36 / 39
第三十六話
しおりを挟む
山城コトハサイド
取り乱すキミくんを今まで何度も見ていたが、警察官に諭されてもまだ、私に牙を剥くような顔をして取り乱すキミくんにはさすがに精神にこたえた。
僅かながらにも私たちには親友だった時期があったのだから。
私たちは警察官と一緒にマンションに上がりハヤテの部屋の前に立つ。
警察官が鍵を開け、ゆっくりと扉を開けて声をかけながら中に入っていき、私もついて中に入ろうとすると1人の警察官にパッと腕で止められた。
私は何が起きたのか分からずその警察官の視線の先を辿るとそこには…
K「ハヤテ……!!」
血だらけのハヤテがグッタリと床に倒れていた。
咄嗟に隣にいるはずのハヤテを見るとそこにはもうハヤテの姿はなく私は一心不乱に周りを見渡しハヤテを探すがもう…いなかった。
K「ハヤテ…」
警察官がハヤテの首に指先を置き無線で応援と緊急車両を呼ぶ。
K「ハヤテは大丈夫ですよね!?生きてますよね!?」
私がそう叫ぶと警察官は頷いた。
「微かに脈はある…」
警察官のその声を聞いた私は頭がぼーっとしそのまま意識を失った。
コトハ…!!コトハ!!
そう呼ばれる声が聞こえて目を一気に開けると、そこには真っ白な見覚えのない天井が見えて、ゆっくりと目を動かすと心配そうな顔をしたヨウアちゃんがいた。
Y「いきなりぶっ倒れるから焦った…大丈夫?」
K「う…うん…」
あれは夢だったのだろうか?
血だらけのハヤテがぐったりと倒れている姿がフラッシュバックし私の心臓は激しく動悸する。
K「ヨウアちゃん…ハヤテは…?」
ヨウアちゃんの表情は固いままで微かに私の手が震える。
ヨウアちゃんはその手をギュッと握り私に優しく微笑んだ。
Y「会いに行こうか…」
ヨウアちゃんはそう呟きふらつく私を車椅子に乗せてゆっくりと歩いて行く。
大丈夫…大丈夫…
私は何度も自分で自分を言い聞かせた。
そして、病室の扉の前に車椅子が止まった。
病室番号の下には真中ハヤテと名前が書いてあり、私はハヤテが生きているという現実に涙が溢れ出す。
ヨウアちゃんは無言のまま扉を開けると車椅子を押して中に入っていく。
微かに白いカーテンが揺れてその奥にハヤテがいるのだと思うと早く顔を見たいと思う私の気持ちが焦るばかり。
そして、カーテンをヨウアちゃんが開けると…
そこには頭に包帯が巻かれたハヤテが眠っていた。
K「ハヤテ……」
痛々しいその姿を見て涙が溢れ出し、ゆっくりと立ち上がるとベッドに手を置いてハヤテに近づきハヤテの頬をそっと撫でる。
K「ハヤテ…コトハだよ…」
そう耳元で囁くとハヤテの瞼はピクピクと痙攣し、ゆっくりと瞼が開く。
K「ハヤテ…ハヤテ!!」
私の呼びかけにハヤテは力なく笑い唇を動かした。
H「俺…生きてた…」
ハヤテのその言葉に私は何度も頷く。
K「ハヤテ…私のこと分かる?…私のこと…覚えてる?」
あの出来事は私の幻だったのだろうか?
いや、違うあれは現実に起きていた。
しかし、昏睡状態だったハヤテは私とのあの日々を覚えているのだろうか?
そう微かな不安を抱えながら問いかける。
H「俺の大好きな人…覚えてるよ…全部覚えてる……」
そう言ったハヤテの目から一筋の涙がこぼれ落ち、私はハヤテギュッと抱きしめた。
つづく
取り乱すキミくんを今まで何度も見ていたが、警察官に諭されてもまだ、私に牙を剥くような顔をして取り乱すキミくんにはさすがに精神にこたえた。
僅かながらにも私たちには親友だった時期があったのだから。
私たちは警察官と一緒にマンションに上がりハヤテの部屋の前に立つ。
警察官が鍵を開け、ゆっくりと扉を開けて声をかけながら中に入っていき、私もついて中に入ろうとすると1人の警察官にパッと腕で止められた。
私は何が起きたのか分からずその警察官の視線の先を辿るとそこには…
K「ハヤテ……!!」
血だらけのハヤテがグッタリと床に倒れていた。
咄嗟に隣にいるはずのハヤテを見るとそこにはもうハヤテの姿はなく私は一心不乱に周りを見渡しハヤテを探すがもう…いなかった。
K「ハヤテ…」
警察官がハヤテの首に指先を置き無線で応援と緊急車両を呼ぶ。
K「ハヤテは大丈夫ですよね!?生きてますよね!?」
私がそう叫ぶと警察官は頷いた。
「微かに脈はある…」
警察官のその声を聞いた私は頭がぼーっとしそのまま意識を失った。
コトハ…!!コトハ!!
そう呼ばれる声が聞こえて目を一気に開けると、そこには真っ白な見覚えのない天井が見えて、ゆっくりと目を動かすと心配そうな顔をしたヨウアちゃんがいた。
Y「いきなりぶっ倒れるから焦った…大丈夫?」
K「う…うん…」
あれは夢だったのだろうか?
血だらけのハヤテがぐったりと倒れている姿がフラッシュバックし私の心臓は激しく動悸する。
K「ヨウアちゃん…ハヤテは…?」
ヨウアちゃんの表情は固いままで微かに私の手が震える。
ヨウアちゃんはその手をギュッと握り私に優しく微笑んだ。
Y「会いに行こうか…」
ヨウアちゃんはそう呟きふらつく私を車椅子に乗せてゆっくりと歩いて行く。
大丈夫…大丈夫…
私は何度も自分で自分を言い聞かせた。
そして、病室の扉の前に車椅子が止まった。
病室番号の下には真中ハヤテと名前が書いてあり、私はハヤテが生きているという現実に涙が溢れ出す。
ヨウアちゃんは無言のまま扉を開けると車椅子を押して中に入っていく。
微かに白いカーテンが揺れてその奥にハヤテがいるのだと思うと早く顔を見たいと思う私の気持ちが焦るばかり。
そして、カーテンをヨウアちゃんが開けると…
そこには頭に包帯が巻かれたハヤテが眠っていた。
K「ハヤテ……」
痛々しいその姿を見て涙が溢れ出し、ゆっくりと立ち上がるとベッドに手を置いてハヤテに近づきハヤテの頬をそっと撫でる。
K「ハヤテ…コトハだよ…」
そう耳元で囁くとハヤテの瞼はピクピクと痙攣し、ゆっくりと瞼が開く。
K「ハヤテ…ハヤテ!!」
私の呼びかけにハヤテは力なく笑い唇を動かした。
H「俺…生きてた…」
ハヤテのその言葉に私は何度も頷く。
K「ハヤテ…私のこと分かる?…私のこと…覚えてる?」
あの出来事は私の幻だったのだろうか?
いや、違うあれは現実に起きていた。
しかし、昏睡状態だったハヤテは私とのあの日々を覚えているのだろうか?
そう微かな不安を抱えながら問いかける。
H「俺の大好きな人…覚えてるよ…全部覚えてる……」
そう言ったハヤテの目から一筋の涙がこぼれ落ち、私はハヤテギュッと抱きしめた。
つづく
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる