15 / 39
第十五話
しおりを挟む
真中ハヤテサイド
女と嫌な別れ方をして後味の悪い俺は、山城さんの部屋の鍵を開ける為に電話した鍵屋に連絡をし明日、我が家の鍵をつけかけてもらうことにした。
女から合鍵を返してもらったものの他にも作られていたらシャレにならないと思ったから。
そんな生き方しかできない自分に嫌気がさし、微かに残るような気がする山城さんの香りを忘れるため俺がベランダに出ると、山城さんの声と男性の声が隣から聞こえてきて俺の心臓がズキっと痛む。
その会話の内容はどう聞いてもカップルがイチャつき体を突き合っているような会話の内容で、俺は聞きたくないと思うのに何故かその声に耳を傾けてしまう。
楽しそうな山城さんと男性の声に微かに芽生えたのは嫉妬という気持ち。
数時間前まで俺の部屋にいたはずの山城さんは今、他の男といる。
もし、俺が鍵屋に電話しなかったら山城さんは今でも俺の部屋にいたかもしれないのに……
そう考えると勢いに任せて山城さんにあんな淫らな事をしてしまった自分に腹が立ち、とぼとぼと一人寂しく部屋の中に戻った。
次の日
コンビニに行こうと玄関を出ると山城さんの家の玄関の前には昨日の男性と一緒に食べたのだろうか?中華料理店の割引チケットが一枚落ちていた。
今頃、山城さんはその男とベッドの中にいるのだろうか?
自分で自分の首を絞めるような事を考えながら、山城さんの部屋の前を通り過ぎようとすると、突然山城さんの玄関が開き中から山城さんが勢いよく飛び出してきて俺たちはバチっと目があってしまった。
気まずさから視線を逸らし頭を下げて俺は足早にエレベーターの前に行くと山城さんもあっ…とした顔をして俺に軽く頭を下げて俺の少し後ろを歩く。
しばらく待っているとエレベーターが到着し、俺が乗り込むと山城さんは乗り込んでこようとしなかった。
山城さんのそんな行動が俺とは密室にいたくないと言われているみたいで俺は少し傷ついた。
H「乗らないんですか?」
K「え…あ…乗ります…」
そうして山城さんは慌てるようにしてエレベーターに乗り込むと、俺たちは黙ったままエレベーターが一階に降りるのを待った。
すると突然…
5階あたりに差し掛かるとエレベーターが激しく揺れ電気がバチバチと点滅し始め、思わず俺はエレベーターの壁にもたれ掛かった。
慌てながら山城さんを見ると怯えた山城さんはしゃがみ込み耳を塞いでいる。
K「なに!?こわい!!」
H「落ち着いてください…大丈夫なんで!」
そう言ってエレベーターの緊急ボタンを押すが、なかなか繋がらずエレベーターはまた激しく揺れとうとう電気は消えてしまった。
K「ひっ…こわい…」
薄明かりで見える山城さんは今にも泣き出しそうで、寄り添ってあげたい気持ちは山々だが、昨日のこともある俺からしてみればどうしてあげる事もできず、ただエレベーターという密室で少し距離をとり見つめることしか出来ない。
何度、緊急ボタンを押しても繋がらずスマホを取り出してみるが、そこは何故か圏外になっていて、俺はどうすればいいのか分からずその場にしゃがみ込んだ。
すると、少し離れた所でしゃがんでいた山城さんが俺に声を掛けてきた。
K「…ッ…真中さん…」
H「なんですか?」
K「そばに行ってもいいですか?」
山城さんから出たまさかの言葉に驚いた俺は返事をする事ができない。
K「ご…ごめんなさい…いやですよね。私、暗いところが苦手で…ごめんなさい変なこと言って…」
山城さんはそう言って下を向くので、俺は何も言わずスッと山城さんの横に移動し、自分の肩を微かに山城さんの肩に当てた。
どんなに待っても助けが来る気配がなく、ついに俺たちは床に座り込みただぼんやりと薄明かりの中で過ごす。
ストーカー被害に遭っていた山城さんは暗闇がよほど怖いのか、微かに当たる肩が震えていて俺はそんな山城さんが少しでも楽な気持ちになればいいと思いながら話をし始めた。
つづく
