Blue〜歪んだ愛と本当の愛〜

樺純

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62話

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ケイトside

テラがこの屋敷に来て幸せな日々を送るようになってから、俺はすぐにテラとの結婚を考えた。

しかし、テラに子供が産めないと言われたとき…テラとは別れたくはないという思いと、家業を守っていくには絶対に後継ぎがいるという現実に俺は頭を悩ませた。

俺とテラが愛しあって子供を授かるのが不可能なら、可能性としては人工授精か体外受精、もしくは海外で代理出産という形で子供を授かるしかない。

しかし、それも全てうまくいけばの話で100%可能性があるとはどれも言い切れない。

確実に俺たちの元に子供を授かれる方法は養子を貰う事だが、それは最終手段として俺はずっと考えていた。

何故なら血の繋がった親子でさえ少しのすれ違いで、俺と親父のようになってしまう事もあるから。

ましてや、父親との思い出なんて記憶の中に殆どない俺が血の繋がってない子供の子育てなんて出来るのだろうか?と不安に思っていた矢先、テラから養子の話を切り出され俺はあまりの負担の重さからテラの話をはぐらかしてしまった。

次の日

ジニさんが俺の仕事部屋に来たとき、俺はそれとなく父親について聞いてみた。

K「ジニさんのさ本当の親父さんってどんな人だった?」

J「親父?あぁ~俺とは違って静かで寡黙な感じだったよ?なんで?」

K「いや…なんとなく…ジニさんは早くにご両親を亡くしたけど愛されて大切に育てられたじゃん?」

俺がそう言うとジニさんは資料に目を通しながら笑った。

J「ケイトだって愛されて大切に育ててもらっただろう?」

K「ん…まぁ…でもそれに気づいたのは親父が死んでからだし…親父とまともな思い出ってないから自分が親になれるか不安でさ。」

つい、話の流れからそう話すと資料を見ていたジニさんの手が止まった。

J「もしかして…結婚するのか?」

K「結婚はする…けど…子供のことでちょっと色々とね…」

J「結婚となるとそう言う事で揉めるようにはなるよね?」

K「まぁ…」

J「あ…子供で思い出したけど明日、俺たちが園に顔出す日だから忘れんなよ。」

K「うん……」

そうして次の日、俺はジニさんと一緒に園を訪れ、いつもボランティアで園を訪れているププも一緒に連れて行った。

P「自分なんかを連れて行っても自分、子供人気ゼロなんで姐さんと一緒に行かれた方がいいのではないですか?」

ププは園の内に入るとそう言った。

K「お前が子どもたちに人気ないのは、そのゴリ顔にツインテールして年中タンクトップだから子どもたちが怯えるんだよ。ここに来る時くらい子ども受けする格好で来い。」

P「それで組長…そんな可愛いブローチ付けてるんですね。」

日頃、スーツしか着ないが今日は子どもたちと遊ぶことも考え、シンプルでカジュアルなパーカーに今、子どもたちに人気のキャラクターのブローチを胸ポケットに付けた。

もちろん、一緒に来たジニさんも爽やかお兄さんのファッションで胸元にはこちらも人気キャラクターのブローチを付けている。

園長に挨拶を終えて、外で走り回って遊んでいる子どもたちの元にプレゼントを持って向かう。

すると、子どもたちは俺たちの予想外な来園に驚き、笑顔で走って俺たちの元に駆け寄って来た。

家庭の事情から親と一緒に暮らすことの出来ない子ども達が多く、寂しい思いをしている子が大半だが子どもたちの笑顔は天使のようで可愛いらしい。

人懐っこい子どもたちのなか、1人、俺たちに近づくことなく子どもたちの輪にも入ろうとしない男の子が目についた。

俺はその子をチラチラと見ながら子供たちにプレゼントを渡していく。

ほとんどの子供たちにプレゼントが行き渡ったのを確認すると、1つのプレゼントを持って俺はその場をジニさんとププに任せた。

ゆっくりと様子を伺いながらその男の子の元に近づいていき、その子は1人ベンチに座って絵を描いていた。

K「こんにちは。何書いてるの?」

そう話しかけるが男の子からの返事はない。

男の子が書いてる絵を見てみるとそこには大人の人間が子供を挟んで手を繋いでいる絵だった。

しかし、大人の顔は黒く塗りつぶされていて子供の顔はどこか悲しそうな顔をしている。

そんな絵をみて俺の胸はギュッと締め付けられて苦しくなった。

K「はい…キミにプレゼントだよ。名前は?」

俺がそう問いかけても男の子は口を開こうとしない。

この子はもしかしたら沢山の傷を大人たちから負わされてしまったのかもしれない…そう思っていると、少し離れた所でサッカーをしていた子供たちが蹴り飛ばしたボールが男の子に向かって飛んできた。

K「危ない!!」

咄嗟に俺は男の子を抱きしめて庇うと男の子は驚いた顔をして固まっている。

K「大丈夫?驚いちゃったよね…怪我ない?」

男の子のほっぺを撫でながらそう言うと男の子は目を大きく見開き、俺の胸をグイッと押して走って逃げて行った。

K「いきなり男の俺が近づいて怖かったかな…」

そう反省していると男の子が置き忘れた絵がベンチに残されてあった。

よく見るとその絵の下に「ケント」と書いてあり俺と似たような名前につい、俺からは苦笑いが出る。

K「俺のガキの頃にそっくりだと思ったら名前まで似てんのかよ。」

俺はそう呟きその絵を綺麗に折りたたんで胸ポケットに仕舞い込んだ。

つづく
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