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1話

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エニシサイド


僕の恋人は朝が弱い。


僕自身も朝がとても弱いのだが、僕の恋人は僕に朝起こしてもらうためにわざと僕よりも早く起きない事を僕は知っている。


アラームが何度も鳴りようやく目が覚めた僕が目を擦りながら横をみると、僕の恋人は嬉しそうに顔をほころばせながらまぶたを閉じで僕に起こしてもらうのを今か今かと待っている。


E「ヒュウ、起きて…朝だよ。」


優しい声でそう起こしても僕の恋人は一度では起きない。


そう、毎朝これをしないと僕の恋人は起きないのだ。


E「もう…しょうがないな…」


そう言いながら僕は恋人の目にかかる前髪をそっと横に流し、チュウと瞼に唇を押し当てるとようやく僕の恋人は目を覚ませる。


H「ん~よく寝た!!おはよエニシ。」

E「おはよ。」


そうして僕たちはチュウと目覚めのキスをしてようやく朝が始まる。


僕の恋人は食いしん坊なのに料理がとても苦手だ。


お玉をとってと言ってるのにしゃもじをとるくらい苦手だ。


唯一、出来るのは料理をいれる可愛いお皿を選ぶこと。


だから、必然的に僕が料理上手になっていく。


でもそれを負担に感じたことは一度もない。


自分の作った料理を幸せそうに頬をくらませ食べてくれる恋人が愛しいし、僕自身が料理に興味があるから。


H「エニシの作るミートスパゲッティとチキンソテーは最高!!」


僕の恋人はミートソースで唇を赤く染めながら僕に親指を立ててモグモグと朝ごはんを食べている。


たまに意地悪して僕が朝ごはん作らな~い。なんて言うと僕の恋人はいつも可愛い愛嬌を見せて僕に料理を作ってもらおうと必死だ。


大好きな鶏肉すら焼けなくてどうやって生きていくの?って僕が問いかけると僕の恋人は自慢気にこう言うんだ。


H「焼き方分かんない~僕はエニシがいないと長生きできなもん~」

E「え?なにそれ?」

H「だからエニシがずっと僕のそばにいて料理作ってね?」


って言うんだもん。ズルいよね。


あんな可愛い顔してあんな可愛い愛嬌みせて僕に擦り寄ってくるんだもん。


なんだかんだ言いながらでもそりゃ僕の恋人のために料理作っちゃうでしょ?


つづく
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