ぼくはキミの守護霊さま。

樺純

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第十三話

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真中ハヤテサイド

山城さんが帰ってから俺は今までの人生を振り返った。

誰かと恋人になることに違和感を覚えたのは学生の頃。

いいな…と思い付き合ったはずなのに恋人になった途端、その気持ちは冷めていき束縛され監視されることに疲れ果てた俺は相手とすぐに別れた。

いわゆる蛙化現象ってやつ。

それからだろうか?

特定の相手を作ることなく適当な割り切った相手で性欲を処理し始めたのは…

好きでもない相手だったとしても行為そのものは気持ちいいし、相手を気遣ったりする事も必要ないし、嫌われたりしないかと不安に思うこともなくすごく気楽だった。

周りはそんな俺を見てちゃんと恋をしろ好きな相手を見つけろとうるさかったけど、俺には好きだと思える相手もこの人と一緒にいたいと思える相手とも出会うことはなかったし、これから先も出会うこともないと思っていた。

山城さんと出会うまで。

山城さんは独特な魅力で俺を惹きつける。

目が離せないほど俺を夢中にさせるし、俺に気があるのかとその気にさせる。

なのにふとした時に壁を感じさせてまた、さらに俺を虜にしていく。

山城さんが帰った部屋で1人になった俺は大きなため息と同時に頭を抱えた。

山城さんにはその気はなくて、俺が勝手に惚れてキスまでしてしまってる時点で…

ストーカーと変わんないじゃん…

でもあの時の山城さんは間違いなくキスしてって俺に言ったはず…

いやあれは幻聴だったのか?

興奮した勢いで山城さんにしてしまった行動に俺は激しく後悔しソファに項垂れた。

気づいたらそのままソファで眠っていたのかスマホからの着信音で目が覚めた。

そこには縁を切ったはずのセフレの女の名前が表示されていてウザッと思いながらその着信を取る。

H「なに?俺らもう終わったはずだけど?」

「荷物…置いてあるの取りに行ってもいい?それ取りに行ったら終わりにするから…」

そう言われて部屋の中に目をやると女の私物が何個かあり、それを置いて行った女にもそれに今の今まで気付かなかった自分自身にも苛立ちを覚えた。

H「分かった。」

それから数分で女が来たことを知らせるインターホンが鳴り、俺が出るとその女は何を思ったのか俺に突然抱きついてきてそのまま玄関の中へと入ってきた。

H「何のつもりだよこれ…」

俺の首に巻きついた女の手を振り払おうとするが女はギュッと力を入れて離さず泣きはじめた。

1番面倒なことになってしまった。

こういうのが嫌で恋人を作らず都合の良い身体だけの相手を作ったはずなのに……

なぜか目の前にいる女はまるで恋人気取りで俺を自分のモノのように支配しようとする。

H「合鍵返して?」

俺がそう言えば渋々俺に合鍵を差し出した。

H「荷物…まとめておいたから。じゃな、今までありがとう。」

無理矢理、女の手を離し紙袋にまとめておいた荷物を突き出して女に持たせた。

「なんで?何がダメだった?言ってくれたら直すから!なんでもするからお願い!」

そう泣いて俺に縋り付く女の背中を押して玄関から外に追い出す。

H「そういうのが無理なんだ。じゃ。」

そう言って俺は扉を閉めると普段は使わない2個目の鍵とチェーンを閉めた。

山城さんとどうこうなるなんてもう、不可能に等しいのに女と縁を切って何の意味があるのだろう…

俺はそんなことを思いながら部屋に戻ると冷蔵庫を開け立ったままビールを一気に飲み干した。

つづく
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