、この幽霊との交際認めてないからな!!」

ジョウさんはそう言いながらコトハに頬ずりをしてギュッと抱きしめるから俺は慌てて2人を引き離そうとする。

H「ちょっと待ったぁぁぁあぁぁあ!!コトハは俺のモノなんですから!!例え親友のジョウさんでもダメですーーー!!」

俺がそう泣き叫ぶとニジスケさんとヨウアさんは冷ややかな目で俺たちを見つめる。

しかし、奪い合いをされているコトハは何故かすごく嬉しそうで、幸せそうに頬をあげていて俺とジョウさんを同時にギュッと抱きしめた。

K「もう~2人とも私のこと大好きなんだから~でも私はハヤテが好き~」

コトハはそう叫びながら俺のほっぺにチュウとするとジョウさんは俺にもして!なんて言うから俺はコトハにバレないようにジョウさんを突き飛ばした。

すると、ジョウさんはそれが気に触ったようで鬼のような顔をして俺を蹴り飛ばし、俺がコトハから離れてしまうとジョウさんはギュッとコトハを抱きしめて言った。

J「コトハからはボディーガードだから安心だって聞かされてたけど、どこがだよ。こんなやつといたらコトハの体が心配!!取り憑いてた幽霊の時の方がまだ良かったんじゃない?俺には見えなかったし。」

H「俺は取り憑いてたんじゃなくてコトハの守護霊になって守ってたんです!!これからはボディーガードじゃなく恋人として守るんです!!」

俺がジョウさんの腕の中にいるコトハの腕を引っ張ってジョウさんに見せつるようにギュッと抱きしめてそう言えば、ニジスケさんとヨウアさんは呆れたような顔をしてため息をつき、ジョウさんは鬼のような顔をしてキッチンの方へと消えていく。

Y「はぁ~もうイチャイチャしちゃってさ~目障りだわ~ニジスケ、塩!塩撒いて塩!」

N「幽霊のときでも塩でも消えなかったんだから意味ないよ~」

ニジスケさんとヨウアさんがまるで自分たちの家かのようにソファに座ってそう言うと、いつの間にか俺の後ろに立っていたジョウさんが「喰らえ!!」と叫びながら勢いよく俺の顔に何かをぶつけた。

げ…この感触…まさか…

ヌト…っと顔から滑り落ち俺は恐る恐る自分の顔に手を持っていくと…

俺は見事に顔面にクリームを喰らわせられた。

俺は手で顔に付いたクリームを取るとクリーム越しに見えたのはコトハの呆気にとられた顔とニジスケさんとヨウアさんの笑った顔。

そして、その横には何故かスッキリとしたジョウさんが飛び散ったクリームをTシャツに付けながら言った。

J「はぁ~これでスッキリした~幽霊のくせに俺の可愛いコトハに手を出した罰!!さぁ!!パーティー始めますか!!」

そして、みんなはクリームまみれの俺を放置し…

ジョウさんはコトハと手を繋ぎ豪華な料理が並ぶ食卓に連れて行こうとすると、コトハは少し笑いながらジョウさんの手を離して俺の元に駆け寄り飛びつくようにして抱きついた。

K「んふふwハヤテ、真っ白で本当に幽霊みたい。」

H「ひど…コトハまでそんなこと言って。」

K「でも私は幽霊でも人間でも好きになったのはハヤテだけ。」

コトハはそう言うと、俺のクリームだらけの唇をペロっと舐め、ニヤッと笑うと俺の唇を塞いだ。

あの頃

恋が出来ないと腐っていた自分に

俺は言ってやりたい。

今、はじめて心が震えるような恋をしていると。

そして、はじめて愛した人にお前はちゃんと愛されていると。

ゆっくりと唇を離したコトハは俺の唇を親指でなぞり天使のような笑顔を見せながら言った。

ハヤテが幽霊になったから…

私たちは運命のように結ばれたけど…

初めて好きになった人があのまま幽霊にならず…

ただ生きててくれて本当によかった……

と。

その目には微かにダイヤモンドのような涙が光っていて、俺は一生、この命が尽きるまでこの人を守ろうと心に決めた。

終わり
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