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45話
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ジニside
俺がケイトの元を去ってまで確かめないといけない事…
それはハウとムネオリの行方。
あの火災事件の日
新聞やニュースでは火災により覇道組幹部である2人の死亡が報じられたが、あの日、俺とケイトが撃ったはずの部下達の人数と公表された人数が合わなかった。
不思議に思った俺が繋がりのある刑事に確認した所、見つかった遺体は火傷の損傷が激しく、身元の判別が厳しいが行方不明となってるムネオリとハウの2人で違いないだろうと言う事になったと。
闇の組織での火事ということもあり、警察側は騒ぎを大きくするのは面倒と判断しそう結論付けていると話していた。
しかし、もし覇道組若頭のムネオリとハウがあのまま火の中でいたとしたのなら、どう計算をしても遺体として見つかった数が合わない。
あの場にいて身動きが出来たのはハウ1人…そしてハウが命を賭けてでも助けようとするのはきっとムネオリ1人。
もし万が一、俺の予想通り本当に2人が生きていたとして…
また、テラを危険な目に遭わせるような事でもあったなら、俺は天龍組若頭ケイトの補佐として…
いやケイトの兄として俺がこの手で2人を止めないといけないと思った。
あの日のケイトは根の優しさからハウに情をかけ最後まで信じていた。
でも、俺は違う…
天涯孤独な俺にとってたった1人の大切な弟を傷つけたハウとムネオリの行方を知り、行動を把握する義務が俺にはあると思った。
ケイトやケイトの大切な人であるテラを守るために。
その為にはこの組にいては動く事ができない。
その覚悟から俺は可愛い弟であるケイトの元を離れ、この組から足を洗うことを決めた。
初めのうちはケイトは俺がこの組を離れることを拒み認めなかった。
反抗的で荒々しい態度を俺に取り俺が離れることを必死で拒んだ。
しかし、それが俺にしてみれば嬉しくてケイトにとって俺はそこまでの存在になれたんだと思ったら泣けた。
そんな可愛い弟は愛する人であるテラに宥められ、また一つ大人になり俺の想いを理解し俺を送り出してくれた。
だから尚更…
俺はちゃんとハウとムネオリの行方を確かめないといけないんだ。
俺は組を出てから色んなツテを使いハウとムネオリのことを探った。
元々覇道組にいた人間やその周りにうろついていた人間。
覇道組が所有している全国の建物にも行った。
しかし、ハウとムネオリの確かな情報を得る事は出来ず、俺の思い違いだったのだろうか?と思い始めていた。
気づけば3ヶ月という月日がたち、半ば諦めながらムネオリが子供の頃に別荘として使っていたという山奥の建物を見に行った。
しかし、何も情報を得ることが出来なかった俺はふらっと近くにあった喫茶店のような本屋のようなよく分からない不思議な店を見つけた。
看板には「生きる家」の文字。
中には俺と歳の変わらない背の高い男性が1人、本を読みながらコーヒーを淹れていて、店内は所狭しと本が並んであった。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
無言のまま座り、大きな窓から大自然を眺めていると何も注文をしていないはずなのにコーヒーが目の前に出てきた。
J「あのまだ注文してませんけど?」
「あ、ウチの店はコーヒーとコレしか出さないから。」
そう言って横に置かれたのは小さなマカロン3つ。
そんなんでよく商売としてやっていけてんな…と思いながら俺はコーヒーを啜りマカロンを口の中に放り込む。
窓から見える大自然に癒されながら甘いマカロンを楽しんでいると、道路の向こう側の川沿いに見覚えのある姿を見つけ、俺が思わず立ち上がると俺の視線の先に気づいた店主が言った。
「あ…あの2人…数ヶ月前にこの辺に来てね……1人が記憶喪失になったみたいで、あぁやって一緒に散歩しながらリハビリしてるんだよ…お兄さんもしかして…あの2人と知り合い?」
店主はそう話しているのに俺は2人の姿から目が離せなかった。
緑の中を歩く2人は手を取り合い本当に幸せそうに微笑みあっていたから。
J「…いや…大自然を歩くあの2人があまりにも綺麗だったからつい…」
俺は店主の言葉を聞いて2人とは知り合いだと言うことを隠した。
「そっか。」
J「あの…記憶喪失って…全くなにも覚えてないんですか?」
店主「みたいですよ…記憶を思い出せないのか…思い出したくないのか…それは分からないけど、ここに来た時のムネオリよりも今のムネオリの方がはるかに幸せそうなんですよね…ハウのそばにいるムネオリが…たまにウチにも遊びに来てくれるんですよ。」
ムネオリとハウ…
店主の口からその名前を聞いて今、俺の目の前にいるのは俺の見間違いでもなんでもなく、2人なんだと確信した。
J「そうなんですね……あの…」
店主「はい?」
J「あの二人に、過去を忘れてしまうことは決して悪ことばかりじゃない。過去に囚われるくらいなら全て忘れて穏やかに今を生きてほしい…そうお伝えください。」
俺はそう言い残して店を出たあともう一度、パク覇道組が別荘として使っていた所へと向かった。
身を隠しながら別荘の中を覗くと2人は庭で楽しそうにシャボン玉をして遊んでいる。
正直、若頭をやっていた時のムネオリからは考えられないほど穏やか顔をして笑っていて…
もしかしたらこの姿がムネオリの本当の姿なのかもしれないと思った俺は、そのまま2人に声をかける事なくその場を後にした。
