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29話
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ハウside
次の日の朝
テラの様子を見ると思っていたよりも回復していて、私は自らケイトが不在の時はテラの面倒を見ると言った。
私を仲間だと信じ込んでるケイトはそれを心良く承諾し、私の目の前でテラとイチャつく。
アンタは今から地獄を見るのに…そう心の中で私は呟いた。
テラをこの屋敷から出すには私が関わってしまうとすぐに私と覇道組の繋がりがバレてしまう。
せめてバレるのはテラがムネオリさんの元に行ってから…そう考えた私はテラ自らこの屋敷から出ていくように仕向けた。
屋敷の警備が手薄になった時間を見計らい、テラには優しい理解のある人間の顔をして…
テラに裏口からなら屋敷を出ることが出来るとその場所まで連れて行った。
すると、テラは私の思っていた通り自らの足で私たちの仲間が待つ場所へと走っていった。
私はその背中を見届け電話をする。
H「今、テラがそっちに向かったから何がなんでも捕まえてムネオリさんの元に連れて行きなさいよ…次はもうないからね。」
そして、電話を切ると屋敷の表門が突然開き、何やら騒がしくなったので慌てて私がそこに向かうと、何故かケイトが戻って来ていた。
予想よりも早く戻ってきたケイトに驚いた私はケイトに問いかけた。
H「ケイトどうしたの?さっき行ったばかりなのにそんなすぐ戻ってきて…」
K「テラが屋敷を出た。」
H「え?」
K「GPSが間違ってなかったら今、屋敷にいない…今すぐテラがいるか屋敷の中を隈なく探せ!!」
ケイトがテラにGPSを付けていたなんて私は予想外だった。
ケイトの目には余裕がなく、ケイト自らも屋敷の中を探していて…
そこまでテラがケイトの心の中にいる人間だと言うことを私は初めて知った。
K「侵入者は!?」
P「侵入者はいませんが監視カメラを確認したところ裏門にお嬢の姿がありました!!」
K「今、GPSはどこを指してる!?」
P「〇〇通りです!おそらくこの道だと工場地帯の方に向かっているかと……」
K「行くぞ。」
ケイトはそう言って車に乗り込んだので、私も慌ててケイトと同じ車に乗り込んだ。
H「私も行く…私がちゃんと見張ってなかったから…私のせいだから…」
K「分かった…。」
内心、ケイトが来る前にテラを連れ去れと祈りながら私はケイトと一緒に向かった。
しかし、その場について私は思わず舌打ちをしそうになった。
何故ならばひと気の少ない工場地帯には目立ちすぎる黒塗りのバンがあり、ケイトはそれを見つけるとすぐ、車を降りたから。
K「ジニさんは俺の後ろに付いて。ハウはここにいて。」
H「いや、私も行く。」
K「……分かった…ならコレ持ってて。もしもの事があるから…使い方は…もう4年もウチの組にいたら分かるよね?」
H「うん…」
ケイトはそう言って私に拳銃を渡すと建物へと走っていき私はもう諦めた。
K「誰の女に手で出してんだ…?てめぇ………」
暗闇の中ゆっくりと前を見ると…
そこにはテラを連れて行こうとする使えない男が立っていて、私は大きなため息が漏れそうになる。
K「死にたくなかったら今すぐその人を離せ……」
テラを掴んでいるその男の目を見ればわかった。
ケイトから逃れる事が出来るほどの男ではないな…ということに。
K「何度も言わせるな。死にたくなかったらその人を………」
「うるせぇ!!こいつがいなきゃどうせ俺は殺されるんだよ!!」
男はそう叫ぶと隠し持っていたナイフをテラの首に突きつけ、その刃先がテラの首元にグイッと刺さりツーっと血が流れ落ち私の苛立ちは頂点に登った。
ムネオリさんの大切な物をお前ごときが傷を付けるなんて…
私が許さない。
K「傷モノにしてその人を覇道組の若頭に渡しても…お前は殺されるんじゃないのか?お前の生きる道はただ一つ…俺の言う通りその人を俺に引き渡す。ただそれだけだ。」
「うるせぇ!!黙れ!!」
こいつを生かしているとこいつに顔を知らされている私がまずいことになる…
男は後ろにいる私の存在に気づき目を丸くしたその時…私は久しぶりに拳銃を使う事を決めた。
K「5秒数える間に…その人を離すんだ……」
5…
4…
3…
2…
パァンッ!!!!!!
久しぶりに耳の奥に響いた銃声が私の芯を疼かせゾクゾクとした。
H「えへへ~ごめーん。私せっかちだから撃っちゃった。」
煙たつ拳銃にフーッと息をかけて、ぶっ倒れた男の脈をみると既に止まっていて私はすぐそばにいたケイトの部下に言った。
H「始末して。」
私の言葉を聞いて部下たちはその男を抱えて出て行く。
チラッとケイトを見れば、それはまるで宝物を見つけたかのように大切にギュッとテラのことを抱きしめていた。
K「屋敷で良い子にしてろって言ったのに…」
T「ごめん…ごめんなさい……ヨナを助けなきゃと思って…誰にも言うなって言われたから……」
K「分かったよ…もう大丈夫…行こう…」
2人はそう言って見つめ合いながら私の前を通り過ぎて行った。
屋敷に着くとケイトはテラを部屋に閉じ込め鍵をかけた。
厄介だ…
鍵をかけられてしまうと私にはどうすることも出来ない。
私は部屋から離れへと向かおうとするケイトに駆け寄った。
H「テラちゃんも首をナイフで刺されて怪我してたみたいだから…治療してあげないと…ヨナさんって人はジニさんが離れのジニさんの部屋で治療してるし…」
K「でも…俺も今から離れで集会だから…」
H「私が治療するから鍵預かるよ…今度はちゃんとテラちゃんのこと見張ってるから。」
K「分かった。テラの治療よろしく。」
ケイトはそう言って私に鍵を渡すと離れへと向かった。
つづく
次の日の朝
テラの様子を見ると思っていたよりも回復していて、私は自らケイトが不在の時はテラの面倒を見ると言った。
私を仲間だと信じ込んでるケイトはそれを心良く承諾し、私の目の前でテラとイチャつく。
アンタは今から地獄を見るのに…そう心の中で私は呟いた。
テラをこの屋敷から出すには私が関わってしまうとすぐに私と覇道組の繋がりがバレてしまう。
せめてバレるのはテラがムネオリさんの元に行ってから…そう考えた私はテラ自らこの屋敷から出ていくように仕向けた。
屋敷の警備が手薄になった時間を見計らい、テラには優しい理解のある人間の顔をして…
テラに裏口からなら屋敷を出ることが出来るとその場所まで連れて行った。
すると、テラは私の思っていた通り自らの足で私たちの仲間が待つ場所へと走っていった。
私はその背中を見届け電話をする。
H「今、テラがそっちに向かったから何がなんでも捕まえてムネオリさんの元に連れて行きなさいよ…次はもうないからね。」
そして、電話を切ると屋敷の表門が突然開き、何やら騒がしくなったので慌てて私がそこに向かうと、何故かケイトが戻って来ていた。
予想よりも早く戻ってきたケイトに驚いた私はケイトに問いかけた。
H「ケイトどうしたの?さっき行ったばかりなのにそんなすぐ戻ってきて…」
K「テラが屋敷を出た。」
H「え?」
K「GPSが間違ってなかったら今、屋敷にいない…今すぐテラがいるか屋敷の中を隈なく探せ!!」
ケイトがテラにGPSを付けていたなんて私は予想外だった。
ケイトの目には余裕がなく、ケイト自らも屋敷の中を探していて…
そこまでテラがケイトの心の中にいる人間だと言うことを私は初めて知った。
K「侵入者は!?」
P「侵入者はいませんが監視カメラを確認したところ裏門にお嬢の姿がありました!!」
K「今、GPSはどこを指してる!?」
P「〇〇通りです!おそらくこの道だと工場地帯の方に向かっているかと……」
K「行くぞ。」
ケイトはそう言って車に乗り込んだので、私も慌ててケイトと同じ車に乗り込んだ。
H「私も行く…私がちゃんと見張ってなかったから…私のせいだから…」
K「分かった…。」
内心、ケイトが来る前にテラを連れ去れと祈りながら私はケイトと一緒に向かった。
しかし、その場について私は思わず舌打ちをしそうになった。
何故ならばひと気の少ない工場地帯には目立ちすぎる黒塗りのバンがあり、ケイトはそれを見つけるとすぐ、車を降りたから。
K「ジニさんは俺の後ろに付いて。ハウはここにいて。」
H「いや、私も行く。」
K「……分かった…ならコレ持ってて。もしもの事があるから…使い方は…もう4年もウチの組にいたら分かるよね?」
H「うん…」
ケイトはそう言って私に拳銃を渡すと建物へと走っていき私はもう諦めた。
K「誰の女に手で出してんだ…?てめぇ………」
暗闇の中ゆっくりと前を見ると…
そこにはテラを連れて行こうとする使えない男が立っていて、私は大きなため息が漏れそうになる。
K「死にたくなかったら今すぐその人を離せ……」
テラを掴んでいるその男の目を見ればわかった。
ケイトから逃れる事が出来るほどの男ではないな…ということに。
K「何度も言わせるな。死にたくなかったらその人を………」
「うるせぇ!!こいつがいなきゃどうせ俺は殺されるんだよ!!」
男はそう叫ぶと隠し持っていたナイフをテラの首に突きつけ、その刃先がテラの首元にグイッと刺さりツーっと血が流れ落ち私の苛立ちは頂点に登った。
ムネオリさんの大切な物をお前ごときが傷を付けるなんて…
私が許さない。
K「傷モノにしてその人を覇道組の若頭に渡しても…お前は殺されるんじゃないのか?お前の生きる道はただ一つ…俺の言う通りその人を俺に引き渡す。ただそれだけだ。」
「うるせぇ!!黙れ!!」
こいつを生かしているとこいつに顔を知らされている私がまずいことになる…
男は後ろにいる私の存在に気づき目を丸くしたその時…私は久しぶりに拳銃を使う事を決めた。
K「5秒数える間に…その人を離すんだ……」
5…
4…
3…
2…
パァンッ!!!!!!
久しぶりに耳の奥に響いた銃声が私の芯を疼かせゾクゾクとした。
H「えへへ~ごめーん。私せっかちだから撃っちゃった。」
煙たつ拳銃にフーッと息をかけて、ぶっ倒れた男の脈をみると既に止まっていて私はすぐそばにいたケイトの部下に言った。
H「始末して。」
私の言葉を聞いて部下たちはその男を抱えて出て行く。
チラッとケイトを見れば、それはまるで宝物を見つけたかのように大切にギュッとテラのことを抱きしめていた。
K「屋敷で良い子にしてろって言ったのに…」
T「ごめん…ごめんなさい……ヨナを助けなきゃと思って…誰にも言うなって言われたから……」
K「分かったよ…もう大丈夫…行こう…」
2人はそう言って見つめ合いながら私の前を通り過ぎて行った。
屋敷に着くとケイトはテラを部屋に閉じ込め鍵をかけた。
厄介だ…
鍵をかけられてしまうと私にはどうすることも出来ない。
私は部屋から離れへと向かおうとするケイトに駆け寄った。
H「テラちゃんも首をナイフで刺されて怪我してたみたいだから…治療してあげないと…ヨナさんって人はジニさんが離れのジニさんの部屋で治療してるし…」
K「でも…俺も今から離れで集会だから…」
H「私が治療するから鍵預かるよ…今度はちゃんとテラちゃんのこと見張ってるから。」
K「分かった。テラの治療よろしく。」
ケイトはそう言って私に鍵を渡すと離れへと向かった。
つづく
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