女と嫌な別れ方をして後味の悪い俺は、山城さんの部屋の鍵を開ける為に電話した鍵屋に連絡をし明日、我が家の鍵をつけかけてもらうことにした。
女から合鍵を返してもらったものの他にも作られていたらシャレにならないと思ったから。
そんな生き方しかできない自分に嫌気がさし、微かに残るような気がする山城さんの香りを忘れるため俺がベランダに出ると、山城さんの声と男性の声が隣から聞こえてきて俺の心臓がズキっと痛む。
その会話の内容はどう聞いてもカップルがイチャつき体を突き合っているような会話の内容で、俺は聞きたくないと思うのに何故かその声に耳を傾けてしまう。
楽しそうな山城さんと男性の声に微かに芽生えたのは嫉妬という気持ち。
数時間前まで俺の部屋にいたはずの山城さんは今、他の男といる。
もし、俺が鍵屋に電話しなかったら山城さんは今でも俺の部屋にいたかもしれないのに……
そう考えると勢いに任せて山城さんにあんな淫らな事をしてしまった自分に腹が立ち、とぼとぼと一人寂しく部屋の中に戻った。
次の日
コンビニに行こうと玄関を出ると山城さんの家の玄関の前には昨日の男性と一緒に食べたのだろうか?中華料理店の割引チケットが一枚落ちていた。
今頃、山城さんはその男とベッドの中にいるのだろうか?
自分で自分の首を絞めるような事を考えながら、山城さんの部屋の前を通り過ぎようとすると、突然山城さんの玄関が開き中から山城さんが勢いよく飛び出してきて俺たちはバチっと目があってしまった。
気まずさから視線を逸らし頭を下げて俺は足早にエレベーターの前に行くと山城さんもあっ…とした顔をして俺に軽く頭を下げて俺の少し後ろを歩く。
しばらく待っているとエレベーターが到着し、俺が乗り込むと山城さんは乗り込んでこようとしなかった。
山城さんのそんな行動が俺とは密室にいたくないと言われているみたいで俺は少し傷ついた。
H「乗らないんですか?」
K「え…あ…乗ります…」
そうして山城さんは慌てるようにしてエレベーターに乗り込むと、俺たちは黙ったままエレベーターが一階に降りるのを待った。
すると突然…
5階あたりに差し掛かるとエレベーターが激しく揺れ電気がバチバチと点滅し始め、思わず俺はエレベーターの壁にもたれ掛かった。
慌てながら山城さんを見ると怯えた山城さんはしゃがみ込み耳を塞いでいる。
K「なに!?こわい!!」
H「落ち着いてください…大丈夫なんで!」
そう言ってエレベーターの緊急ボタンを押すが、なかなか繋がらずエレベーターはまた激しく揺れとうとう電気は消えてしまった。
K「ひっ…こわい…」
薄明かりで見える山城さんは今にも泣き出しそうで、寄り添ってあげたい気持ちは山々だが、昨日のこともある俺からしてみればどうしてあげる事もできず、ただエレベーターという密室で少し距離をとり見つめることしか出来ない。
何度、緊急ボタンを押しても繋がらずスマホを取り出してみるが、そこは何故か圏外になっていて、俺はどうすればいいのか分からずその場にしゃがみ込んだ。
すると、少し離れた所でしゃがんでいた山城さんが俺に声を掛けてきた。
K「…ッ…真中さん…」
H「なんですか?」
K「そばに行ってもいいですか?」
山城さんから出たまさかの言葉に驚いた俺は返事をする事ができない。
K「ご…ごめんなさい…いやですよね。私、暗いところが苦手で…ごめんなさい変なこと言って…」
山城さんはそう言って下を向くので、俺は何も言わずスッと山城さんの横に移動し、自分の肩を微かに山城さんの肩に当てた。
どんなに待っても助けが来る気配がなく、ついに俺たちは床に座り込みただぼんやりと薄明かりの中で過ごす。
ストーカー被害に遭っていた山城さんは暗闇がよほど怖いのか、微かに当たる肩が震えていて俺はそんな山城さんが少しでも楽な気持ちになればいいと思いながら話をし始めた。
つづく
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる