Blue〜歪んだ愛と本当の愛〜

樺純

文字の大きさ
上 下
76 / 77

76話

しおりを挟む

「っ!!??」
無意識に呟いてしまった声が静先輩に聞こえたのか、思い切り肩を掴まれてベッドに押し倒された。

「弥桜っ、自分が何言ってるかわかってるのか‼︎ 本気でそんなこと思ってるなら、絶対に許さない」

静先輩の吐き出すような言葉と共に、ぎりぎりと掴まれた肩の力が強くなっていく。
「絶対・・・絶対にだ・・・・・・」

僕を凝視する目が、いつもの優しい静先輩じゃなかった。
何かにすごく怯えたような、今まで見たことない静先輩の気迫に何も言葉を返せない。

「いいか、お前が勝手に死ぬことは俺が許さない」
肩を掴んでいた静先輩の手が、首に移動してきてゆっくり力を込めた。
「・・・ぅぁ、かはっ・・・・・・」

「もう二度と勝手に死ぬなんて言うんじゃないぞ」
番避けの上から首を絞められて、どんどん息が苦しくなってくる。

今、まさに静先輩に僕の生死を握られてる。
もう僕の命は僕のものじゃないんだ。
完全に静先輩の手の中で、今このまま静先輩の気持ち一つで僕を殺せる。
不思議とその感覚に恐怖はなかった。
それくらい今の僕は静先輩に溺れきっていた。

もう息が出来ないくらい苦しくて返事をする余裕なんかない。
何だか意識もぼんやりしてきた。
本当にこのまま殺されるかもしれない。

そう思ったところで、完全に意識は途切れた。

次に気がついた時、部屋に静先輩の姿はなく発情期もまだ全然収まってなかった。

陽の光で明け方だと言うことはわかったけど、あれから何日経ったのかも、発情がどうしてこんな中途半端な状態なのかも、どうして静先輩がいないのかも何もわからない。
自宅だとしてもこんな薄暗い部屋に一人で、何より静先輩がいないことが徐々に意識を乱していく。

「静、先輩・・・・・・?」

発した声も部屋に反響して響くだけで、何の返事もない。
「静先輩・・・ぃやだ・・・・・・」
今度こそ本当に捨てられたかもしれない。
一度思い至るとどんどんその思考に支配されてきて怖くなる。

そんなことはないと思いたくて、震える手で急いで電話をかけた。
「・・・・・・弥桜? おはよう、気がついたか」
ワンコールで出てくれた静先輩の声は最後の記憶より落ち着いてて、いつもの静先輩だった。
その声を聞くだけでうるさいほど鳴っていた心臓の音が少し音無しくなる。

「静先輩、今どこにいるの・・・・・・?」
「今は家にいるよ。流石にあの状態で弥桜を抱くわけにはいかないから、特効薬と抑制剤使った。俺も頭冷やしたかったし、そこにいても二人とも辛いだけだから、それで一回帰ってきたんだ。弥桜が起きる前に戻るつもりだったんだよ」
静先輩の話しにようやく今の状況が理解できた。

発情期の状態も久しぶりの薬で感覚を忘れてたけど、今までは一週間かけてゆっくり落ち着かせていたんだった。
「今から行くから、もう一度薬飲んでおけ」
「早く来て」

静先輩には黙ってるけど、もう既に身体の嫌悪感がじわじわ襲ってきてて、薬を飲みに行ったり静先輩と話したりすることでそれをなんとか紛らわせようとしていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

赤髪騎士と同僚侍女のほのぼの婚約話(番外編あり)

しろねこ。
恋愛
赤髪の騎士ルドは久々の休日に母孝行として実家を訪れていた。 良い年頃なのに浮いた話だし一つ持ってこない息子に母は心配が止まらない。 人当たりも良く、ルックスも良く、給料も悪くないはずなのに、えっ?何で彼女出来ないわけ? 時として母心は息子を追い詰めるものなのは、どの世でも変わらない。 ルドの想い人は主君の屋敷で一緒に働いているお喋り侍女。 気が強く、お話大好き、時には乱暴な一面すら好ましく思う程惚れている。 一緒にいる時間が長いと好意も生まれやすいよね、というところからの職場内恋愛のお話です。 他作品で出ているサブキャラのお話。 こんな関係性があったのね、くらいのゆるい気持ちでお読み下さい。 このお話だけでも読めますが、他の作品も読むともっと楽しいかも(*´ω`*)? 完全自己満、ハピエン、ご都合主義の作者による作品です。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿してます!

秘密の多い彼との関係を切れない私の話

下菊みこと
恋愛
秘密の多い彼と思ったより愛し愛されていたお話。 御都合主義のハッピーエンドのSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

ポートレート・イン・ザ・ダーク ――ニューヨークで恋に落ちた人には裏の顔がある

木村
恋愛
市村みどりは『同僚の突然死』をきっかけに突発的に仕事を辞め、人生で一度行ってみたかった街ニューヨーク行きの飛行機に乗る。その飛行機の中で、顔以外全身入れ墨が入ったピアニスト、日比谷紫貴に助けられる。彼の外見に戸惑いつつも彼の持つ優しさにみどりは惹かれていく。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...