Blue〜歪んだ愛と本当の愛〜

樺純

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71話

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テラside

園をでるとすぐ私の後ろをププが慌てて追いかけてくる。

私は園の門を出ると屋敷とは逆の方向に歩き出した。

すると、ププが私の前に走ってきて道を遮る。

T「邪魔。」

P「姐さん屋敷はそちらじゃありません。」

T「屋敷には帰らない。」

P「それは俺にじゃなく組長本人に言ってください。」

T「探してもくれない人と話なんてしたくないし、話したくてもケイトが私を避けてた。」

P「仕方ないじゃないですかソフィア様が病院に運ばれたんですから!」

ププはそう言った後すぐアッとした顔をして口を閉ざした。

T「ケイト…ソフィアさんと一緒にいたんだ。」

私がそう問いかけてもププは気まずそうな顔をするだけで何も返事をしない。

T「ケイトは私よりソフィアさんを選んだんだね。もう、それがケイトの答えでしょ。」

私はそう言ってププを交わして歩いて行こうとするとププがガシッと私の腰を掴み私を肩に担いだ。

T「ちょ!ちょっと!おろして!」

足をバタバタさせてそう叫ぶがププはビクともせず動かない。

T「ちょっと!おろしなさい!」

P「姐さんは!!命の危機が迫ってる人を平気で無視するような組長を……好きになりましたか?」

T「はぁ!?意味わかんない!ケイトは私に忙しいって言ってソフィアさんとコソコソ会ってたんだよ!」

私はププの背中をポコポコと殴りながらおろすように抵抗するが、ププは痛くも痒くもないのか無反応で私の手の方が痛い。

P「はぁ~ほんと…姐さんは組長の何を見てるんですか!?姐さんは!!親の反対を押し切って好きな人の子供を1人で産むと覚悟したソフィア様を冷たくあしらうような組長が好きなんですか?」

T「意味わかんない!そのお腹の中にいる子どもがケイトの子供だから怒ってるんでしょ!!」

P「え………ね……姐さんもしかしてそれで家出を?」

T「うるさい!おろして!」

P「おろしません。意地でも離しません。」

ププは私を屋敷にまで連れて帰ると車に無理矢理乗せて車を走らせる。

T「もう!鍵開けて!これは誘拐だよ!」

P「ここで鍵開けて姐さんを逃したら俺の命がありません。誘拐犯の方がマシです。」

ガチャガチャと車の扉を開けようとしても開かないので疲れて諦めた私は座席の背もたれにもたれ掛かる。

P「姐さん…昨日の話なんですが…自分の言い方が悪かったですね。」

ププはそう話しながら運転をしていてバックミラー越しに私の顔をチラッと見る。

私はそんなププを無視して窓の外を眺めた。

P「確かに組長は姐さんと出会うまでソフィア様と付き合ってました…表向きは。」

私はププの最後の言葉が気になり視線を車内に戻すとププは微かに笑った。

P「付き合ってるフリをしてたんです。あの2人は親同士が決めた許嫁でしたが2人ともその気はなく仲の良い姉弟のような存在でした。そんな中、ソフィア様に好きな人が出来たんです。しかし、その相手はソフィア様のお父様と敵対する組の人間でそれがバレたら相手もソフィア様の命も危ないと判断した組長がソフィア様と付き合ってるフリをして2人を守り、2人は組長の影で愛を育んでたんです。しかし、ソフィア様は妊娠し…組長は出会ってしまった…姐さんと。」

ププはそう言うと赤信号で止まったのをいい事に後ろを振り返り、私の顔色を伺うようにニコッと笑った。

P「組長が姐さんと出会った事で組長はソフィア様との許嫁の関係を解消することを当時の組長達に告げ、ソフィア様は妊娠を機にお相手と一緒に駆け落ちをしました。しかし、ソフィア様はお父様に居場所がバレてしまい逃げてる最中、階段から落ちそうになったソフィア様を庇い…ソフィア様のお相手の方は命を落とし、ソフィア様は1人でお腹の子を守りながら身を隠して生きていたんです。組長はそんなソフィア様を影ながら支援していました。なのでお腹の子は組長の子じゃありませんよ。」

ププがそう話すと自分でも自分に呆れるほどホッとして機嫌が直っていくのがわかった。

T「初めっからそう言ってくれたら良かったのに……付き合ってたって言うから…しかもそのあと、ケイトがソフィアさんと電話してるの聞いて…ソフィアさんのお腹の子はケイトの子だと思った。」

P「盗み聞きはよくないですよ~」

T「うるさい。じゃ、あの電話は誰の話をしてたんだろ……?」

P「それは組長本人に聞いてください!!はい!着きました~」

ププはそう言うと車を止めたので窓の外を見るとそこは見覚えのある場所だった。

T「ここって…カジノ?」

ププはゆっくりと扉を開けて私が車から降りるとププはカジノの表玄関の扉を開けた。

P「組長が中でお待ちです。」

私はププに言われるままカジノの中に入ると、ププは手を振りながら扉を閉め、私はカジノの中にひとりぼっちとなった。

あの日、引きずられるようにして初めてここを訪れた時は酒と金に溺れる人で溢れていた。

しかし、今は鎮まり返っていてキラキラと光るシャンデリアが眩しく、螺旋階段が寂しそうに感じる。

すると、ピロンとメールの音がして私はポケットに入れたスマホを取り出すと、ケイトからのメールが届いていた。

K「初めてキスしたあの場所で待ってる。」

ケイトのそのメールを見た私はケイトと初めてキスした時の胸の高鳴りが鮮明に蘇り、自分の胸をギュッと掴む。

あの日、ケイトに連れられて人並みをかき分けるように向かったあの場所。

あの日と全く違う光景なのに迷う事なくそこに足が動いたのは、あの扉の向こう側が私にとっても特別な場所になっているから。

ゆっくりとした足取りでその場所に向かうと、頭の中ではケイトのと色んな思い出が蘇った。

運命のように惹かれあった私たちは宿命のような困難を乗り越えて一つなった。

しかし、お互いのことをあまり知らないまま「好き」という感情だけで繋がっていた私たちはそれではいけないと今、思い知らされた。

私の目には涙が滲み、扉のノブに掛けた手が微かに震える。

小さく息を吸い込むと緊張からか胸の奥が締め付けられるように痛かった。

そして、私はゆっくりと扉を開けて一歩を踏み出した。

つづく
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