つづく
俺がケイトの元を去ってまで確かめないといけない事…
それはハウとムネオリの行方。
あの火災事件の日
新聞やニュースでは火災により覇道組幹部である2人の死亡が報じられたが、あの日、俺とケイトが撃ったはずの部下達の人数と公表された人数が合わなかった。
不思議に思った俺が繋がりのある刑事に確認した所、見つかった遺体は火傷の損傷が激しく、身元の判別が厳しいが行方不明となってるムネオリとハウの2人で違いないだろうと言う事になったと。
闇の組織での火事ということもあり、警察側は騒ぎを大きくするのは面倒と判断しそう結論付けていると話していた。
しかし、もし覇道組若頭のムネオリとハウがあのまま火の中でいたとしたのなら、どう計算をしても遺体として見つかった数が合わない。
あの場にいて身動きが出来たのはハウ1人…そしてハウが命を賭けてでも助けようとするのはきっとムネオリ1人。
もし万が一、俺の予想通り本当に2人が生きていたとして…
また、テラを危険な目に遭わせるような事でもあったなら、俺は天龍組若頭ケイトの補佐として…
いやケイトの兄として俺がこの手で2人を止めないといけないと思った。
あの日のケイトは根の優しさからハウに情をかけ最後まで信じていた。
でも、俺は違う…
天涯孤独な俺にとってたった1人の大切な弟を傷つけたハウとムネオリの行方を知り、行動を把握する義務が俺にはあると思った。
ケイトやケイトの大切な人であるテラを守るために。
その為にはこの組にいては動く事ができない。
その覚悟から俺は可愛い弟であるケイトの元を離れ、この組から足を洗うことを決めた。
初めのうちはケイトは俺がこの組を離れることを拒み認めなかった。
反抗的で荒々しい態度を俺に取り俺が離れることを必死で拒んだ。
しかし、それが俺にしてみれば嬉しくてケイトにとって俺はそこまでの存在になれたんだと思ったら泣けた。
そんな可愛い弟は愛する人であるテラに宥められ、また一つ大人になり俺の想いを理解し俺を送り出してくれた。
だから尚更…
俺はちゃんとハウとムネオリの行方を確かめないといけないんだ。
俺は組を出てから色んなツテを使いハウとムネオリのことを探った。
元々覇道組にいた人間やその周りにうろついていた人間。
覇道組が所有している全国の建物にも行った。
しかし、ハウとムネオリの確かな情報を得る事は出来ず、俺の思い違いだったのだろうか?と思い始めていた。
気づけば3ヶ月という月日がたち、半ば諦めながらムネオリが子供の頃に別荘として使っていたという山奥の建物を見に行った。
しかし、何も情報を得ることが出来なかった俺はふらっと近くにあった喫茶店のような本屋のようなよく分からない不思議な店を見つけた。
看板には「生きる家」の文字。
中には俺と歳の変わらない背の高い男性が1人、本を読みながらコーヒーを淹れていて、店内は所狭しと本が並んであった。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ。」
無言のまま座り、大きな窓から大自然を眺めていると何も注文をしていないはずなのにコーヒーが目の前に出てきた。
J「あのまだ注文してませんけど?」
「あ、ウチの店はコーヒーとコレしか出さないから。」
そう言って横に置かれたのは小さなマカロン3つ。
そんなんでよく商売としてやっていけてんな…と思いながら俺はコーヒーを啜りマカロンを口の中に放り込む。
窓から見える大自然に癒されながら甘いマカロンを楽しんでいると、道路の向こう側の川沿いに見覚えのある姿を見つけ、俺が思わず立ち上がると俺の視線の先に気づいた店主が言った。
「あ…あの2人…数ヶ月前にこの辺に来てね……1人が記憶喪失になったみたいで、あぁやって一緒に散歩しながらリハビリしてるんだよ…お兄さんもしかして…あの2人と知り合い?」
店主はそう話しているのに俺は2人の姿から目が離せなかった。
緑の中を歩く2人は手を取り合い本当に幸せそうに微笑みあっていたから。
J「…いや…大自然を歩くあの2人があまりにも綺麗だったからつい…」
俺は店主の言葉を聞いて2人とは知り合いだと言うことを隠した。
「そっか。」
J「あの…記憶喪失って…全くなにも覚えてないんですか?」
店主「みたいですよ…記憶を思い出せないのか…思い出したくないのか…それは分からないけど、ここに来た時のムネオリよりも今のムネオリの方がはるかに幸せそうなんですよね…ハウのそばにいるムネオリが…たまにウチにも遊びに来てくれるんですよ。」
ムネオリとハウ…
店主の口からその名前を聞いて今、俺の目の前にいるのは俺の見間違いでもなんでもなく、2人なんだと確信した。
J「そうなんですね……あの…」
店主「はい?」
J「あの二人に、過去を忘れてしまうことは決して悪ことばかりじゃない。過去に囚われるくらいなら全て忘れて穏やかに今を生きてほしい…そうお伝えください。」
俺はそう言い残して店を出たあともう一度、パク覇道組が別荘として使っていた所へと向かった。
身を隠しながら別荘の中を覗くと2人は庭で楽しそうにシャボン玉をして遊んでいる。
正直、若頭をやっていた時のムネオリからは考えられないほど穏やか顔をして笑っていて…
もしかしたらこの姿がムネオリの本当の姿なのかもしれないと思った俺は、そのまま2人に声をかける事なくその場を後にした。
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